世界の2040年の未来予測が様々なメディアや研究機関で昨年年末から、今年(2023年)の春までに相次いで発表された。筆者も年末から最近までいろいろウォッチしてきたが混沌とする世界情勢の中で世界全体の20年後を予測することは、さかのぼって20年前の2020年予測よりもはるかに困難になってきているということがいえる。

統制国家と民主制国家の世界的分断とその対立がどの様に展開するのかが難しくなる一方、テクノロジーは「AI」とか「自動運転」という究極の人間を超える知能までに進化しており、世界は地球環境の劣化という根本的な波乱要因、そして世界的な人口減少、高齢化という初めての歴史的な背景が予測を一層困難にしている。

そんな中で日本の20年を捉えることも多くの外部要因が大きな壁として立ちはだかるので全てがイフ(もしこうなった場合)のいくつかの予想に分かれていくことになる。そうなると20年経てば日本社会も大きく変化せざるを得なくなる。世界的な大きな潮流が押し寄せる中で多かれ少なかれ日本固有の文化や伝統もかなりの変質を余儀なくされる。

日本はこうあるべき、これは絶対守るべきという最近の議論や主張も、考えてみると大きな変化を予兆した抵抗という表現であり、日本の長い歴史上もいろいろなかつての世界の変化とともに、日本も受け入れてきた最後に働く柔軟性やいい意味での妥協性が求められると考えるのは当然の帰結であろう。文化や伝統は世界の変化の中で一方的に硬直しては統制国家、専制国家としてしか生き残れない。一党独裁の共産主義もイスラム原理主義も、またキリスト教原理主義者も極端な排外的民族主義者も、最後の人類史上の抵抗を続けているという観点で世界を見ると今の対立分断がよく見えてくる。そもそも日本人の根底にDNAがあるとすると、古来、農耕文化の中で育まれた自然全体に宿る多くの神々が融和して協調して社会を形づくるというまさしく寛容で包摂的な文化社会である。まさしく世界に求められるインクルージョン(包摂した社会)が日本の発展文化社会である。

また日本の神々に男女の差別はない。そもそも最高神は女性である。古代に大陸や半島の技術や制度を取り入れ、また仏教や儒教の伝来の宗教を取り入れ、うまく日本の神々と融和させた。近代で長い鎖国を解き放した明治維新で西洋文化と科学と思想を取り入れ、いち早く先進国に追いついた。現代ではまさしく硬直した文化主義で戦前の軍国主義に妄信した一時期も、敗戦とともに一夜で様変わりするようにアメリカの民主主義を取り入れ復興、高度成長を実現させた。

これは変化し続ける文化を持つそもそも日本の強みであるはずである。自然を大事にして外国のカルチャーやテクノロジーをうまく取り入れる融和が世界のグリーントランスフォーメーションやダイバーシティ、そしてジェンダーフリーという世界の焦眉の課題に率先して答える本来役割をになっても不思議はないという風に感じるが如何であろうか?

それはまた核戦争がもう現実性を帯びるなかで世界で初めてで最後の被爆国として、もっと世界に呼びかける外交を推進するに、どの世界の国からも揶揄されることはありえない責任すらあると考えるが如何であろうか?

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飯塚良治 (いいづかりょうじ)

株式会社アセットリード取締役会長。 オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。