エジソン記念碑
今年4月、アメリカの宇宙企業スペースXが開発していた史上最大のロケット「スーパーヘビー」と宇宙船「スターシップ」が打ち上げ直後に姿勢を崩し、機体を破壊させる信号によって空中で爆破された。 驚いたのは、打ち上げを見守っていたスタッフやサポーターから歓声と拍手が起こったことだ。 CEOのイーロン・マスク氏が「スペースXのチームの皆さん、スターシップのエキサイティングな試験打ち上げ、おめでとう。数か月後に行われる次の試験打ち上げに向けて多くを学んだ」と発表した。

このニュースをテレビで見てて、1か月前の3月にJAXA(宇宙航空研究開発機構)によるH3ロケットの打ち上げ失敗会見を思い出した。会見は重苦しく、責任者によるお詫びから始まり、終始慎重な言い回しの説明を見てて、多額の税金を使い国策を背負うJAXAの職員には失敗は絶対許されないんだなというプレッシャーが余裕のない仕事にはまり込んでるのではないかと、かえって同情したことを覚えている。民間のベンチャー企業と国策会社と、失敗のインパクトは確かに異なるが、あまりにも違う「失敗は成功の母」のアメリカと「失敗を許さない社会」の日本の社会風土の違いを見せつけられた思いがした。

アメリカはやはりエジソン・スピリットに満ちている国である。

「私は失敗したことはない。一万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」とは発明王エジソンの言葉だ。

失敗を否定的なものと捉えるのではなく、むしろ成功に導く道と考えていた。84歳で亡くなるまでに1000件以上の発明をした。電球、電話など、その後の人類の生活を豊かにしてくれた。

失敗は成功のもと。失敗は成功の糧。という言葉をエジソンは残しているが、「失敗は成功の母」とはどうやら直接いったわけではなく、失敗してもそれを反省して改善していくことで成功に近づくというエジソンの言葉から、自然と作られたエジソンの格言らしい。

筆者が好きなエジソンの言葉は
「失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いたまえ」

さらに「人生に失敗した多くの人は、諦めた時に、自分がどれほど成功に近づいていたか、気づかなかった人達だ。」

「私が成功することができたのは仕事場に時計がなかったからだ。」からは「天才はひらめきが1%と、99%の汗である」という格言につながる。

この「失敗は成功の母である」という格言はアメリカ社会のフロンティアスピリットに結びつきアメリカのイノベーションの根底となって、アメリカは絶えず新しい産業を生み出してきた。

一方日本は産業のキャッチアップとその価値の改善と改良は得意である。戦後の高度経済成長の中で既存の物づくりをキャッチアップしてより高品質で廉価な製品を精度高く大量生産することで、30年ほど前はアメリカの経済力に追いつく寸前まで迫った。バブル崩壊後、自信を失った日本はますます、失敗を許さない社会へと萎縮している。

元々が新しいものを開拓、産み出すお国柄ではない。

どの時代をみても国外からの知恵と製品を取り込み、それをより発展させて力としてきた、集中と勤勉性の高さがこの国のアイデンティティである。

和をもって、異物を排すメンタリティは今はSNSによって、当事者以外が他人の失敗に過剰なバッシングの反応を示すケースがあまりにも多い社会である。失敗をすると負の烙印を押され、次の挑戦すらできなくなる。

失敗を恐れるあまり何事もほどほどにというチャレンジを失った20年でもあったバブル後の日本は、アメリカの失敗恐れない起業家たちにより、大きく水をあけられた。

30年前にはアメリカの70%まで迫ったGDPはいまやアメリカに5倍の差をつけられている。

エジソンの言葉
「私は決して失望などしない。どんな失敗も、新たな一歩となるからだ」



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飯塚良治 (いいづかりょうじ)

株式会社アセットリード取締役会長。 オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。