株式や投資信託などの金融商品の売却益や配当を受けた場合、通常は約20%の税金がかかりますが、NISA(少額投資非課税制度)を利用することで非課税にできます。今回は、NISAのメリットやデメリットを解説します。

NISAの仕組み

NISAは、毎年120万円を上限として、株式や投資信託などの金融商品に投資をすることで、その後最長5年間に生じた売却益や配当を非課税とすることができます。投資額に年120万円という上限があるものの、非課税となる売却益や配当に上限はありませんので、売却益や配当が大きくなるほど、節税メリットも大きくなっていきます。

たとえば、NISAの手続きをしたうえで、2018年に120万円分の株式を購入し、2019年に121万円で売却した場合も、1,200万円で売却した場合も、いずれも所得税や住民税はゼロとなります。

なお、NISAで取引できる金融商品は、以下に掲げるものに限られ、非上場株式や金・プラチナなどは対象となりません。

【NISAの対象となる金融商品】

  • 株式投資信託
  • 国内株
  • 外国株
  • 国内 ETF
  • 海外 ETF
  • 上場投資証券
  • 国内REIT(J-REIT)
  • 海外REIT
  • 新株予約権付社債(ワラント債)

NISAを利用するための手続き

NISAを利用できるのは、日本に住む20歳以上の個人です。この条件をクリアしていれば、金融機関でNISAを利用するための手続きをすることができます。NISAを扱う金融機関は、証券会社だけでなく、銀行や生命保険会社、郵便局など、さまざまです。

NISAを利用するためには、金融機関において、「NISA専用の口座」を開設する必要がありますが、1人1口座までに限られていますので、金融機関を1つに絞らなくてはなりません(途中で他の金融機関に変更することは可能)。

どこの金融機関でNISAを利用するかを決めたら、その金融機関に「NISA口座開設書類」を記載して提出します。すると、金融機関は税務署にNISA口座開設の申請を行い、その結果が金融機関を通じて申請者まで通知されます。この税務署への申請は、年齢や、複数の金融機関で申請されていないかなどをチェックするもので、通常は落ちることはありません。

最終的にNISA口座の開設が完了すれば、取引開始できますので、各自でどのような金融商品を購入するかを選択します。なお、投資可能期間は、現在の法令では、2023年までとなっています。

 NISAのデメリット

このように、節税メリットを期待できるNISAですが、気をつけなくてはならないデメリットもあります。それは、「利益だけではなく、損失もなかったことになる」という点です。

上場株式や投資信託などを売却した場合、元本割れをするリスクがありますが、NISA専用口座“以外の”口座で生じた損失を確定申告をすると、「3年間の損失繰越」をすることができます。損失繰越をすると、損失が発生した翌年以降3年以内に売却益が出た場合に、過去の損失と売却益を合算することができます。

たとえば、2018年に上場株式を売却して30万円の損失が発生したとして、2019年には50万円の売却益を得たとすると、2019年分の所得税は、50万円-30万円=20万円を基準に算定されるということです。

ところが、NISA専用の口座内の取引で損失が発生した場合、その損失は“ゼロ”とみなされますので、その後売却益があったとしても、合算することはできません。

このようなNISAのデメリットもあるため、NISAを利用するメリットは、「売却益や配当がある場合に限られる」と理解しておきましょう。

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小林義崇 (こばやしよしたか)

81年生まれ、福岡県北九州市出身。埼玉県八潮市在住のフリーライター 西南学院大学商学部卒。 2004年に東京国税局の国税専門官として採用。以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事する。2014年に上阪徹氏による「ブックライター塾」第1期を受講したことを機に、2017年7月、東京国税局を辞職し、ライターとして開業。実用書や雑誌・WEBメディア記事を多数執筆。