平成元年(1989年)から平成9年(1998年)まで
1989年は栄養剤のCMで「24時間タタカエマスカ」とのコピーが登場。バブル経済下のサラリーマンの勢いを感じさせるコピーでした。
しかし90年に株価暴落が発生。「バブル経済」がようやく時事用語として認識されました。91年には株価暴落で損失を被った顧客に対して証券会社が行った「損失補填」が社会問題化。
92年には「カード破産」や「複合不況」も話題になりました。さらに93年には金満的な風潮のアンチテーゼとして「清貧」という言葉も流行しており、バブル崩壊を実感させる言葉が次々と話題になったのです。
ただ面白いことに、同じ93年にはディスコ・ジュリアナ東京の「お立ち台」も話題になっており、バブル景気の残り香も同時に存在していました。
94年には、あの「就職氷河期」も話題になります。のちに「氷河期世代」などの派生語も生んだ言葉です。
97年には「日本版ビッグバン」も話題に。日本の金融システムをグローバルスタンダードに合わせるために変革する機運も高まったのです。
また、のちに首相となる小泉純一郎氏が「郵政3事業」の民営化を主張して話題になったのもこの年でした。
いっぽう98年には、不良債権を抱える金融機関による「貸し渋り」が社会問題化。ついに作家の堺屋太一氏(当時経済企画庁長官)が「日本列島総不況」と断言。政府もバブル崩壊を本格的に自己認識するに至ったのです。
平成10年(1999年)から平成19年(2008年)まで
1999年と2000年、新語・流行語大賞では経済関係の受賞語がありませんでした。ただ99年には「癒し」という言葉が受賞しており、世間の雰囲気からイケイケドンドンからマッタリに変化したことを感じさせます。
01年には小泉政権が誕生。経済政策パッケージの名称である「骨太の方針」や、郵政改革などに反対する「抵抗勢力」なども話題になりました。
02年には、98年の「貸し渋り」に引き続いて「貸し剥がし」も問題に。金融機関がすでに融資を実施している企業から資金を引き上げる行為も社会問題化しました。
03年には当時シンクタンクのアナリストだった森永卓郎氏(現・経済評論家)が「年収300万円」時代の到来を予言します。
いっぽうで経済界に新風を巻き起こした人もいました。当時ライブドア社長の堀江貴文氏がプロ野球への「新規参入」の意向(04年)を表明。
また翌年にはフジテレビの買収意思も表明して、その騒動の渦中で「想定内」という印象的な言葉も残しました。
とはいえバブル崩壊後の経済状況はますます深刻化。06年には「格差社会」という言葉も世間を賑わすようになりました(新語・流行語大賞で授賞式に登壇したのは、婚活、パラサイトシングルなどの造語で知られる、社会学者の山田昌弘氏)。
さらに07年は「ネットカフェ難民」、08年は「名ばかり管理職」も話題になり、格差社会を裏付けるような言葉も次々と話題になった時代でした。
国際経済ではサブプライムローン問題(07年)やリーマンショック(08年)が起こった時代に当たります。
平成20年(2009年)から平成29年(2017年)まで
2009年は民主党政権が誕生。この年に話題になったのが、やはり格差社会を象徴する「派遣切り」問題でした。リーマンショック以後の厳しい経済状況の煽りを受け、非正規労働者が企業による雇用調整の対象となったのです。
10年から12年にかけては、新語・流行語対象の範囲では経済関連の受賞はなし。これは民主党政権や東日本大震災の影響もあったかもしれません(ただし11年には「超円高」、12年には「休眠口座」のノミネートがあった)。
13年には安倍政権(政権自体は12年末に誕生)による経済政策を意味する「アベノミクス」が話題になりました。
14年は集団的自衛権の議論の影響からか、経済関連のキーワードは新語・流行語大賞には登場していません。15年は中国人観光客による「爆買い」が社会現象化。安倍首相が提唱する「一億総活躍社会」も話題になりました。
16年には日銀の「マイナス金利」政策も話題に。また米国ではトランプ大統領の当選が決まり(就任は17年1月)この出来事が「トランプ現象」とも呼ばれました。
その際、トランプ景気とも呼ばれる株価上昇現象も起こっています。そして17年には、月末金曜日の早期退社を促す官民共同のキャンペーン「プレミアムフライデー」も話題になりましたが、皆さんも実感している通り、この試みはあまり上手くいっていないようです。
ということで今回は、平成時代に話題になった経済ワードを「駆け足」で振り返ってみました。
総じて言えるのは、平成は「経済の低迷と戦い続けた時代だった」ということでしょうか。
来る新元号の時代には、もう少し明るい経済キーワードが話題になっていると嬉しいですね。