①日経平均、バブル後高値更新
5月19日の東京株式市場、日経平均株価が7日続伸し、終値が3万0808円35銭とバブル経済崩壊後の高値を更新し、33年ぶりの高水準となりました。企業の好業績やドル建てでみた日本株の値ごろ感などから海外投資家の買いが集まりました。
過去30年間の株価の伸びは米欧に見劣りしました。米欧との差を縮めるには稼ぐ力を更に高める必要があります。
海外勢は3月後半から買い手に急転換しました。東証によりますと、5月第2週まで7週連続で計2兆9000億円近く買い越しました。約2か月間の買い越し規模としては「アベノミクス相場」初期にあたる2012年12月~2013年1月の累計額(約2.8兆円)を上回るペースです。
海外勢の関心は業績の拡大です。日経新聞の集計で、東証プライム上場企業の2024年3月期純利益は3期続けて過去最高の見通しです。東証プライムの時価総額は773兆円(5月19日時点)と1990年8月から9割近く増えました。
円安・ドル高も好機と映ります。ドル建ての日経平均は2021年2月の直近ピークより2割強安い水準です。当時よりも円安が進んだためです。足元の円相場が落ち着いたこともあり、ドルで運用成果をみる海外勢の先高期待を後押ししています。
足元の日経平均は1989年末の最高値の8割の水準です。過去約30年間で米ダウ工業株30種平均は12倍、独DAXは9倍に伸びました。企業のROEも15~20%程度の欧米と差があります。持続的な株高には資本効率向上などを示し続けることが欠かせません。
昨年末比18%高で推移する日経平均に対して、中小型株のパフォーマンスは振るいません。5月19日の市場では東証マザーズ指数、東証グロース市場指数も反発はしたものの、昨年末比ではどちらも2~3%高にとどまっています。資本効率改善への取り組みに関しては中小型株の方がインパクトは大きいとの見方もあります。よって、日本株の一段高には出遅れた中小型株の買い直し機運が高まるかどうかも大きなポイントになるでしょう。
株主という点からも海外投資家の存在感は増しています。約30年間で銀行など安定株主の存在感は低下し、過半の企業で外国人の比率が1割以上に達しました。一方、個人投資家は日本株の将来に対して、半信半疑の状況です。東証の統計によると個人投資家は年初から1兆円近く売り越しています。市場との緊張関係を通じて経営者の意識が変われば株高の持続力は増すと思われます。
②G7広島サミット
5月21日、G7広島サミットは3日間の全日程を終えて閉幕しました。G7首脳は同日午前、来日したゼレンスキー氏を招いてウクライナ情勢を1時間ほど討議しました。サミットは侵略に晒される国のトップが参加する極めて異例の展開となりました。
ゼレンスキー氏は討議で「同盟国やパートナーとともに、民主主義、国際法、自由の尊重を保障する高いレベルの協力を達成した」と強調。「民主主義国家を侵略しようとする者は誰でも、その反応がどうなるか分かるだろう」と語りました。
招待国も参加する拡大会合にも出席し、インドやブラジル、インドネシアの首脳にも支持を訴えました。「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国は中立の姿勢を貫いており、各国の協力が和平実現には欠かせません。
岸田文雄首相は、G7広島サミットの閉幕を受けて記者会見に臨みました。
G7首脳による広島平和記念資料館の訪問について「被爆地を訪れ被爆者の声を聞き、被爆の実相に直接触れたことに歴史的な意義を感じる」と総括しました。G7首脳は核軍縮に関する初の共同文書「広島ビジョン」を発出しました。岸田文雄首相は「我々は2つの責任を負う。
一つは国民の安全を守り抜く厳然たる責任。同時に核兵器のない世界という理想を追い求め続ける崇高な責任だ」と強調しました。G7はサミットを通じ力による一方的な現状変更に反対すると一致しました。また、インドなど8カ国首脳との会合で、同じ認識を確認したと首相は明かしました。
ロシアによるウクライナ侵攻は「一方的に国境線を変更しようとする暴挙」と非難しました。
G7とウクライナの「揺るぎない連帯」を示せたと述べています。加えてG7は首脳宣言の中で中国の東・南シナ海での軍事的拡張を「深刻に懸念」と表明しました。
米国が「世界の警察官」をやめると宣言しておよそ10年が経ちます。ロシアのウクライナ侵攻や中国による東・南シナ海での頻繁な領海侵入は覇権主義的な行動を抑えられる存在がないこと、リーダー不在の世界になったことを象徴するのではないでしょうか。
岸田文雄首相が波乱なくG7を乗り越えたことで、自民党内に年内を含め早期の衆院解散・総選挙を期待する声が広がり始めています。首相は政治日程を睨みつつ時期を探るようです。
しかし、長男・翔太郎秘書官の更迭が、悪影響を及ぼさなければよいのですが。
③アップル預金
米アップルが米国で4月に始めた預金サービスが話題になっています。開始後、僅か4日間で約10億ドル(1380億円)の預け入れがあったことが分かりました。米国では預金引き出しによる地方銀行の破綻が相次ぎましたが、アップルは高い信用力と利便性を武器に新サービスの利用を広げる狙いのようです。
アップルは米金融大手ゴールドマン・サックスと組み、他の銀行よりも高い年4.15%の利率で預金サービスを4月17日に開始しました。初日だけでも4億ドル近くが集まり、最初の週には約24万口座が開設されたそうです。アップルが米国で発行するクレジットカード「アップルカード」を持っていれば、「iPhone」の財布アプリから1分もかからずに口座が開設できるそうです。
iPhoneは米国だけでも1億人を上回る利用者がおり、更に新サービスは拡大すると思われます。