当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①日銀政策修正」「②中国不動産不況」の2つです。

①日銀政策修正

7月28日、日銀は金融政策決定会合で長短金利操作(YCC)の修正を決定しました。

長期金利の誘導目標はゼロ程度のままにして、マイナス0.5%からプラス0.5%まで変動する幅は維持します。但し、その範囲を「メド」の扱いにしてある程度の上昇を容認し、代わりに厳格な上限値として1.0%を据えました。

2016年9月のYCC導入当初、長期金利の操作にまつわる数字は「ゼロ%程度」のみです。すっかり複雑になった現在の姿は、日銀がYCCの運営に如何に苦しんできたかの証左です。特にトラウマになっているのが、黒田東彦前総裁の下、昨年12月に実施した政策修正です。

債券市場の歪みに配慮して長期金利の変動上限を0.25%から0.5%に引き上げました。すると「金融緩和の出口に向けた事実上の利上げ」との受け止めから、0.5%の上限突破をもくろむ債券売りを誘発し、かえって歪みを深刻にしてしまいました。

この2022年12月の修正で得た教訓は2つです。まず、出口への展望がみえてから追い込まれ調整に動くと、混乱は昨年の12月の比ではないことです。思惑どころか、紛れもなく出口と直結するので、債券売りは制御不能となり、円や株式の変動も激しくなります。だから前もって動く必要が出てくるわけです。そして、前もって再修正に動くのならば、「出口に向けた利上げ」だと勘違いされないよう工夫を尽くすことです。だから、今回の修正で上下0.5%の変動幅を敢えて変えなかったのは、このためなのです。

しかし、新たな長期金利の上限を1.0%としたのは「1.0%までの上昇を容認する」という意図ではありません。「もしものための安全弁」として、国債を無制限に買う措置の金利水準を1.0%に高めたまでの話です。ここで金利の急伸を防ぐ国債の機動的な買い入れの出番となります。

国債購入の役割が、金利を一定の範囲内に収める「金利操作」から財務省の為替介入に近い「債券介入」に移行すること意味します。

長期金利の上昇が株安などを通じて国内外に波及し、経済を揺るがします。そんなYCCショックが起こるのを防げるかは、債券介入という新たな試みの成否にかかります。当然、将来の出口自体が上手くいくかどうかにも密接に関係してきます。今後の日銀の動きと債券相場を注視していくことが重要になります。

※YCC=イールドカーブ・コントロール


②中国不動産不況

中国経済が揺れています。発火点は、不動産不況・地方財政難・人民元安の3つです。

中でも住宅販売不振で不動産価格の上昇を前提とした成長モデルがきしんでいます。不動産依存に限界がやってきたのではないでしょうか。

中国政府は思い切った財政・金融政策を打ち出せないジレンマに陥っています。

中国ではマンション販売価格の下落が広がっています。国家統計局によりますと、7月の主要70都市の新築住宅価格動向では、7割の都市で前月の水準を下回り、各都市平均の下落率は0.23%に拡大しました。先行き不安から販売不振が長引き、資金繰りが悪化した不動産大手への市場不安も高まっています。

不動産販売額では中国最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)に対する不安が高まっています。販売縮小で資金繰りが悪化しており、債務再編は避けられない情勢です。米ドル債の流通利回りは3000%を超え、債務不履行を織り込んでいるようです。2022年の不動産販売額で碧桂園は3569億元(約7兆1000億円)で中国トップでした。開発したマンションの近くに語学などで知名度の高い私立学校などを招致し、教育熱心な中高所得層の購入を誘う戦略でブランドを確立しました。

ただ、先行して払った開発用地と建設・資材の代金を、数年後の住宅販売で回収する不安定な資金構造は、中国恒大集団を代表とする他の開発会社と変わらないのです。

碧桂園の債務総額は1兆4348億元で、このうち住宅の引き渡しが済んでいない顧客に対する「契約負債」が6681億元を占めます。中国政府は住宅の引き渡しを最優先課題としており、経営再建には債券など金融債務の再編は避けられません。碧桂園は「様々な債務管理の措置を採ることを検討する」としています。

一方、経営再建中の中国恒大集団は、8月17日、米国で連邦破産法15条の適用を申請しました。破産法15条は外国籍の企業を対象とし、適用により訴訟や差し押さえを回避して米国内の資産を保護できます。6000億元(約12兆円)を超える恒大の有利子負債のうち、米ドルと香港ドル建ては27%になります。恒大は、破産法の申請は債務再編の一部分であり、「破産申請ではない」とのコメントを発表しました。今後、予定している外貨建て債務再編の協議を有利に進めるのが狙いのようです。日本経済新聞の集計では、不動産販売上位10社に恒大を加えた11社の負債総額は22年末時点で10兆元を超えて、中国GDPの1割近くになるようです。

金融当局は市場の動揺を抑えるため対応に追われています。今後も、中国の不動産会社並びに金融当局の動きを注視していく必要があります。

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