中核的な意味は「応じること・従うこと」
コンプライアンスは英語のcomplianceがカタカナ語になった言葉。そのcomplianceの原型になっているのが、動詞のcomplyです。
その意味するところは「応じる・従う」というもの。例えば、それが人や組織なら「要求・命令・指示・規則など」に応じること、それが物なら「仕様・基準など」に応じることが、complyの意味するところなのです。
そしてcomplianceはその名詞形。このためコンプライアンスとは「応じること・従うこと」を意味するわけです。
現在、日本語で登場するコンプライアンスの多くは「組織に関するコンプライアンス」を語る場面で登場します。
つまり企業一般や放送局といった組織について、何かにきちんと応じているかどうかが問われているのです。
ともあれここでは「コンプライアンスの中核的意味は応じること・従うことである」とだけ覚えておいてください。
「企業」は誰に何を応じるべきなのか?
ではコンプライアンスにおいて「応じるべきもの」とは何なのでしょうか? これについて新聞などのメディアでは「法令(遵守)」と説明することがあります。
しかし実際の企業経営では法律を守るだけでは不十分。例えば「社内規範」を遵守することも重要ですよね。
社内規範が守られない状況があると、それが不正の温床になり、最終的には法律違反を伴う不祥事につながることもあります。
部署内で不正に行われた会計が、対外的な粉飾決算につながる場合を想像してみてください。
そして、もうひとつ企業が従うべきものに「社会規範」もあります。例えばあるメーカーが合法的かつ安価に調達した部品が、実は調達先で劣悪な労働環境のもと生産されていたとしましょう。
その場合、部品を購入したメーカーも「劣悪な労働環境を看過した」と見なされるかもしれません。
近年の企業経営では、CSR(企業の社会的責任)という概念のもと、企業を取り巻くあらゆる利害関係者(経営者・従業員・取引先・消費者・投資者・社会一般)に対して責任を負うべきと考えられています。
そしてそのような相手に対して「法的責任」のみならず「倫理的責任」も果たす必要がある、と考えられているのです。
これらがコンプライアンスの名の下に「応じるべき対象」であり「応じるべき内容」となります。
では「番組」は誰に何を応じるべきなのか?
いっぽうテレビ番組で「コンプライアンス」が語られるようになった背景には、まず以上で紹介したような「社会全体における経営意識の変化」がありました。
これに加えてBPO(2003年に設立された自主的な番組審議機関)やネット世論の存在も大きく影響したかもしれません。
放送関係者の中には、BPOによる勧告や、ネット世論による批評・批判の類を「口うるさく」感じる人も少なくないようです。
言い換えると「コンプライアンス」を面倒に思う人も少なくないように思います。
しかし前述した通り、コンプライアンスにおいて応じるべき内容は、放送業界にとっても「法令・倫理」であることは間違いありません(決してBPOやネット住民「だけ」が応じるべき相手ではありません)。
放送局を取り巻くあらゆる利害関係者(制作関係者・スポンサー・取材対象・視聴者・社会一般)に対して「法的責任」のみならず「倫理的責任」も果たしているかどうかが問われているわけです。
それは「誰に何を応じる」話なのか?
ともあれ。今後、何かの文章の中でコンプライアンスという言葉に出会い、もしその意味がわかりにくかった場合、「この場面では誰に何を応じようとしているのか?」という問いを立てれば、理解のヒントになるかもしれません。
例えば「我が社のコンプライアンス体制を確立しよう」と言われたならば、「我が社は誰に何を応じる体制を作ろうとしているのか?」考えてみよう、ということです。
これがコンプライアンスの実際的な意味を理解するためのコツとなります。
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