当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①FRBパウエル議長講演・米ジャクソンホール会議」「②円安加速、144円台」「③1000万戸、家余り時代へ」「④平成のカリスマ経営者、稲盛和夫氏 死去」です。

①FRBパウエル議長講演・米ジャクソンホール会議

先日、世界の金融関係者が注目するFRBパウエル議長の講演が米ジャクソンホール会議で行われました。

「やり遂げるまで続けなければならない」。パウエル議長は利上げ継続によるインフレ阻止の姿勢を鮮明にしました。景気が悪くなればFRBは金融引き締めを和らげるのではないかとの市場の楽観論を戒めた形となりました。景気後退を避けながらインフレを抑え込む軟着陸の難易度は高まりました。

パウエル議長の後に講演したECBのシュナーベル専務理事は、成長率低下などのリスクを冒してでもインフレを抑える「『決断の道』が支持されている」と述べました。欧州では景気後退の懸念が強まるものの、ECBとして目先の景気より利上げによるインフレ阻止を重視する姿勢を示唆しました。

会議の参加者からは、こうした強い姿勢を支持する声が相次ぎました。元インド中銀総裁で現在はシカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は、「市場はFRBが来春にも利下げするという根拠のない誤解をしていたが、FRBがインフレ抑制に向けて何をしようとしているのか非常に明確なイメージを与えた」と指摘し、物価抑制を確信できるまで高い政策金利を維持する方針を高く評価しました。

しつこい高インフレを断つ覚悟を示した米欧中銀。その「賭け」が成功するかは、財政政策にも大きく左右されることを忘れてはなりません。

※FRB=米連邦準備理事会
※ECB=欧州中央銀行
※ジャクソンホール会議=米国のカンザスシティー連邦準備銀行がワイオミング州のジャクソンホールで毎年夏に開く金融・経済シンポジウム

②円安加速、144円台

9月に入り、円安が急速に進みました。9月7日の外国為替市場で円相場は一時1ドル=144円台と1998年8月以来、およそ24年ぶりの円安・ドル高水準になりました。米国で金利上昇が進む一方で日銀が大規模な金融緩和を続けているため日米金利差が拡大、円売り・ドル買いを加速させました。

年間ベースの円の対ドル下落率は20%に達し、1973年の変動相場制の下では最大となりました。

9月6日、0.5%の利上げを実施したオーストラリア準備銀行(中銀)に続き、今後も主要中銀の金融引き締めが相次ぐ見通しです。特にスイス国立銀行(中銀)が9月22日の会合で、マイナス金利を脱するとみられており、主要中銀では日銀だけがマイナス金利政策を続けることになります。今回の円安局面で円売りの主役は海外ヘッジファンドなどです。金利差拡大は揺るがないと自信を深めています。

こうした海外ファンドを勢いづけたのが、8月下旬に開催された経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」です。米欧の中銀は相次いで利上げの継続・必要性を強調したのに対し、日銀は緩和継続を強調し、差が改めて鮮明になりました。もし、日銀が円買い介入をすれば1997~98年以来となりますが、当時は日本の金融危機やアジア通貨危機など特殊な経済状況でした。現在の円安は、日米両国が自発的に行っている金融政策が主因で、円買い介入は米国に受け入れられにくいと思われます。

米国はインフレ抑制の為、ドル高を望んでおり、交渉が難航するのではないでしょうか。


③1000万戸、家余り時代へ

2023年、住宅総数が世帯数に対し、約1000万戸も余る時代が到来します。かつての住宅不足の解消を目指す政策が人口減少社会でも維持されてきたことで、家余りがさらに深刻になります。既に849万戸ある空き家問題が一段と拡大しかねない危機に直面しています。

総務省の住宅・土地統計調査によると日本の住宅総数は18年時点で約6241万戸へ増えると予測しています。野村総合研究所は23年に最大6546万戸へ増えると見込んでいます。国立社会保障・人口問題研究所は、23年に日本の世帯数が5419万とピークを迎え、減少が始まる節目とみています。人口が減っても長寿化や生涯未婚率の上昇から一人暮らしが広がり、世帯数だけは増えてきましたが、転機が訪れます。では、人口減時代の家余りにどう対応すればよいのでしょうか。

答えは2つあります。1つは、既存住宅の有効活用です。日本では一部の高齢者や一人親世帯が住宅確保に苦労する例があります。行政内部で住宅・福祉など各分野で情報が共有されれば既存住宅の活用の余地はまだあると考えられます。もう1つは解体になります。空き家を解体して更地にすると原則、固定資産税が高くなります。そこで国が税制などで個人が解体を進めるインセンティブを整えれば宜しいのでないでしょうか。

国を挙げて住宅リストラに取り組まねば、余剰住宅は空き家のまま朽ちていくことになります。


④平成のカリスマ経営者、稲盛和夫氏 死去

京セラの創業者で名誉会長の稲盛和夫氏が8月24日、死去されました。90歳でした。鹿児島県出身、鹿児島大学工学部卒業後、1955年、京都の絶縁磁器部品会社・松風工業に就職。代表的な電子部品材料のセラミック技術者に。1959年、京セラの前身となる京都セラミックを27歳で創業しました。

1966年、米IBMから集積回路用のセラミック基板を受注したのを機に本格的な成長軌道に乗りました。業容拡大を支えたのが独自の経営手法です。組織が大きくなると、どの部門が利益を上げ、どの部門の生産性が低いかが見えにくくなるという弊害がでてきます。それを克服するために「アメーバ経営」を導入しました。組織を小集団に分け、部門別に採算や目標を月単位で徹底的に管理することで、社員一人ひとりが自主的に経営参加することを目指しました。

1984年、通信の自由化をにらみ第二電電を設立しました。KDDなどとの合併を経て現在のKDDIを誕生させました。2010年、経営破綻した日本航空の再建の為、会長に就きました。甘えの抜けない幹部は厳しく叱責しましたが、一般社員には優しく接していました。

松下幸之助氏が昭和のカリスマ経営者なら、稲盛氏は平成のカリスマ経営者です。お二人とも中堅・中小企業の経営者の共感を呼び、経営を人生論に昇華させました。稲盛氏は「よく生きる」を一途に追求した稀有な経営者でした。



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