当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①中国ゼロコロナ政策・独身の日」「②米IT業界リストラ」「③国内GDPマイナス成長」です。

①中国ゼロコロナ政策・独身の日

11月26日から27日にかけ、中国の主要都市で新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策への抗議行動が相次いでいます。政府の打ち出した緩和策を地方レベルで実現できず、市民の強い不満に繋がっているようです。上海市では習近平指導部への批判も出るなど、共産党の統制が強い中国では異例の事態となっています。

直接のきっかけは、11月24日に発生した10人が死亡したとされる新疆ウイグル自治区ウルムチ市の火災。SNS上ではロックダウンの影響で「消火活動が遅れた」との情報が出回っていました。犠牲者の追悼が抗議活動に発展しており、首都北京市や四川省成都市、湖北省武漢市、広東省広州市などに広がりました。

習国家主席の母校で北京の名門・精華大学でも学生の抗議活動が起きました。SNS上の動画によると、上海では習氏の辞任を求める抗議参加者の姿がありました。当局は投稿や動画の削除に躍起になっています。

中国ではゼロコロナ政策の影響で景気の減速が鮮明になっています。内需は10月に小売売上高が前年同月比でマイナスに転じ、外需も10月は輸出が減少しました。IMFは2022年のGDP成長率が3.2%に留まると予測し、特に若年層の就職難は深刻さを増しています。

習近平指導部は異例となる3期目をスタートさせたばかりです。政権安定には、日常生活や社会経済活動の制限長期化で「我慢の限界」に達した国民の不満に一定の配慮が不可欠です。11月27日、首都北京では警官隊が暴力的な弾圧を控え、抗議を見守るような光景もありました。

もう一つ大きな異変が中国ではありました。抗議活動の少し前、11月11日「独身の日」、例年、アリババを中心にEC各社が大セールを行い、取引額を公表していました。ところが、今年は非公表です。背景には、習近平指導部によるIT企業への規制が厳しくなったことがあるようです。政府から目を付けられないようにするため、自主規制として総取引額の公表を控えたようです。今後も抗議活動や景気がどうなるのか、注視していく必要があります。

※IMF=国際通貨基金、※GDP=国内総生産、※EC=電子商取引

②米IT業界リストラ

米国のIT業界でリストラの嵐が吹き荒れています。各社が大規模な人員整理に踏み切ったのは景気悪化懸念が台頭したことが主因ですが、それだけではありません。過去20年、ネット業界は社会のIT化と並行して業容を拡大してきました。しかし、ここに来て、一連の進化に陰りが見えてきたことも大きく影響しています。

大手IT企業のリストラは、ツイッターから始まりました。イーロン・マスク氏が買収、11月4日にCEOに就任するや、全世界に7500人いた従業員の約半数を解雇しました。その他の企業でも相次いで人員整理が行われています。

フェイスブック・インスタグラムを手掛けるメタは1万1千人、アマゾンも約1万人の人員を削減します。

景気悪化の影響を受けるのはIT業界に限ったことではないですが、他の業界と比較して先端的なIT業界は特に影響が大きいのです。その理由は、先端的なIT企業の経営というものが、基本的に株価と広告収入に依存しているからです。GAFAに代表される、先端的IT企業の株価は総じて高く推移してきました。IT企業の時価総額が極めて大きかったのは、爆発的な成長が今後も続き、将来、大きなキャッシュフローを獲得できるという市場の期待値があったからです。ところがFRBによるインフレ抑制のための連続利上げで、米国の景気悪化が現実味を帯びてきました。株価の期待値を最大限活用するには景気見通しが明るくなければなりません。金利上昇はIT企業の株価を直撃しました。

次に広告収入面です。アマゾンのようにリアルな事業をもつ企業は別として、メタやグーグルの主な収入源はネット広告です。これまでのIT業界では、従来型の広告企業から顧客を奪う形で成長を続けることができました。ですが、ネット広告が当たり前になってしまうと以前のように他媒体から顧客や予算を奪うことが出来なくなってしまいます。今回のリストラは本格的な景気後退前に組織をスリム化し利益体質を強化する戦略に出たということです。

これまで、新技術を使った新サービスを次々と提供してきたIT業界ですが、新技術投入も一段落となる可能性が高くなり、IT主導型経済成長も1つの区切りを迎えたかもしれません。

※GAFA=グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字を取った造語※FRB=米連保準備制度理事会(中央銀行)

③国内GDPマイナス成長

内閣府が11月15日、7〜9月期のGDPは、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.3%減、年率換算で1.2%減に。

マイナス成長は4四半期ぶり。GDPの過半を占める個人消費は新型コロナウイルスの第7波の影響で伸び悩み、前期比0.3%増に留まりました。市場ではプラス成長が続くとの見方が大勢を占めていました。予測中心値は年率1.0%増でした。

マイナス成長に転落した主因は外需です。前期比の寄与度はマイナス0.7%。GDPの計算で差し引く輸入が5.2%増え全体を押し下げました。特にサービスの輸入が17.1増と大きく膨らんだのが響きました。内閣府の担当者は「広告に関連する業務で海外への支払いが増えた」と説明しています。「決済時期のずれも影響した」との見方も示しました。

個人消費と並ぶ内需のもう一つの柱、設備投資は1.5%増で2四半期連続で伸びました。企業がコロナ禍で持ち越した分の挽回も含め、デジタル化や省力化の投資が進んでいます。住宅投資は0.4%減で5四半期連続のマイナスになりました。

建築資材の高騰が影響しています。公共投資は1.2%増と2四半期連続で増えました。21年度補正予算や22年度当初予算の執行が進みました。コロナワクチンの接種費用を含む政府消費は横ばいでした。

家計の収入の動きを示す雇用者報酬は名目で前年同期比1.8増えましたが、実質は2四半期連続でマイナス、1.6%減少です。

物価上昇に賃金上昇が追いついていません。10~12月期はどうなるでしょうか。明るい指標としては、外食や小売りの売上高が10月に入って伸びています。

10月の外食売上高は初めて新型コロナウイルス感染拡大前の水準(2019年10月)を上回りました。コンビニの10月売上高も今年最も高い6.9%増を記録しました。百貨店も10月の売上高は前年同月比11.4%増と回復基調です。

但し、足元の物価高が生活に与える影響はこれから本格化する見込みです。節約志向が強まれば買い控えなどの影響が小売り・外食に出る可能性があります。当面は、月次の指標動向から目が離せません。

※GDP=国内総生産


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