当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①コロナ禍、首都機能分散か東京一極集中か」「②コロナ禍、米中新冷戦の様相」です。

①コロナ禍、首都機能分散か東京一極集中か

コロナ感染拡大が国内でも進む中、6月25日、自民党の有志議員が首都機能などの分散を目指す議員連盟「社会機能の全国分散を実現する議連」の設立総会を開きました。首都機能を丸ごと地方に移すのではなく、地方への一部移転や代替施設の確保を念頭に、国会は東京に残し、非常時、国会議事堂が使用不能に陥った時に備えた代わりの施設の設置を検討します。企業の本社は役割ごとに分散する形態を提言、東京は金融都市とするなど地域で特徴を出す将来像を描きます。

この設立総会に先んじて、西村経財相も「東京一極集中を転換する大きなチャンス」と記者会見で述べています。日本は、東京一極集中が進んでいる。5月1日時点で、東京の人口は、初めて1400万人を突破しました。中央省庁は霞が関に集中し、新型コロナ感染者数は他の道府県より群を抜いて多く、医療崩壊リスクが露呈されました。

東京は、人口が集中する反面、出生率は全国最下位です。これには、出生率の算定法に要因があります。県単位で15歳~49歳の女性がどれだけ子供を産んだかを割り出すのが現在の算定方法です。東京のように若い女性の流入が続くと出生率は低くなりやすいのです。2019年の住民基本台帳では転出入の差し引きで39道府県で9万2千人の女性が減少し、そのうち9割は埼玉、千葉、神奈川を含む首都圏への転出超過でした。東京の女性は4万7千人純増、これは小規模な市の総人口に匹敵します。転入超過数は男性の1.34倍で、女性の方が東京に定着する傾向があります。東京一極集中は若い女性や子供で顕著です。

コロナ感染拡大を契機にオフィスの在り方も変わってきました。企業がコスト削減も見込んで、都心のオフィス面積を減らす一方、郊外や地方に分散する動きも出始めています。東京都心5区の6月末空室率は、前月比0.33ポイント上昇の1.97%で、上昇幅は2010年2月以来、10年4ヵ月ぶり高水準となりました。また、内閣府の意識調査で、テレワークを経験したのは全国の34.6%に対し、東京23区は55.5%、東京23区に住む20歳代で地方移住への関心が高くなったとの回答は35.4%に上りました。

東京一極集中が続くのか、それとも首都機能・本社機能の地方分散が進むのか、カギの一つは、コロナ感染がどこまで拡大し、長期間に及ぶのかにあるかもしれません。

②コロナ禍、米中新冷戦の様相

7月も下旬に入ると、急速に米中関係が悪化してきました。

7月23日、ポンペオ米国務長官が訪問先のカリフォルニア州で対中国政策について演説しました。「私たちが共産主義の中国を変えなければ、彼らが私たちを変える」と習近平国家主席をトップとした共産党政権を痛烈に批判しました。トランプ政権には中国共産党の体制そのものに問題の根源があるとの認識が強まりつつあります。歴代の米政権が取り組んできた経済的発展を支援し中国の民主化を促す「関与政策」は失敗であると改めて断じました。中国の反発は直様起こり、「新冷戦」とも目される米中対立は新たな段階に入ったと思います。

コロナ前は、貿易面の対立が中心でしたが、コロナ後、徐々に広範囲での対立点が浮かびあがってきました。WHOは「中国より」と判断、脱退を宣言し、中国の「香港国家安全維持法」に施行に対抗し、「香港自治法」を成立させました。そして、米中両国内にある総領事館を、双方が閉鎖する事態にまでエスカレートしています。

この状況下、日本が果たすべき役割は、2つあると思います。1つは、これまでアメリカが支えてきた国際秩序を維持していくことです。これは日本が単独で出来ることではなく、特にインド太平洋地域で、強権的な中国と内向きなアメリカを懸念する諸国との連携役になることが必要です。オーストラリア、インド、韓国、そして「海のASEAN」と呼ばれる、ベトナムやインドネシアなど、中国と領有権争いを抱えている国々です。既に、重要な経済パートナーですが、更に関係を深める必要があると思います。

もう1つは、かつてTPPで構想したように、日本がアメリカの関係者とともに現実的な対中戦略を考え、アメリカの行動に影響を与えることです。今後の米中関係がどうなるのか、アメリカの専門家でも読み切れていないと思います。何故なら、トランプ大統領の行動や、11月の大統領選挙も不確定要素が多いからです。そのような中で、日米の専門家がタッグを組み、建設的な対中戦略を考えることが重要だと考えます。

コロナ感染拡大が続く中、日本が重要な役割を果たすことで、「米中新冷戦」状態が解消されるいくことに期待したいと思います。