当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①家計金融資産」「②働く高齢者」「③『分配』強調、『成長』乏しく」「④悪い円安」です。

①家計金融資産

日銀が発表した資金循環統計によりますと、4~6月期の家計金融資産は6月末時点で1992兆円と前年同期比6.3%増加し、比較可能な2005年以降で過去最高になりました。

過去最高は4四半期連続で、株高で株式や投資信託の含み益が増加、加えて6月のボーナスが現預金の残高を押し上げました。

現預金は4%増加の1072兆円と過去最高を更新しました。現金が102兆円、預金が970兆円で共に過去最高を更新しました。ボーナス支給に加え、新型コロナウイルス禍で個人消費が抑制されていることも現預金の積み上がりに繋がりました。株式は30%増の210兆円、投資信託は29%増の89兆円で共に株高が含み益を押し上げました。

企業の金融資産は8%増の1226兆円と3月末の1230兆円に比べ小幅に減少しました。現預金も316兆円と3月末の319兆円から小幅減少したもののいずれも高水準を維持しています。

市場全体に占める国債の保有内訳は、日銀の保有残高が前年比3.7増の540兆円となりました。全体に占める割合は44.1%になります。次いで、生損保の219兆円・18.0%、民間銀行の205兆円・16.8%となりました。


②働く高齢者

総務省が発表した9月15日時点の人口推計によりますと、65歳以上の高齢者人口は3640万人で2020年より22万人増加しました。総人口に占める割合は0.3ポイント上昇し29.1%と過去最高を更新しました。就業率は20年で25.1%と9年連続で上昇しました。

高齢者の総人口に占める割合は世界201の国・地域の中でも最も高く、第2位のイタリアを6ポイント近く上回ります。国立人口問題研究所の推計では、今後も上昇を続け。2040年には35.3%まで上昇する見通しです。

働く高齢者の割合も増加しています。65歳以上の就業者数は906万人と17年連続で増加しました。15歳以上の就業者数に占める65歳以上の割合は13.6%と過去最高を記録しました。20年の高齢者の就業率は25.1%で、男性が34.2%、女性が18.0%となりました。他の主要国の状況は、米国・18.0%、カナダ・12.8%、英国・10.5%、ドイツ・7.4%、イタリア・5.0%、フランス・3.3%と日本より低く、韓国は34.1%で高かったです。

日本で就業している高齢者の半数は企業が雇用しています。そのうち8割近くはパートやアルバイトなどの非正規雇用でした。非正規は10年前に比べて227万人増加し、割合は7.6ポイント上昇しました。

各産業の就業者に占める高齢者の割合は、農業・林業が53.0%と最も高く、不動産・物品賃貸業が26.4%と続いています。

「団塊の世代」と呼ばれる1947~49年生まれを含む70歳以上の人口は、前年より61万人増加し2852万人となりました。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は1880万人となり、働く高齢者の増加に伴い、今後、社会保障制度の見直し議論も急ぐべきではないでしょうか。


③『分配』強調、『成長』乏しく

10月19日、第49回衆院選が公示されました。それに先立ち与野党9党首は、日本記者クラブ主催の討論会に臨みました。2時間の討論で9党首の発言に含まれるキーワードを分析してみました。

「分配」は45回で「成長」の29回を大幅に上回りました。「改革」は9回にとどまり、その大半は「大胆な規制改革による成長戦略」を公約に入れた日本維新の会の松井一郎代表でした。

「成長」の文言を使った党首発言の内訳をみると、経済政策で「成長と分配の好循環」を掲げる首相が全体の6割を占めました。各党首から首相への質問は分配政策に集中しました。具体的な措置に踏み込んだ回答は非常に少ないものでありました。

自民党が公約に盛った新型コロナウイルス禍で苦しい状況にある非正規雇用者や子育て世帯への経済支援について、松井氏は手法と時期を質問しました。首相は「出来るだけ幅広い方々に成長の果実が行き渡ることが重要だ」と述べるにとどめました。

分配政策は各党が前面に打ち出しました。公明党は0歳~高校3年生への一律10万円相当の支援を訴えました。山口那津男代表は「一律でスピード感をもってやる」と強調しました。首相は「与党として調整したい」と一定の受入れを示唆しました。

討論会の議論が分配中心となり、中長期的な経済成長をもたらす政策や規制改革の議論は影を潜めました。首相は野党が訴える消費税減税に関して「買い控えや、将来、戻すと消費が減退するなど副作用が大きい」と指摘しました。「今の段階で消費税を触るべきではない」とも言明しました。



④悪い円安

9月初旬、1ドル=110円だった水準が、中旬から円安に加速度がつき、10月中旬、1ドル=114円台になりました。今回の円安局面では、円安・株高をテコにした輸出主導の経済回復シナリオはすっかり鳴りを潜めてしまいました。今回の円安は、資源高による外在要因が招いた「悪い円安」といえます。

株式市場への影響は顕著で、原油などの輸入物価高騰に伴う円安が、コロナからの経済再生を妨げるという見方が広がり、日本株買いを躊躇させています。

「悪い円安」の影響はどれくらい大きいのか。象徴的なのが、貿易での稼ぎやすさを示す交易条件の悪化です。日本の輸出企業の場合、資源などの原材料の輸入価格が下がり、製品の輸出価格が上がって交易条件が改善すれば、企業業績が良くなり、株価も上がりやすくなります。ところが現在は、国際商品相場の高騰で輸入価格の上昇が輸出価格の上昇を上回っており、日本企業の収益を圧迫しています。

これまでの交易条件の悪化は、円安か原油高のどちらかが進んだ時でしたが、今回は、円安と原油高が同時に進行しており、その分だけ悪化ペースも急激で、日本企業が十分に対応できていません。輸入物価の上昇は、内需産業にも広く及びます。資源高と円安の影響で輸入物価が上がっても、デフレ経済に慣れきった国内の消費者物価は浮揚せず、企業のコスト負担を膨らませます。一方で、輸入物価と連動しやすい電気代やガソリン価格の上昇は、コロナ後の国内消費回復シナリオに影を落としています。

資源価格の高騰がいつまで続くかは不透明です。また、年末にかけて厳冬になれば、原油価格の高止まりが続く事態は避けられないと思われます。急激な資源高を伴う「悪い円安」の到来は、円安頼みの政策運営の限界を浮き彫りにしました。衆院選挙後、日本政府がどのような成長戦略を描き出すのかが喫緊の課題と思われます。



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