病気やケガで普通の生活が送れない人を支える障害年金
公的年金制度は老齢年金と遺族年金、そして障害年金の3つの年金で成り立っていますが、そのうち障害年金については仕組みが複雑なため、内容をよく知らない人が多いのではないでしょうか。
「自分には関係ない」
そう思っている人もいるでしょう。
確かに、健康的で普通の生活が送れている間は障害年金について深く考えることはないかもしれません。
しかし、ある日突然病気やケガで心身共に自由が利かなくなる可能性は誰にでもあります。
万一そのような状態に陥ったら当然仕事や日常生活に大きな制限ができますし、今まで通りの生活が送れなくなります。
そんなとき、仕事をしながらでも年金を受け取ることができるのが障害年金です。
制限があってうまく働けない、日常生活に支障がある人にとっては非常にありがたい生活保障といえるでしょう。
障害年金は、加入している年金の種類によって「障害基礎年金」「障害厚生年金」のどちらかに分けられます。
老齢年金や遺族年金と同様に、基礎年金と厚生年金では受給要件が異なるのでそれぞれ簡単に説明します。
障害基礎年金
国民年金に加入している間(20歳~60歳)に初診日(障害の原因となる病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)のある病気やケガで、定められた障害等級表(1級・2級)に該当する障害状態にあるときに支給されるのが障害基礎年金です。
基本的に国民年金制度に強制加入する20歳~60歳の期間が対象の制度なのですが、20歳より前に初診日がある場合(※)や60歳~65歳未満で日本国内に在住している場合など国民年金に実質加入していない期間の傷病でも対象になるのが障害年金の大きな特徴です。(※ただし年金の支給は20歳からとなります)
老齢年金の場合は年金保険料を長く未納だった場合、年金受給そのものができない可能性がありますが、「未納期間があっても場合によっては受け取れる」ことは障害年金の最大のメリットといえるでしょう。
障害厚生年金(旧「障害共済年金」は一元化により障害厚生年金になった)
会社員の人などが受給する障害厚生年金は、障害基礎年金へ上乗せして支払われる障害年金です。
そのため、老齢年金と同様に障害厚生年金は支給内容が手厚くなっているのが特徴です。
また、障害基礎年金の1級、2級に該当しない軽い程度の障害でも3級の条件に該当すれば3級の障害厚生年金が支給されます。
これは障害基礎年金にはない仕組みですので該当要件が一気に広がることになります。
なお、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金の条件から外れたものの軽い障害が残った場合は障害手当金が支給されます。
参照:日本年金機構「障害年金」
障害年金の受給要件は幅広い!うつ病から糖尿病、がんも対象になる
障害年金は、請求して障害状態を認められなければ支給されません。
この請求手続きが大変なため、社会保険労務士が手続きを代行することも多く、「障害年金はなかなか認められない」というイメージが世間に根付いています。
そしてこうした手続きの大変さが障害年金についての理解がうまく広がらない原因なのではないかと思いますが、実は障害年金の対象になる病気やケガの種類はかなり幅広く、がんや糖尿病といった生活習慣病からうつ病といった精神疾患まで広く対象になっています。
<障害年金の対象になる病気やケガの種類>
1.外部障害:眼、聴覚、肢体(手足など)の障害など
2.精神障害:統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など
3.内部障害:呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど
そのほかの認定基準は障害認定基準を参照。
よく障害年金と混同されるものに「身体障害者手帳」がありますが、障害年金と障害者手帳は認定機関が異なります。
障害年金は日本年金機構、そして障害者手帳は厚生労働省管轄となっているため、障害等級(認定基準)そのものが違うのです。
「自分は障害者手帳が4級だから、障害年金はもらえない」などと思わず、それぞれ受給要件が異なるので必ず要件を確認するようにしましょう。
まとめ 今回の支給打ち切り背景から見る障害年金
今回ニュースで話題になった支給打ち切りの背景にあるのは、地域による障害年金認定のばらつきが問題視されていたことが要因としてあります。
各地域の認定ばらつきをなくすため、日本年金機構はこれまで各地域の医師の診断書に基づいて審査していた認定業務を、2017年4月に東京の障害年金センターに集約しました。
支給が打ち切られる可能性がある人には大変辛い状況になってしまいますが、そもそもあってはならない地域による不公平さをなくすこと、不正受給者を根絶して本来支給を受けるべき人に年金が回る仕組みを作ることは、年金制度のあるべき姿ではないでしょうか。
今回の支給打ち切り問題で障害年金がどうなるかはわかりませんが、現時点では障害年金はとてもありがたい制度です。
自分や家族にもしものことが起こった場合に障害年金を受け取れるよう年金保険料を納めるのはもちろんのこと、障害年金の概要や支給要件についても知っておくようにしましょう。