銀行融資の基本は物件評価
数ある投資の中で、自己資金が少なくても銀行から多額の融資を受けられるのは不動産投資だけです。
不動産投資の魅力は、融資を受けることで投資効率を高められることといっても過言ではありません。
しかし銀行側も無条件で融資を通すわけではありません。投資家が投資用物件のローンを申し込む際、銀行側はその物件と投資家を対象に審査をします。
この審査基準、居住用の住宅ローンと投資用物件のローンとでは重視されるポイントが違います。
投資用物件のローン審査
- 物件評価:収益性や担保価値などを見て、物件の評価をする
- 人的評価:勤務先や勤続年数、年収、他のローンやクレジットカードなどの借入や返済状況などを見て人的評価をする
居住用の住宅ローン審査は人的評価が審査の肝になるため、個人の信用力をしっかりと証明できれば融資は通りやすいものです。
しかし投資用物件のローン審査では、人的評価と同じくらい物件評価が重視されます。
人的評価をクリアできていても、投資対象の物件の評価が低かったり、投資家に物件の返済能力がなかったりすると、審査でつまずくことになるのです。
銀行側が融資の際に見る物件評価は、大きく分けて「積算評価」と「収益還元評価」があります。この2つは銀行融資の基本中の基本ですので、必ず押さえておきましょう。
物件評価の積算評価と収益還元評価について
積算評価と収益還元評価は、物件にいくらの価値があるかを判断するための基準です。
これを頭に入れておけば、銀行員と交渉するうえでも役立ちます。
ただ融資を受けるだけでなく、銀行員と交渉してより有利な条件で融資を受けられるようにすることは、不動産投資の成功に欠かせません。
積算評価とは
土地と建物を分けて別々に評価を測る方法です。
【積算評価=土地の価格+建物の価格】
∟土地の価格=路線価※1×土地の㎡数
∟建物の価格=再調達価格※2×延床面積×(経済耐用年数※3―経過年数)÷経済耐用年数
積算評価の計算式をざっくりと表すと上記のようになります。
※1 路線価とは:市街地の道路に面する宅地の、1㎡当たりの評価額のこと。国税庁のHPで確認できる
※2 再調達価格とは:「今、その物件を新築した場合の建築費用の㎡単価のこと
※3 経済耐用年数とは:建物の使用に耐えられる年数のこと(税法上の法定耐用年数とは異なる)
土地の㎡数や延床面積、経過年数は物件に紐づく情報ですが、再調達価格や耐用年数は銀行が独自に決めています。
そのため、計算式で出てくる積算評価は銀行によって違いがあります。
収益還元評価とは
将来の家賃収入を元にして、現在の物件価値を測る方法です。
「直接還元法」と「DCF還元法」とがあり、「DCF還元法」の測り方はかなり複雑になっているため、ここでは「直接還元法」をメインに話をします。
【収益還元評価=【年間家賃―(管理費+固定資産税+諸経費)】÷還元利回り※4】
※4 還元利回りとは:投資用物件から得られる投資利回りのこと。キャップレートともいう。対象の物件と似た物件の利回り情報を参考にして算出するか、不動産会社が公表しているエリアごとの利回り情報を元に算出する。一般的に6%~9%がよく使われている。
収益還元評価では、還元利回りの差が評価に大きな影響を与えます。
土地と建物の積算評価が低くても、過去の類似物件データなどから還元利回りが高く見込める物件であれば、収益還元評価が高くなることもあるのです。
積算評価にしても、収益還元評価にしても銀行独自の数値が計算に入るため、銀行によって出てくる評価は多少異なります。
また、積算評価を重視するのか、収益還元評価を重視するのか、両方の評価をバランスよく採用するのかも銀行によって違います。
つまり、ひとつの銀行で融資が通らなくても、違う銀行では融資が通る可能性もあるということです。
たとえ積算評価では価値が低くても、収益還元評価が高い物件であれば、銀行は将来の収益を見込んで融資を通してくれるかもしれません。
将来性を見込んで融資するということは、投資家であるあなた自身を見込んで融資するようなものです。
いくら物件の評価が高くても、融資をする投資家の投資方針があいまいで、不安定な戦略を立てているようでは、銀行も不安を感じてしまいますよね。
銀行が評価する物件を探すため、そして信頼できる投資家をアピールして融資交渉を有利にするためにも、物件評価法の基本は必ず押さえておきましょう。
どの銀行で融資を受けるべきか
物件評価の基本を押さえたら、次に「どこの銀行で融資を受けるべきか」という悩みができます。
一般的に融資を通しやすいと言われているのはメガバンクや地方銀行ですので、これらの銀行情報を収集し、比較したうえで訪問していくのだろうと思うかもしれません。
しかし、いきなり飛び込みで入ってきた投資家に簡単に融資する銀行はそう多くないでしょう(十分な資金力や信用力があればまた別ですが)。
筆者が不動産投資の初心者におすすめするのは「紹介」です。
すでに不動産投資をしていて実績のある投資家や、物件の相談をしている不動産会社があれば、銀行を紹介してもらえないか聞いてみましょう。
銀行とつながりのある人や取引実績のある会社からの紹介は、紹介してくれた人の信用力・影響力を使うことができます。
飛び込みで銀行を訪問するよりも手っ取り早く、融資交渉をスムーズに進めやすいのです。
銀行紹介の有無にかかわらず、不動産投資を実践している成功者や、信頼できる不動産会社の存在は非常に重要です。
信頼できる相談先があれば、各銀行の融資情報や物件情報など、さまざまな生きた情報を得られます。
ここに関してはネットで情報収集を完結させず、自分の足で生きた情報や成功者の知見を求めましょう。
生きた情報、生きた人脈は不動産投資を長期間続けていくうえで非常に重要です。面倒かもしれませんが、ここは手を抜かずに力を入れて見つけてください。
融資相談の際はこんなところが見られている!
融資相談する銀行に目星を付けたものの、いざ訪問となると気が重くなりますよね。
「物件評価も人的評価もクリアしているはず。でも、何を聞かれるのだろう。」とあれこれ考えて不安になるものです。
しかし借り手だからと言って気おくれしていては融資交渉がうまくできません。
たとえ銀行の評価にかなう物件を見つけても、投資家自身に明確な投資方針や経営戦略がないと、銀行側も多額の融資をする気にはなれないはずです。
融資相談に行く前は、どんなところが見られているのかを抑えておき、より有利な条件で融資してもらえるようにしましょう。
・キャッシュフローが長期的に見込める物件選びをできているか
キャッシュフローとは不動産投資における家賃収入と支出の差額のことで、「利益が出るかどうか」を示す大きな指標といえます。
たとえ融資金額が大きくても、キャッシュフローが長く、多く出る物件=利益が出る物件であれば、返済能力があると見なされます。
金利が上昇したり、災害などのトラブルがあったりしても、利益が出る物件であれば返済が破綻することはありません。
多少のリスクがあっても耐えられるキャッシュフローになっているかどうかは、不動産投資の成功を左右するため、何度もシミュレーションして利益が出る物件選びをしましょう。
・リスク対策はどのように考えているのか
不動産投資には空室発生時リスクや家賃滞納リスク、火災や地震といった災害リスクなどさまざまなリスクがあります。
しかし、ほとんどのリスクに対してあらかじめ対処することができるのが不動産投資の強みです。
リスク対策は融資交渉時だけでなく不動産を運用していくうえで重要なポイントです。
リスク発生時のキャッシュフローとあわせて、各リスクの対策はしっかり考えておいてください。
・出口戦略まで考えて物件選びをできているか
不動産投資における出口戦略とは、物件の売却のことです。
不動産投資の収益は家賃収益(インカムゲイン)と物件売却による収益(キャピタルゲイン)の2つで成り立っているため、いざというときの売却収益も考えて物件選びをしなければいけません。
物件評価が高くキャッシュフローがある程度見込める物件であっても、いざというときに売却ができなければ万一の経済的な損失をカバーすることができないからです。
キャッシュフローを求めるあまり、売りにくい田舎の物件を購入して出口に行き詰まることのないよう、キャッシュフローと売却収益、バランスよく考えて物件選びをしましょう。
融資相談のときに見られているポイントは、いずれも不動産投資を成功させるために不可欠なポイントです。
最初に経営戦略をしっかり立てておくことが、融資と利益を左右するのです。
まとめ
銀行融資について、銀行の厳しい視点をお話ししてきました。
この記事を読んで、融資に対してますます不安になってしまった人がいるかもしれませんね。
しかし、銀行も融資額を増やすことは大きな利益になるため、融資したくないわけではないはずです。
上述したように物件の評価基準は銀行によっても違いますし、担当者や融資をお願いする時期によっては審査の結果が変わる可能性もあります。
銀行融資の基本を知ること、入念な下準備をすることはもちろん大切なのですが、「一度断られただけでめげない」というポジティブな姿勢も必要です。
慎重かつポジティブな姿勢で、不動産投資を成功させましょう。
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