2020年の東京五輪開催決定後から各方面でその経済効果が算出されていますが、そうした特需的な現象は不動産業界も例外ではありません。土地価格は東京五輪開催によって上がることが予想されていますが、北京五輪やリオ五輪で作った施設はその後有効活用されていないという事例もあるだけに、「2020年にピークを迎えるのでは?」との見方があります。五輪開催、そしてその後の東京はどう変わっていくのでしょうか。不動産価格の変化を検証してみました。

東京五輪を前に不動産価格は上昇

2020年東京五輪――1964年以来となる花の都・東京で開催される世界最大のスポーツの祭典は、日本経済の発展に計り知れない影響を与えることでしょう。56年ぶりに五輪が東京に帰ってきますが、その影響もあり東京の不動産価格は上昇を続けています。

 

特に千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区からなる「都心5区」の地価上昇は著しいものがあります。2016年の地価公示価格を見ると中央区(551万3904円/坪)が前年比8.29%、千代田区(513万5088/坪)が5.32%、港区(306万5478円/坪)が10.97%、渋谷区(279万9488円/坪)が9.41%、新宿区(272万3362円/坪)が3.02%と軒並み大幅上昇を記録しました。

 

その他の地域にも目を向けると、大型マンションの建築計画が相次ぎ選手村の設置も決まっている「湾岸エリア」は特に不動産価格が高騰すると言われています。また、スカイツリーが近い「墨田区押上」「錦糸町」エリアも今後人気が高まると予想されており、さらには五輪後にリニア計画がある「品川・田町」エリアにも熱い視線が注がれています。このように五輪開催の特需によって上昇した地価は今後も高い水準をキープすることが期待できるのです。

 

参考にしたいロンドン五輪後の状況

しかし、こうした景気のいい話に対して「待った」をかける懐疑的な見方があるのも確かです。五輪開催後に東京の発展は失速するのではないかという専門家も数多く存在します。実際に2004年アテネ五輪や2008年北京五輪の競技場などの施設が“負の遺産”と化していることは報道でもなされており、2014年のリオ五輪をきっかけに建てられたマンションなどは買い手がつかずガラガラの状態が続いているようです。

 

「東京五輪後も同じ事態になりかねない」と不安視する声があるのも当然ではありますが、上述のアテネ、北京、リオデジャネイロと東京とでは都市としての規模感が異なります。そのため、同列に扱って比較するのは見当違いなのかもしれません。東京と同等の都市の規模感を誇る、ロンドンで開催された2012年の五輪を参考にすべきでしょう。森記念財団 都市戦略研究所が発表した2016年の世界の都市総合力ランキングによるとロンドンが1位で東京が3位でした。

 

ロンドンの不動産価格は現在も上昇を続けています。特にオリンピック公園周辺の不動産価格は、ロンドン五輪決定後の2005年7月から約10年間で84%もの上昇を見せました。ロンドンのケースでは五輪前から不動産価格が上がり続け、閉幕を迎えてもその傾向は変わっていません。そのため、政治・経済・文化において同等の規模感を誇る東京でも同様に、五輪が終わっても不動産価格は急落せず、むしろ上がり続けるのではないかと予想されているのです。

 

五輪後も歩みを止めない東京の進歩

東京五輪後も不動産価格が下落しないと考えられる材料は複数挙げられます。まずは2027年にはリニア中央新幹線の開業。世界最速603km/hを記録したリニアは、東京―名古屋間をわずか40分で結ぶだけに、さらなる経済の活性化が予想されます。また、羽田空港の国際化も進むので訪日客の増加が期待され、さらには渋谷の大規模再開発もあるため、都市としてのブランド価値はさらに上がり続けてもおかしくはないのです。

 

2020年の五輪後の東京は、人口減少の予想などから不動産価値が下降気味になるという専門家も存在しますが、五輪に対する過剰な期待の反動を懸念した見方と言えるでしょう。東京の場合は、リニア中央新幹線の運用開始、羽田空港の国際化、渋谷の再開発と五輪後の都市計画もしっかりと立てられており、好材料には事欠きません。そのため、ロンドン五輪同様に不動産価格にはさほど影響がないことが予想されます。悲観的な見方は“無駄な心配”に変わる可能性も十分にあるでしょう。

 

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