子どもの大学や就職準備に向けた資金を準備する際には、非課税のメリットを受けられる「ジュニアNISA」の利用を検討してみましょう。今回は、ジュニアNISAの仕組みや特徴を解説します。

ジュニアNISAのポイント

2016年1月からスタートした「ジュニアNISA」は、日本に住む0歳から19歳の個人が利用することができ、毎年80万円を上限として投資した金融商品を、最長5年間非課税で運用することができます。つまり、5年間は金融商品の売却益や配当に対し、一切税金はかからないということです。

たとえば、2018年にジュニアNISAを利用して株式を50万円分購入し、2020年に90万円で売却できたとすると、売却益が生じているにもかかわらず所得税や住民税は非課税。ここで仮にジュニアNISAを利用していなければ、売却益40万円に対し約20%の税率で課税されるため、ジュニアNISAを利用することで8万円を節税できているとうことです。

20歳以上の個人が利用できるNISA(以下「一般NISA」)との違いとして大きなものは、「18歳までは払い出し制限がある」という点です。簡単に払い出すことができないため、投資金額をあらかじめ無理のない範囲で決めなくてはなりません。

もし、18歳になる前に払い出しをする場合は、一部ではなく全額を解約することになり、しかも過去に非課税とされていた売却益や配当も含め課税されますので、ジュニアNISAを利用していた意味がなくなってしまいます。

ジュニアNISAの利用イメージ

ジュニアNISAの対象者は未成年ですので、多くの場合、購入される金融商品は、両親や祖父母が、「この子の将来のため」として資金を拠出するケースが多いでしょう。そのため、子ども名義のジュニアNISA口座を作ることで、勝手に引き出されてしまうのではないかと心配する方もいるかもしれません。

しかし、ジュニアNISAで管理・運用される金融商品は、両親や祖父母が代理して運用・管理をするため、勝手に引き出されるという心配はありません。

将来の大学進学や留学、就職のときの引越し代など、何かとお金が必要となる18歳を見据えて資産形成をする際には、ジュニアNISAは役立ちます。

また、ジュニアNISAが制度化された目的には、「投資教育への活用」への期待もあります。子どもの名義の投資口座を設け、運用成績などを親子などで話し合うことで、金融や投資、税金の仕組みといった金融リテラシーを高めるきっかけにすると良いでしょう。

ジュニアNISAの手続き

ジュニアNISAをはじめるための手続きは、一般NISAと同様に、証券会社や銀行など、ジュニアNISAを取り扱っている金融機関で口座の開設手続きをするところからはじまります。

口座の完了すると、以降毎年80万円の投資枠のなかで、金融商品を購入し、非課税で運用することができます。この投資枠は、1月1日から12月31日までの期間で設定されており、何度かに分けて合計80万円分購入することもできますし、一括で80万円分購入することもできます。

ジュニアNISAで運用していた金融商品は、前記のとおり18歳以降は払い出しを行うことができますが、払い出しをせずに20歳を迎えると、ジュニアNISAで管理していた金融商品を一般NISAの口座に移して、引き続き非課税で運用することもできます。

一般NISAは、毎年120万円の投資枠が設けられていますが、ジュニアNISAから移す金融商品については、上限なしで非課税の恩恵を受けることができます。

たとえば、ジュニアNISAで管理していた80万円分の金融商品が、20歳を迎えた時点で200万円に値上がりしていたとしても、200万円分がすべて非課税として取り扱われるということです。

このように、ジュニアNISAは、18歳の就職や進学を目的とする場合はもちろん、さらに年齢を重ねた先に使う目的で運用する場合にも、節税メリットを享受することができますので、家族単位で資産運用を考える際に、検討したい制度となっています。

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小林義崇 (こばやしよしたか)

81年生まれ、福岡県北九州市出身。埼玉県八潮市在住のフリーライター 西南学院大学商学部卒。 2004年に東京国税局の国税専門官として採用。以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事する。2014年に上阪徹氏による「ブックライター塾」第1期を受講したことを機に、2017年7月、東京国税局を辞職し、ライターとして開業。実用書や雑誌・WEBメディア記事を多数執筆。