株式投資をしていると色々な感情が出てきます。ロボットではなく感情豊かな人間が投資をしている以上、株式や株価の値動きに対してなんらかの感情(心理)を持つのは当然のことなのです。そして時にその株式に対する人間の感情は、健全な株式投資の邪魔をすることがあります。邪魔をする要素になると言うことは、すなはち投資の失敗へとつながるということになります。ここでは投資家心理のうち、投資を失敗へと導いてしまうものを3つほどご紹介していきます。

(1)ギャンブラーの誤謬

投資家心理において重要な位置にあるのが、この「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」と呼ばれる心理です。

ギャンブラーと名がついてるので、ギャンブルの時のみ発生するものだと思われがちですが、私たちの生活の中で似たような場面があれば生じる人間心理でもあります。

この心理は、例えば以下のような状況で起こります。

「コインの裏表を当てるゲームを5回するとして、現在3枚連続で裏が出ている。次に出る面は何か?」という問いがあると、多くの人は3回連続で裏が出ているのだからそろそろ表が出るだろう、と安易に考えてしまう。

この考え方こそギャンブラーの誤謬です。

実は何回連続で裏が出ていようが、次のゲームで裏表が出る確率は2分の1。つまり半々の確率なのです。

これを知っておかないと株式投資でも似たようなことが起こります。

「○日連続下げているのだから、そろそろ上がるだろう」のような値ごろ感は、この誤謬から生じている可能性が高いのです。

(2)保有(所有)効果

モノやヒトに対して未練が残りやすい性格の人は要注意な投資家心理です。

人間であれば誰でもモノを捨てられないとか、悪い人間関係を断てないという状態に陥ったことがあると思われますが、この心理状態は株式投資においては如実に現れます。

特に保有している株式に損失が生じているような状態や、長い期間保有しているなど妙に愛着が湧いてしまうことがあります。

本来であれば損失が生じている株式は早めに損を確定して、より値上がりの良い株式へと移った方が良いのですが、保有しているだけでまるで自分のお気に入り株のような錯覚に落ちいってしまうのです。

ひどい時には、株価が下がると、より株数を増やしてしまう「ナンピン行為」を行い、損失を拡大させてしまうこともあります。

これが保有効果と呼ばれる投資家心理です。

「自分にとって相性の良い株」となることはほとんどありませんので、できるだけ毒されないようにしたいものです。

(注意:企業を長期間、応援する意味で投資する場合には、お気に入り株として保有しておくことは問題ありません)

(3)アンカーリング効果

この効果を知っておくと「将来得られる大きな利益を逃さない」というベネフィットを得ることができます。

過去の数値にこだわると危ないという事実は私たちの生活の身近にも溢れています。

例えば通販番組などである価格が初めに提示され、その後期間限定の価格が表示されることはよくあると思います。

これもアンカーリング効果を利用した商品の販売方法です。もし値引き後の価格が最初から定価として提示されていたらおそらくそれほど売れなくなるのではないでしょうか。

株式投資でもこれと似たような現象が起こります。

例えば「現在1,000円の株価の業績好調なA社がある」と言われるのと「半年前は株価が500円だったが、現在1,000円の株価の業績好調なA社がある」と言われるのはどう感じるだろうか。

本来であれば全く同じA社のはずが、半年前の株価を知ってしまうとすでに株価が2倍になっていると認識してしまうため、せっかく業績好調な企業なのに株価が高過ぎると錯覚して手がでなくなってしまうかもしれません。

過去の数値にこだわることは、時に私たちに大きな錯覚を与えることがあるのです。

共通するのは人間特有の思い込み?

いくつか投資家心理について解説していきましたが、それぞれに共通するのは人間特有の思い込みがその根底にあるということです。

株投資においては株価に人間の行動の誤りが反映される場面が多々有ります。

ある株式の株価が通常ではありえないと思われる動きがあっても、その株式がそういう動きをしている以上、認識を間違っているのは人間の方なのです。

意外と株式投資をすると上記のような投資家心理に陥ることは多いです。

思い込みをできるだけ排除して投資を続けていくことは投資を成功へと導く第一歩なのかもしれませんね。

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早稲田大学法学部を卒業後、証券ディーラーを経て独立。Yahoo!ファイナンス『投資の達人』2015年のベストパフォーマー賞を受賞。マネーの専門家かつ個人投資家として活動中。個人ブログ「インカムライフ.com」。日経BP社「日本の億万投資家名鑑」などメディア掲載多数。