2000年代から普及し始めたSuicaやPASMO、WAONなどの電子マネーは、年々拡大の一途をたどっています。現状のペースでいけば5兆円市場突入が確実なことからもわかる通り、交通系を筆頭に決済の手段としても確実に定着し始めています。導入当初に比べれば使い勝手も格段に向上しており、今後より利便性が高まることが期待されている電子マネーですが、成長市場においてどんな可能性を秘めているのでしょうか。電子マネーの現状と今後について考察してみました。

大きく分けて『交通系』と『流通系』の2パターン

日常生活の中で気軽に使える便利な電子マネーは、今や人々の生活にも確実に浸透しています。

主にコンビニでの買い物など少額の支払い時に使われることが多い電子マネーですが、大きく分けて2つのパターンが存在します。それが「交通系」と「流通系」です。

多くの人々が公共交通機関を利用する際に使う「Suica」や「PASMO」などは『交通系』の電子マネーにカテゴライズされます。

総務省統計局が発表した2014年の「全国消費実態調査」によれば、支払い方法として電子マネーを使う割合でもっとも多くを占めたのはバス利用時でした。

乗り降りの際に混雑する傾向のあるバスなどの交通機関において、手間なく迅速に運賃の支払いができることが交通系電子マネーにおける利点を言えるでしょう。

一方で「WAON」や「nanaco」、「楽天Edy」など、コンビニやスーパーで買い物をする際に使うのが、『流通系』の電子マネーです。

電子マネーで支払いを済ませることによってお釣りの受け取りなどに時間を取られることもなく、加盟店であれば溜まったポイントが使用できるといったサービス面の充実が特徴と言えます。

レジ会計でのストレス軽減に加え、ポイント付与という付加価値がつくため、流通系マネーを利用する方も増えています。

右肩上がりで成長する電子マネー発行枚数

電子マネー利用者が順調に増加していることは、電子マネーの発行枚数を見ても明らかです。

日本銀行の「決済動向」によると、2016年8月の時点で3億枚以上の電子マネーが発行されており、日本の人口で単純計算すると国民1人当たり2枚以上の電子マネーを所持していることになります。

また、電子マネーによる決済件数も発行枚数同様、順調に伸びているのも特筆すべき点と言えるでしょう。1ヶ月でだいたい4億件以上もの決済が行われており、平均決算総額は4,200億円にも上ります。

1件当たりの平均決済額は995円のため、少額で多くの取引が行われているのが、現在の電子マネー市場の現状だと言えます。

これだけ多くの取引が電子マネーによって決済されるようになったのは、「Suica」や「WAON」とは異なる、後払い方式の電子マネーが登場したのも1つの要因です。

三井住友が注力し、コンビニを始めさまざまな加盟店で使用ができる「iD」や、JCBが発行している「QUICPay」は着実に利用件数を増やしており、電子マネーのさらなる浸透を後押ししています。

現金・クレジットを凌ぐ決済方法になる可能性も

このままのペースで電子マネー市場がさらに拡大すれば、いずれ現金やクレジットを凌ぐ決済方法として社会に浸透する可能性は十分考えられます。

最近の電子マネーの技術向上は著しく、Appleが非接触IC技術Felicaを導入したことで、iPhone 7ではついにお財布ケータイとしての機能を果たせるようになりました。

電子マネーが活躍する場は年々広がりを見せており、上記で説明した「iD」や「QUICPay」をうまく活用すれば、クレジットカードのネットワークに頼る必要はなくなるかもしれません。

さらに電子マネーはチャージすることで使用可能なため、クレジットカードのような支払いトラブルが発生する可能性も低くなるでしょう。

電子マネーの今後の展望として、電子決済研究所、山本国際コンサルタンツ、カード・ウェーブの3者が出した市場規模推移予測によると、2020年には市場規模が最大で82兆円にも成長するとされています。

現金のようにその場で決済が完結し、簡単に支払いができる電子マネーが、今後は購買時にもっとも使われるツールになるかもしれません。