先日、大型書店で歴史本を探していた時に、たまたま、新書コーナーの新刊本で思わず目を引く、題名の書籍に出くわしました。

「結婚不要社会 結婚しないほうが幸せ」

という意味深な新書でした。ちょうどメディアが、日本の人口が昨年は43万人が減少して、10年連続の減少と発表した時だったので、思わず、少子化による人口減少対策もこれじゃおしまいだなと考えながら本をめくってみました。

目立ちたがり屋が書いた(話題狙いの本)かなと思ったが、著者が山田昌弘中央大教授でそもそも「パラサイト・シングル」「婚活」という言葉を最初に世に出し、婚活ブームの火付け役となった著名な社会学者であったので、早速本を購入して読んでみました。

日本において結婚は困難になると同時に不要になる

家族社会学の専門家が近代以降の結婚のあり方を考察して、結婚難が深刻化する日本の現状を明らかにしています。ちょうど、参議院議員選挙期間中であるので、政治・社会関係の話題を避けて、今回は、この本を簡単に紹介します。

90年代以前は「恋愛したら、結婚が当然」というのが社会的風潮だった。つまり性関係の継続も、結婚を前提とするのが主流であった。しかし、90年代は「結婚」と「恋愛」は別というスタイルが増加してきた。著者は1996年に「結婚の社会学―未婚化・晩婚化は続くのか」という本を刊行しているが、その年1996年から2018年の22年間で若者達が結婚出来ないという状況はますます深刻化した。

1995年、30代前半の未婚率は、男性37.3%、女性19.7%であったが、それが2015年には男性47.1%,女性34.6%と大幅に上昇した。そもそも、前近代社会では、男性は家業を継ぎ、「イエ」のために結婚した。だが、家業が衰退した近代社会では、武士や農民、町人、職人の家業がすたれ、職業選択の自由が生まれ、仕事は自分でみつけなければならなくなった。

かつては伝統的しきたりや行事や祭事、村社会のコミュニテイが人々のアイデンティティ(生きる意味)を支えてきた。だが、近代社会では、次第にそれらが衰退して、都市化して、大家族は離散して、人々は自分を承認、共感する相手を自らが見つける必要に迫られた。

近代化が結婚にもたらしたものは「個人の選択」であり結婚によって親から自立して、夫婦は経済的に家計として独立した単位となり、そして。家族を形成して、人々のアイデンティティの源泉となった。今日、更に一人一人の個人化・責任と義務を持たない自由化が深まり、次のような変化が近代における結婚のあり方と意味を崩壊させつつある。

※ニューエコノミーの進展により、男性の雇用が不安定化、低所得化しており、夫の収入だけで家族は養えなくなってきた。
※女性の職業・経済の自立や社会的居場所、居心地,の良さの多様性やあるいは「パラサイト・シングル」(親と同居の安全安心)があえてパートナーを求めなくなる。

欧米では事実婚や同棲カップルが増加して結婚不要社会にすでになっているが、シングルマザーを受け入れる文化を持つので、その意味で少子化とはならず、近代的結婚の困難を克服している。欧米では「パートナーがいないと大人ではない」という意識がまだ残る。一方、日本ではパートナーがいないとみっともないという意識は薄い、それになによりも{世間体社会}という大きな壁が立ちはだかる。日本人はとにかく周りの人から批判されたくない。しかも社会システムが全て結婚という制度に固執している。世間から外れたくないという風潮はすたれるどころか、ますます最近の若者たちの方が敏感である。

欧米は結婚不要社会でも社会は維持されるが、日本は結婚困難社会となり、社会は縮小に向かう。今のままでは、日本の少子化・人口減少のトレンドは回復不能なのである。如何ですかこの主張は、皆さんどう考えますか。

とにもかくにも、さあ皆さん選挙の投票には行きましょう。


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飯塚良治 (いいづかりょうじ)

株式会社アセットリード取締役会長。 オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。