伏見の京都アニメーションスタジオ放火無差別殺人事件は犠牲者数は、現在のところ35名と、若い人を中心として、日本アニメ界の現場の能力ある人材の未来を一瞬にして奪い去った。犯人は40代の男で派遣社員を転々として、身勝手な私怨や不満、憎悪の対象を京アニに集中させたという初期報道が報じられている。

いまだに記憶に新しい今年5月に川崎市登戸で起きた通学の小学生を狙った通り魔事件。わずか、数十秒の間に20余人が襲われ、犠牲者2人重軽傷18人という惨事が発生して、何の罪もない子供たちやミャンマーとの関係に熱意を持つ若い外交官が犠牲となった。この事件の犯人が51歳の引きこもりの男性だったために、その模倣犯になる事を怖れた、元農水省の事務次官まで登りつめた父親が引きこもりの44歳の息子を殺害するという、痛ましい事件を誘発して社会に衝撃が走った。川崎の事件からわずか50日の間に京アニ放火殺人事件と、無差別殺人事件と関連事犯が相次いでいる。

アメリカではこの1週間で銃乱射事件が、テキサス、オハイオ、カリフォルニアと全米各地で多発。8/3、4の二日間でテキサス、オハイオ州で、何の罪もない31人もの人々が、銃の犠牲になっている。テキサスはメキシコ移民を標的にしたヘイトクライム(人種・宗教差別)、オハイオは失業してる24歳の男がクラブへの入店を拒否されての怨恨といわれている。

アメリカで加速される銃乱射事件はすでに今年に入って255件、死者62名だそうである。報道は特にされていないが、ほぼ毎日のように発砲事件はアメリカのどこかで起こっている。アメリカでの世の中への報復する無差別殺人は「テロ」とよばれている。一方日本では、10年以上前に起こった有名な秋葉原通り魔事件などと共に「通り魔」といわれている。

犯罪にいたる共通項は欧米も日本も、社会的孤立であり、他人に対する被害者意識という積年の妄想的な恨みが世の中への報復として爆発する。「俺が悪いんじゃない。こうなったのは社会のせいだ、あいつらのためだ」という転嫁である。せいぜい責任転嫁ぐらいで収まってる分には誰でもあるが、孤立感や被差別意識が強いと、それは他人や社会への攻撃性となって大きくなっていくそうである。

「他人を攻撃せずにはいられない人(片田珠美著)」

そのような共通地盤があるにもかかわらず、欧米では「テロ事件」として日本では「通り魔事件」として別れていくのは何であろうか?欧米と、日本との根本的な社会の構造の違いであろう。日本は基本的に、血縁、地縁社会である。以前にもこのコラムで指摘した、いわゆる「世間体」である。欧米は基本的に、コミュニティ社会である。まさしくゲマインシャフト(家族、村、会社などの仲間意識のつながり社会)とゲゼルシャフト(個々人の社会的な契約による共同体社会)の違いであろう。

欧米では大人になれば男女共に、家庭から自立を迫られ、外に追いやれるのが普通である。日本ではいつまでたっても男も女もパラサイトシングル(家庭から出ないで親がかりの独身)でいられる。欧米では孤立した個人に手を差し伸べるコミュニティは豊富である。ボランティア団体、宗教団体、特定人種団体など多種多様で中にはテロリズムで染まっていく素地はいっぱいある。日本ではいつまでも家族にまかせられる。だから深刻になると本当に孤立感が強くなる。単純な、誰でもいいから報復したいとなる。

家族が大家族制で機能してた時代はとうに過ぎた。もう家族では支えきれないことが多すぎる、少子高齢化でもある。日本で有効性を持つ新たなコミュニティの模索はどこかで始まっているのだろうか。

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飯塚良治 (いいづかりょうじ)

株式会社アセットリード取締役会長。 オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。