今回の一連の関電事件の経緯を見てて、思うことは、若い頃から優秀で、仕事も出来、人望もあり、それなりに倫理観も失わなかったが故に、組織の頂点に上り詰めていったであろう人達が何故かくも世間常識からかけ離れた言動が可能になっていったのかに、関心を持った。

ご存知のように、2011年から2018年にかけて、関電トップの幹部達が、元助役から受領した総額3億数千万は現金、外貨、金貨さらに菓子折りの中の小判、高級50万スーツが数十着と、まさに時代劇にでてくる定番の、悪代官と利権商人のやりとりそのものであって、事件の全てが時代錯誤の登場人物と物語であることに、怒るより、あきれてしまうという感想を多くの人々が持ったことと思う。

社長、会長会見もこの程度で乗り切れるという思惑がドンドンはずれて、何回も釈明会見を繰り返し、最後には世論に追い詰められて、辞任せざるを得ない、この悪代官の節操のない、あがき方がまた、勧善懲悪の、水戸黄門様の時代劇に図式がそっくりなのである。

この会見の中で、象徴的なフェレーズは二つである。

「不適切であったが、違法ではない」

「相手に凄まれたので、一時保管として個人個人がずーっと長く、最近まで預かっていた」

この言い訳と、死んでしまっている元助役に全て責任を押し付けるなすりつけに、どうしてここまで保身と利己的で、社会常識からかけ離れたことが、恥ずかしくもなくでてくるのかという興味である。

関電に限らず日本の電力会社は日本中の各地域ごとに公共サービスを提供する企業という最高の社会的責任を負う一方で独占と最優遇が保証されており、まさに社会の「親方日の丸企業」の最先端でもある。

会長、社長は、それぞれ地方の経営者団体のトップにもなり、それを務めると「旭日大綬章」をもらうことが約束されて、地域で一番の経営者としての名声をほしいままにしていた。もちろん歴史的にみても、かつて時代の勃興期には経営力と人格を兼ね備えた本当の名経営者は多く輩出もしている。

しかし最近まで、まさに殿様企業の体質を令和の時代になっても色濃く残している代表でもあるのである。

そしてその経営力の源泉はほとんど市場原理の働かない独占された電気料金である。昔は官僚が権威のトップの時代もあったが、最近は大分地に堕ちて、まともに権威が残されているのがまさしくこの公共的な大企業の幹部達なのだといっても過言ではない。

東京電力が東日本大震災の原発事故でかなり失墜してしまった現在残る最後の牙城であったのが関電でもあった。今回は原発そのものの問題ではないが、東電の事故と関電の不祥事は世界の潮流からしても原発の先行きにかなりのブレーキがかるのは間違いないであろう。 あまり登りつめるより、人生ほどほどがいいと思う、今日この頃である。

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飯塚良治 (いいづかりょうじ)

株式会社アセットリード取締役会長。 オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。