筆者も、ここ2回連続して、コロナの脅威を伝えてきたが、今回はあえて、コロナ報道に埋もれてしまった、日本人の叡智を世界に刻むノーベル賞ものの世界的な快挙を、全くお先真っ暗な今だからこそ紹介致したい。
それは4月3日にコロナ報道の合間をぬってメディアで一部紹介された、日本の世界的数学者「望月新一」京大教授の[ABC予想]が証明されたという発表であった。
数十年にわたり、世界の数学者の未解明の超難問といわれた[ABC予想]を望月教授は証明したのである。
[ABC予想]は2千年以上の歴史がある整数論の中で「最も重要な未解決問題」とも言われた難題である。
[ABC予想]とは素因数分解と足し算・掛け算との関係を示す命題とのこと。4編646ページからなる論文「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」は斬新さと難解さから査読(論文の内容チェック)に8年もかかったとのこと。「未来から来た論文」とも称され、理解できる数学者も世界で10数人しかいないといわれている。
有名な数学の難問、証明に350年かかった「フェルマーの最終定理」(1995年解決)、100年かかった「ポアンカレ予想」(2006年解決)などと並ぶ快挙といわれる。
京大によると論文は京大数理解析研究所が編集して、欧州数学会が発行する数学論文の権威[PRIMS](ピーリムズ)に掲載されるという。
この望月新一教授はまさしく現在の天才というにふさわしい人物で、16歳の時に飛び級で米プリンストン大学に入学、19歳で同大大学院に進み22歳で博士号を取得後、帰国し、京大数理解析研究所の助手に採用され26歳で助教授、32歳で教授に就任した。数論幾何学の業績は早くから世界で注目され、45歳未満の研究者を対象に2004年度に創設された日本学術振興会賞の第1回の受賞者となって、現在まだ51歳の若さである。
英ノッティンガム大のイヴァン・フェセンコ教授(純粋数学の権威)は「IUT理論は全く新しい視点と、整数の足し算とかけ算の関係についての深い理解に根差している。今世紀、数学会で得られたいかなる業績より数段上の成果である。それが日本で生まれたことはすばらしい。この成果は、何百年後にも記憶され続けるだろう」
加藤文元・東京工業大教授(数論幾何学)は「数学界の革命といってよい。ノーベル賞が何個あっても足らないほどの成果だ」と絶賛している。
本来、コロナ騒動がなければ世界的なニュースとして、連日マスコミをにぎわして、日本人の自負心を満たすニュースがまったく陰に隠れてしまったもったいないの一言に尽きるお話である。