世界は今、21世紀に入ってから、初めての強い心労と不安を抱えている。最大のストレス要因は、もちろん新型コロナウイルスの感染拡大がとまらないことである。この状況が長引くことによる、経済的なダメージや生活の急変、とにかく先が見通せないという視界不良が人々の心に重くのしかかる。
「もう少しだ。ワクチンが開発され、特効薬が出てくるからこのウイルス感染症はまもなく収束して、元の世界が戻ってくる」
世界の政治家は皆、同じ様な予言を言って、国民をなだめようとする。しかし、それはほぼ妄想に近いと、多くの国民は感じている。
人類が撲滅できた感染症は天然痘だけといわれている。歴史的に見ても感染症の拡大と経済の集積拡大はセットで現われており、経済の究極の拡大であるグローバリゼーションと、それに伴う地球環境は会の深刻さは100年に一度と呼ばれたあらゆる自然災害とともに、新しい感染症の出現も100年に一度から10年に一度に、そして3、4年に一度にサイクルを縮めていることが想定されている。災害も感染症も「想定外」という言葉と無縁になりつつある。丁度、豪雨や台風が数十年に一度という気象庁の発表が、毎年繰り返されていることと、同じことが新型感染症にも言えるほど環境破壊のメカニズムは世界的に進展した。
このコロナも様々は変異を繰り返すであろうし、また新型のウイルスも場所も人種も選ばずに出現することを考えると、人類の感染症との戦いは、長期戦を余儀なくされる恐れがある。とすると今は誰しもが一過性のもととして疑わわない「新常態(ニューノーマル)」と呼ばれる新しい世界がポストコロナなのであるのかも知れない。もう我々がいつ、どこで被害にあってもおかしくない、スーパー台風、ゲリラ豪雨、そして大震災と同じように、自然災害との共生、ウイルスとの共生がまさしく常態化していくとして社会を再構築していかなければならないのかもしれない。とすると「新常態(ニューノーマル)」と真剣に前向きに、向き合うことしかない。
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飯塚良治 (いいづかりょうじ)
株式会社アセットリード取締役会長。
オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。