当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①年金、受給開始の上限『75歳』」「②社長100アンケート」「③出生率、1.36%」「④潜在的失業、日米欧で拡大」「⑤世界株、危機下の急回復」「⑥FRB、ゼロ金利22年まで」です。

①年金、受給開始の上限「75歳」

5月29日、年金改革法案が成立しました。働く高齢者の年金を減りにくくするなどして、高齢者の就労を後押しするほか、パートの方々への厚生年金の適用を広げて多様な働き方に対応するものです。

公的年金は現在、受給開始年齢を60~70歳としていますが、2022年4月以降は60~75歳に広げます。75歳から受け取ると、基準である65歳開始と比べて、毎月の年金額が84%増える計算です。働く高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金」は減額の対象となる人を減らします。

厚生年金の適用拡大では、パートなど短時間労働者の加入要件を段階的に緩和していきます。現在は従業員501人以上の企業が条件ですが、24年10月には51人以上に緩和していきます。

高齢者の就労を踏まえ、企業型確定拠出年金(DC)や個人型のイデコでは加入できる年齢をそれぞれ5歳引き上げます。

今後、政府には、経済や雇用情勢悪化による年金財政へのしわ寄せ懸念の払拭に全力をあげて欲しいと思います。

②社長100人アンケート(5月25日~28日実施)

今回のアンケートでは、企業が新型コロナリスクを前提とする経営のニューノーマル(新常態)を探る動きが鮮明になりました。

国内に工場を持つ企業にサプライチェーンの見直しについて尋ねると、72.1%が「必要である」と回答しました。工場を持つ企業では、「検温の実施」(75.0%)、「ラインの間隔、従業員同士の距離の見直し」(60.2%)などの対策も目立ちました。

オフィスで「テレワークを継続」する企業は全体の90.6%に上りました。対象としては全従業員の5割以上と回答した企業が63.2%に達しました。

緊急事態宣言解除後の大きな懸念については「従業員の健康確保」が75.0%で最も多く、「人の移動制限による事業の停滞」が64.4%と続きます。

既にアンケート調査から1ヵ月近く経過しているため、次回のアンケートの結果に注目したいと思います。

③出生率1.36、4年連続低下

厚労省が6月5日に発表した2019年の人口動態統計で、1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.36と、前年から0.06ポイント下がりました。4年連続の低下で2007年以来、12年ぶりの低水準となりました。

政府や地方自治体は、保育所の整備、教育無償化など少子化対策に力を注いできましたが、結果は出ていません。

出生率は、2005年に1.26まで下がりましたが、その後、2015年に1.45まで上昇しました。2016年以降は再び低下傾向に転じています。その背景には、働く女性の割合が高まり社会全体の晩婚化が進んでいることがあります。

今後、新型コロナウイルス禍などで将来不安が広がれば、少子化は一段と加速しかねません。半面、在宅勤務が定着し働きながら子育て出来る環境が整えば、逆の現象が起こる可能性もあります。

政府は、喫緊の課題として、若年層が安心して結婚し出産できる環境づくりに注力して頂きたいと思います。

④潜在的失業、日米欧で拡大

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界の混乱が長引いている中、経済活動の制限による「潜在的な失業者」が増加しています。

日本では、4月の完全失業率は2.6%で「休業者」は過去最大の597万人に達しました。休業者は失業までには至らない人で、育児休業中を含め仕事を休んでいる人を指します。

日本の多くの企業は従業員を休ませるといった対応をとりながら雇用をつなぎ留めています。休業者などが失業者になるのを防ぐには、国の助成金を手厚くかつ迅速に給付する必要があります。
 
米国では、5月の失業率が4月の14.7%から13.3%へと改善しました。経済活動の再開で飲食店などが再雇用を始めた為です。ただ「理由不明の休職者」の存在が非常に気がかりではあります。例年、5月の同分類は約50万人程度ですが、今年はコロナの影響で490万人多い540万人に達しました。今後の焦点は改善のスピードです。経済活動の再開が円滑に進めば、職場復帰も加速する可能性が出てきます。

ドイツの5月の失業率は6.3%でした。欧州では休業者の給与の一部を政府が穴埋めする時短勤務と呼ばれる制度を使って大量解雇を避けてきました。この制度をドイツでは3~5月の間に1,172万人が利用していました。経済再開の遅れが時短勤務では対応できなくなる状態を作り出す可能性があります。

いずれにしても、各国政府は、潜在的失業者が真の失業者にならないよう対応策を迅速に実行する必要に迫られています。

⑤世界株、危機下の急回復

6月8日の東京株式市場で日経平均は6日続伸し、終値は314円高の2万3178円で、新型コロナウイルス感染拡大で株価が急落する前の、2月21日の2万3386円に迫り、今年の高値(2万4083円)比でも96%の水準まで戻しました。

僅か3ヶ月半での9割回復は、過去の危機と比べても異例の速さです。

同じく6月8日の米株式市場、ナスダック総合指数が、2月に付けた史上最高値を更新し、10日には初の1万台に乗せました。

バブル崩壊時や2007年に株価がピークをつけた金融危機では、高値回復に6年以上かかりました。今回は、実体経済の回復軌道が「U字」や「L字」と予想される中で株価は「V字」回復しました。この背景には、過去にない財政出動と金融緩和政策があります。

感染の「第2波」が厳しく、政策の限界が意識されれば、反動安となる懸念も燻っています。相場を長く維持するためには、スピード調整も必要と考えられます。

逆転の発想で2番底を形成するのも、実体経済との乖離が少し埋まるのではないでしょうか。

⑥FRB、ゼロ金利22年まで

6月10日、FRBはFOMCで、少なくとも2022年末までゼロ金利を維持する長期の金融緩和方針を表明しました。

今回は、量的緩和政策の具体的な購入目標も明示しました。
米国債は月に800億ドル(約8兆5千億円)、住宅ローン担保証券も同400億ドルになります。

記者会見でのパウエル議長のコメントは以下の通りです。

4〜6月期のGDPに関して、市場では年率換算40%減少と大幅な落ち込みを予想する関係者もいますが、パウエル氏も「これまでで最も過酷なマイナス成長になりそうだ」と強く懸念しました。

先行きに関しては「感染第2波リスクなど、不透明感が極めて強い」と指摘しました。また、失業率が改善したことについて、「一つの指標としてみれば、雇用は底打ちした可能性がある」と述べました。

FRBは7月以降の会合で、追加策を検討します。具体的にはゼロ金利を維持する期間をより明確に約束する「フォワードガイダンス」や量的緩和政策の拡大、更に「イールドカーブコントロール」などです。

FRBのみならず、日銀、ECBなど各国の中央銀行は、緊密な連携を取り、世界経済の回復に貢献して頂きたいと思います。



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