コロナ感染防止
新型コロナウイルスの感染拡大が日本では一服感が広がり、社会のムードもやや明るさを取り戻そうとした矢先に、東京ではまた感染者が増加し始めた。欧米でも経済回復で、規制を大幅解除して、自由な行動を起こし始めた所から、また、感染拡大のニュースが聞こえてきて、新興国は実態すら定かではなく、WHOは今まだ世界は感染拡大の真っ最中であるという緊急警告を発表した。

「油断大敵」という格言は現代では、しぶとく厄介な、このウイルスのためにあるのではないかと思わせる。

感染を予防するワクチンが開発されるか、又は特効薬が出来上がるか、いずれにしてもその恩恵が世界に広く行き渡るまで、少なくともここ2、3年は覚悟が必要という現実を突きつけられている。この現実と、世界もどこの社会や組織も、そして何よりも個人個人が、賢く向き合わなければならないのであろう。

その間、私達も徐々に日常を取戻しつつ、どう生き延びて行くのかという「命と経済」の両立を図っていくことが歴史上も人類が乗り越えてきた最大の知恵である。経済より命が優先だろうという真な正論も、自給自足で生きた近世以前には通用しても、混合して絡み合った、ゲゼルシャフトで生きる現代の私たちは経済的な欠乏の中では存続不能である。

大げさにするわけでもないが、かつての、ペストやスペイン風邪の大脅威の教訓として第2波、第3波の感染拡大をどう乗り越えて、「ウィズ・コロナ」の時代を生きるかである。まさしく「命か経済か」の二者択一ではなく、「命も経済も」の二兎戦略に、政府も企業も、個人も注力するしかないのであろう。

その代表例として米ハーバード大学倫理センターが4月に公表した「パンデミックに強い社会への道」と題する提言である。中身を要約すると、一日500万件以上の大量の検査態勢を確立し、社会基盤を担う職場の優先度を決めて、順に一斉検査を実施し、陽性者は公的な所得補償をした上で隔離して、陰性者だけで仕事を回していく、これを約4、5ヶ月で完了し、米経済は数ヶ月で回復軌道に戻せる。という米国らしい、物量一揆投入しての選択と集中の戦略である。

もちろん1000億ドル単位の巨額投資となるが、対策を小出しに遂次投入して、封鎖と自粛を繰り返すほど愚かな選択はない。経済が徐々に衰弱して、はるかに大きな損失を招くと結論する。政策を躊躇するほど、経済の回復の道は遠のくだけである。「医療目的に加え、社会の不安を取り除くためにも、大量検査と隔離を活用して経済を正常に回すというのがハーバード提言の主眼である。」

検査態勢がおそまつな日本が大量検査にかじを切るにはやはり巨額な費用と検査・隔離体制の人員補充が不可欠であるが、無理だ、金がない、人がいないという言い訳と理屈は、もう通らないであろう。

もう間近に11月頃からのいわゆる普通のインフルエンザの流行期が迫っている。ピーク時には一日10万から30万人の患者が発生するという。インフルエンザとコロナの初期症状は同じなので、疑いの有る患者は全てPCR等の感染検査を実施出来ないと、医療現場は相当混乱が予想される。医療体制が混乱すれば、再度緊急事態宣言がやむなくなる。また経済が一気に冷え込む。そういう事態を避けるためにも、この4、5ヶ月で冬の検査体制、診査体制に一日2、30万件の程度の能力を高める資金と人員の確保を優先すべきであろう。こういう目標と数値的な目安が明確になることで企業や個人の不安や不満が減り安心感が高まり、消費者や企業は行動計画に前向きになり、経済が活性化する。そもそも到達目標のないとこに、資金投入、物資調達の計画もすべて様子見になるのである。

この様なコロナの感染予防対策が国民に明確になることが、なによりもの経済対策になると思うのである。一過性の旅行奨励金や休業補償金はその場しのぎになるが、やはり根本対策に資金と人員を集中すべき時と考えるが、皆さんのご意見は如何でしょうか。

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飯塚良治 (いいづかりょうじ)

株式会社アセットリード取締役会長。 オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。