レバノン
皆様明けましておめでとうございます。 令和の初めての年末、年始は国内も国外も突然な大きなニュースが飛び込んできて、何か多難な幕開けかと、お屠蘇気分ではいられないお休みでした。

アメリカとイランの一触即発の突然の危機も今のところ、イランの抑制的な反撃と、ウクライナの民間旅客機への誤射による悲劇によって、全面衝突回避に動いてはいます。しかし、アメリカのトランプ政権がイランで英雄視されている革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した判断は共和党内部でも疑問視されており、トランプ大統領のいつもの戦略なき「刹那主義」が一気に中東情勢の流動化を招いたことは間違いありません。米国防省内でも意見の食い違いがあり、「トランプ氏が司令官殺害に対して起こる副作用について考慮したとは到底思えない」という当局者の意見が聞かれました。トランプ氏は元々、中東から一切、手を引きたいという公約で大統領選で支持を受けていたのに、これでは益々混迷深まる中東の泥沼化に身動き出来ない状況を自ら作り出したとしか言えませんね。

大みそかに臨時ニュースで報じられたゴーン被告がレバノンで「私は自由だという声明を発表」にはほとんどの国民がびっくりしたことと思います。ゴーン氏が無実だと言うなら日本の裁判で堂々と戦えというのが、まあ世間の評価でしょうし、国際的にも通じる話だと思います。ただ、ゴーン氏はそもそも日本の司法は不正であり、基本的人権は無視されており、自分は政治的な迫害の罠に落ちたという事を主張しております。ゴーン氏はレバノンの国籍も持っており、日本とレバノンに犯罪人引き渡し条約は無く、レバノンは基本的にゴーン氏を日本に引き渡す可能性はまずないでしょう。

日本の刑事裁判の一審は被告人が出廷しないと開廷出来ません。日本の刑事裁判で起訴されれば99%が有罪になる。ゴーン被告の場合、最高刑は懲役15年だと思います。最高裁判所まで、ゴーン被告が争えば日本の裁判は長いですから後10年はかかるだろうと思われます。そこで数年の実刑を最終的にくらうとすると、彼は今65歳ですから、最終的に自由になるには80歳を過ぎてることになります。刑務所内の医療は先進国の中でも貧弱といわれてます。実刑になれば、獄死する可能性もあるわけです。彼の立場からすると、お金が十分あるのですから、世界的な逃亡引き合い人を雇って国外逃亡する動機はむしろ当然の帰結であったのかもしれません。世界にこういう軍事請負会社は堂々と存在し、10億単位でしか動かないと聞きます。ゴーン氏にとってこれは逃亡ではなく、亡命であったと思っているのでしょう。

日本の司法の歴史で前代未聞の不祥事の、ハリウッド映画並みの大逃亡劇はいろいろな教訓を日本の司法、入管当局、及びメディアに残したといえます。

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飯塚良治 (いいづかりょうじ)

株式会社アセットリード取締役会長。 オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。