当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①米vsイラン、中東緊迫」「②英EU離脱、1月末実現へ」「③台湾総統、蔡氏が再選」「④ゴーン元会長、無断出国」です。

①米vsイラン、中東緊迫

昨年、12月末から、米・イラン対立が火種となり、中東での緊張状態が続いています。時系列で、米・イラン関係を整理してみます。

まず、トランプ政権は2018年にイラン核合意から離脱し、強力なイラン制裁を復活させました。2019年6月、イランによる米無人機撃墜事件が発生、トランプ氏が攻撃を命じて直前に撤回するという事態となりました。

また、同年9月には、サウジアラビア東部の重要な石油施設が無人機やミサイルの攻撃を受けました。そして12月29日、米軍がシーア派武力勢力の軍事拠点を空爆。これに抗議する群衆が、12月31日、バグダッドの米大使館を攻撃しました。これに対してトランプ氏は、ツイッターで「イランが指揮している。完全に責任を取らせる」と強烈に避難しました。

トランプ氏は、1月3日未明、イラン革命防衛隊・ソレイマニ司令官の殺害を指示。空爆によって実行されました。同日、イラン最高指導者・ハメネイ師は、ツイッターで報復攻撃を警告します。そして、ソレイマニ司令官の喪が明けた1月7日、イランが弾道ミサイルで、イラクにある米軍基地2か所を攻撃しました。これで一気に緊張が高まり、1月8日のトランプ氏の声明に世界が注目しました。その声明でトランプ氏は「軍事力行使を望まない」と述べ、追加の経済制裁を科すことになります。戦争状態突入という最悪のシナリオは回避されたのを受け、金融市場はリスクオンの状態に戻ります。

1月9日、NY株式市場、ダウ30種平均は211ドル値上がりし、28956ドルと史上最高値を更新しました。東京株式市場にもその流れは続き、堅調な動きを取り戻しています。安全資産とされる円は売られ、1月14日には、1ドル=110円の円安に。また、国内の長期金利の指標である新発10年物国債の利回りも、マイナスゾーンを脱し、0.010%に。但し、まだ散発的な攻撃は続いており、暫くの間は、注視していく必要はあります。

②英EU離脱、1月末実現へ

1月9日、英国議会下院は、英国がEUから離脱するための関連法案を、賛成330、反対231の賛成多数で可決しました。1月21日には、上院でも可決されるのは確実で、2016年6月の国民投票から3年半、紆余曲折があったものの1月31日、離脱が実現することとなります。ただ、EUを離脱しても、20年末までは通商や規制などの面ではEU加盟国と同じ環境が維持されます。経済の激変を避ける為、「移行期間」を設けたからです。

1月末の円滑な離脱に道筋がついたこともあり、次の焦点は、離脱後の英・EUの関係に移ることになります。英国側は2月から交渉に着手し、関税ゼロの自由貿易協定(FTA)を速やかに結びたい考えです。日本や米国ともFTA交渉を急ぐ方針ですが、通常は少なくとも数年かかるFTA交渉を移行期間内に妥結するハードルは非常に高いです。

通商交渉を妥結出来ないまま移行期間終了を迎えれば、世界貿易機関(WTO)ルールに基づいてEUなどとの貿易に関税が現れ、「合意無き離脱」と同じ状況に陥りかねません。今後の交渉が速やかに進み、日本とのFTAの早期締結を期待したいと思います。

③台湾総統、蔡氏が再選

1月11日、台湾の総統・立法委員(国会議員に相当)選挙が投開票されました。総統選では、対中強硬路線をとる与党・民進党現職の蔡英文総統が過去最多得票で再選を果たしました。

今回の選挙の争点は、統一を遠ざけるために距離を置くか、経済交流の果実を求めて接近するか―。中国との距離を巡る「自立と繁栄のジレンマ」であります。中国の習国家主席は、2019年1月、台湾を香港と同じく(高度な自治を認めるという)「一国二制度」で統一する方針を明言しました。6月以降、香港の政情混乱が深まり、台湾に「香港の二の舞は避けたい」との警戒感が強まりました。

蔡氏は、選挙戦で「総統選は対岸(中国)との闘いだ」と統一拒否を訴え、中国に取りこまれることへの危機感を強めた若者らの支持を得ました。また、米中貿易戦争や中国景気の減速で中国への過度の依存を見直す動きが台湾企業に広がったのも一因であります。

米国は1979年に台湾と国交を断絶して、中国と国交を樹立しました。その後は、「台湾関係法」に基づき台湾の安全保障を支える一方、対中協調を重視し台湾独立を綱領に掲げる民進党と距離をおいてきました。ところが、トランプ大統領の登場で関係は一変しました。

トランプ大統領は就任直前の2016年12月、蔡氏と電話で直接やり取りし、19年にはF16戦闘機の台湾への売却を決めるなど、中国への配慮で封印されてきた「タブー」を次々と破りました。

蔡政権は中国大陸と台湾が1つの国に属するという「一つの中国」原則を認めない一方、党が持つ独立志向を封印する立場をとっています。「現実路線で米の信頼を得る戦略」です。

米国防総省は19年のインド太平洋戦略の報告書で、台湾をシンガポールなどと並ぶ「有能なパートナー」としました。蔡氏は「米国との関係は過去最高にある」と誇り、2期目では同戦略への協力や米との軍事接近を鮮明にする可能性が高いと思われます。同時に台湾を巡る米中の対立が激化するのも確実であります。台湾の存在が米中貿易に影響を及ぼさないことを願います。

④ゴーン元会長、無断出国

「私はレバノンにいる」、2019年12月31日、目を疑うニュースが飛び込んできました。

金商法違反罪などで起訴され保釈中の日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が日本を無断で出国し中東レバノンにいることが明らかになったのです。元会長の弁護人を務める弘中弁護士は弁護団の関与に関し「全くありません」ときっぱりと否定し、「こちらも寝耳に水で、当惑している」と突然の事態で驚きを隠せない様子。検察幹部も「裁判所の保釈の判断に対して強く反対してきたのに」と恨めしげに語りました。

専門家の意見では「保釈条件は一見厳しいが、複数の国籍を持ちプライベートジェットも使える元会長にとっては十分な制限にならない」とか「被告が海外に出てしまうと裁判が止まるなど甚大な影響が出るのに、現行の保釈制度は対策に甘さがある」とのことです。

時間の経過とともに、徐々に、出国方法等が明らかになってきました。12月29日昼、都内の住宅を一人で出たゴーン元被告は、近くのホテルで協力者と落合いました。その後、品川から大阪、そして関空からプライベートジェットでトルコを経由しレバノンへ入国したようです。

「逃亡の際、音響機器の箱に隠れた」「入国の際、仏のパスポートで入国した(仏側は否定)」「トルコのプライベートジェット運営会社の7人が関与し逮捕された」など、様々なニュースがありますが、1月8日のゴーン氏の会見には、正直、幻滅しました。「事件は想像の産物」などと主張し、無実を訴えることに終始しました。逃亡方法や政府関係者の名前は明かしていません。

1月16日、弘中弁護士をはじめ、ゴーン元会長の弁護団の多くが弁護人を辞任しました。 今後、どう展開するのか、腹立たしい限りですが、注視していきたいと思います。

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