当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①安倍首相 退陣」「②不動産情勢 変調」「③雇用情勢 悪化」です。

①安倍首相 退陣

8月28日、午後2時過ぎ、安倍首相辞任の情報が伝わりました。その3時間後、安倍首相は首相官邸で記者会見し、辞任する意向を表明しました。「安倍一強」と言われ、連続在任期間で歴代最長記録を更新した僅か4日後、7年8か月に及んだ政権が終焉を迎えました。辞任の理由として、持病の潰瘍性大腸炎が8月上旬に再発し、「病気と治療を抱えて体力が万全でない中、政治判断を誤ることはあってはならない」と説明されました。

8月28日の株式市場は、首相辞任の情報に素早く反応し、日経平均株価は一時、前日比で614円値下がりしました。株価の下落は、裏を返せば株式市場が首相の経済政策「アベノミクス」を評価していたことになります。実際、政権後半は失速したものの経済を回復基調に乗せたことは間違いありません。「物価上昇2%」は遠のき、低成長からは脱することは出来なかったものの、雇用や訪日客においては一定の成果がありました。但し、コロナ禍で、その成果も失われつつあります。外交も同様に一定の成果を出したのではないでしょうか。特にトランプ米大統領との蜜月はかつてない日米同盟関係を築き、日本の外交力を高めたのではないでしょうか。

さて、9月14日にも、自民党の新総裁が決定し、9月17日、衆参両院で首班を指名を受け、正式に次期首相が決まる予定です。次期首相に積み残された課題は決して少なくはありません。喫緊の課題は、新型コロナの克服と東京五輪・パラリンピックの開催です。一方、コロナ対策の巨額な財政出動で構造改革は遅滞しています。脱デフレを宣言するとともに、安定成長を実現する総合戦略を早期に明示することが要求されます。さらに、外交も待ったなしの状況です。中国は国際秩序を形成してきた米国の覇権に挑戦し、南シナ海での軍事的な緊張で米中対立は経済から安全保障の領域に波及しつつあります。日本の政局が混乱すれば日米同盟に隙をつくり、北東アジアのミリタリーバランスに変化が生じてしまいます。

以上の課題に次期政権は、スタートダッシュで取り組むことを期待します。

②不動産情勢 変調

新型コロナウイルスによる経済活動の停滞が地価を押し下げ始めました。国土交通省が8月21日発表した「地価LOOKリポート」では、4月から7月にかけての主要都市100地区の動向に大きな変化が見られました。地価が下落した地区は、前回調査(1~4月)では4地区でしたが、今回は9倍超の38地区になりました。上昇した地区は前回の73地区から1地区に激減しています。横ばいの地区は前回の23地区から61地区に急増しています。下落が目立つのは外出自粛や休業要請で打撃を受けた繁華街の多い大都市圏です。大阪圏では下落地区の割合が全25地区中17地区で約7割、名古屋圏は9地区全部が下落しました。東京圏は横ばいの地区が全体の9割弱と、何とか踏みとどまりましたが、東京を代表する繁華街は厳しい結果となりました。銀座中央は横ばいから「0~3%の下落」に、歌舞伎町・上野は「0~3%の上昇」から「3~6%の下落」になりました。

また、在宅勤務の拡大に合わせ、都心部のオフィス面積を減らそうとする動きも広がりつつあります。都市未来総合研究所によりますと「オフィスの解約が少しずつ始まっており、大都市で顕著になっています。これが地価の停滞や下落に繋がっています」とのことです。

ザイマックス不動産研究所が行った調査では、オフィスビルの空室面積、4~6月に東京23区で空室が増えた面積が減った面積よりも多くなりました。増減量の逆転は2019年4~6月以来、1年ぶりの現象となります。特に都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)は今年の3月以降、空室の増加ペースが速いことも判明しました。

最近になって、企業業績が振るわない中、不動産仲介を担う信託銀行に企業から相談が相次いでいます。保有資産の売却で手元資金を増やしたり、自己資本を充実させたりする目的です。コロナ禍の働き方を見据え、オフィスの立地やレイアウトの見直しを模索する動きも活発になってきました。

三井住友信託銀行は「コロナの長期化で企業が売り上げを伸ばしにくい中、返済原資を確保する為の資産売却が今後増加する」と予測、また、今後の検討課題を尋ねたアンケートでは、床面積の見直し(47%)、サテライトオフィスの整備(20%)など回答が上位を占めました。

このようにコロナ禍は、不動産市場にも大きな変調をもたらし始めました。刻々と変化する情勢を、注視していく必要があります。

③雇用情勢 悪化

新型コロナウイルスの感染拡大による厳しい雇用情勢が続いています。7月31日、総務省が発表した6月の完全失業率は2.8%、前月から0.1ポイント下がりました。7か月ぶりの改善ですが、失業率の低下は職探しする人が5万人減ったことが大きく、6月の就業者数は1年前に比べて77万人減の6670万人でした。正社員は2か月ぶりの増加に転じた一方、非正規の雇用者数は104万人減の2044万人になりました。この減少幅は過去最高です。失業には至ってないものの、仕事を休んでいる人も小売りや飲食業を中心に236万人と高水準のままでした。

9月1日、厚生労働省が発表した7月の有効求人倍率は1.08倍で前月から0.03ポイント低下しました。低下は1月から7か月連続でした。7月は企業からの有効求人が前月から2.5%増加したものの、働く意欲のある有効求職者も6%増加しました。失業率は6月に前の月から0.1ポイント改善しましたが、再び、0.1ポイント悪化し、2.9%になりました。完全失業者数は197万人で前年比41万人増加、増加幅は2010年1月以来の高い水準です。休業者は220万人で、4月(597万人)、5月(423万人)より少なく、コロナ前の水準に近づきました。

総務省は休業者の減少が失業率の大幅な悪化に繋がらなかったことから「7月は緊急事態宣言が出されていた5月から大きく悪くなっていない」との認識しています。しかし、景気後退局面での解雇や雇い止めはまず非正規から始まり、その後、正社員へ広がっていきます。今後雇用情勢は予断を許さない状況にあることは間違いありません。間もなく誕生する新政権には、早期に雇用対策を打ち出し、この状況を打破して欲しいと思います。