当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①基準地価」「②世界オフィス」「③不動産私募ファンド」の3つです。今月は不動産関連特集です。

①基準地価

9月29日、国交省が2020年の基準地価(7月1日)を発表、全国の全用途平均で3年ぶりの下落となりました。全用途でみると、全国平均は0.6%のマイナス、三大都市圏は昨年の2.1%上昇から横ばいに、地方圏は0.8%のマイナスとなりました。全国2万カ所の調査地点のうち、下落地点数の割合は48%から60.1%と5年ぶりに6割を超え、上昇地点数は21.4%に留まりました。

コロナ感染の影響が大きかったのは商業地で、全国平均は昨年の1.7%上昇から0.3%下落に、住宅地の0.7%下落を幅で上回りました。特に三大都市圏は、昨年の5.2%上昇から0.7%上昇に失速、訪日客消失が、繁華街や観光地の地価を大幅に押し下げた格好になります。全国で最も地価の高かった東京・銀座2丁目「明治屋銀座ビル」も5.1%下落(1㎡・4100万円)で、9年ぶりのマイナスとなりました。国交省は住宅地などの地価を押し上げる勢いは見られず、むしろ、都心でオフィス需給が緩んだことが地価の押し下げ要因としています。

一方、コロナ禍で上昇した地点が、物流施設を整備しやすい高速道路の傍、ネット通販の需要増加でアクセスの良さが評価されています。米物流大手プロロジスは神奈川県や千葉県の物流施設を相次いで取得、米ブラックストーンも大和ハウスから国内4施設の購入を決定済みです。

不動産業界では、「物流施設は売買や価格上昇が今後も続く」「物流施設は継続して海外マネーの受け皿になる」との見方が多いのが現状です。また、コロナの感染拡大でけん引役を失った状態ではありますが、経済活動を着実に再起動できれば地価は持ち直すとの見方も出始めています。

②世界オフィス

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世界のオフィスの状況が大きく変化してきました。まずは、日本国内の状況から見てみます。

7年近く上がり続けてきた東京都心のオフィスビルの賃料が下落に転じました。三鬼商事が9月10日に発表した8月の都心5区の平均募集賃料は3.3平方メートル当たり2万2822円で前月比0.83%下落しました。7月には2万3014円まで上昇して、過去最高値を記録した矢先でした。

賃料下落の背景は、新型コロナウイルスの感染拡大で解約が目立つ中・小型物件などで賃料を下げて募集する大家が増加した為と考えられます。賃料下落は空室率上昇と相関関係にあり、8月の5区の空室率は3.07%で前月比0.3ポイント上昇、3%超えは実に30か月ぶりとなります。

9月に入ると空室率は更に上昇し、前月比0.36ポイントアップして3.43%に、中でも渋谷区と港区はそれぞれ4.48%、4.33%になりました。渋谷区はIT企業中心に経費削減や在宅勤務の浸透でオフィスを解約する動きが広がり、港区は移転に伴う空室が発生しやすい為と思われます。

過去の不況期では、都心部から距離のあるエリアから空室が発生し、今回は働き方の見直しに伴うオフィス不要論まで提起したとも言えます。当面の間、都心部のオフィス需要は鈍り、入居者を確保するには時間がかかりそうだとの見方が大勢を占めています。

海外でもオフィスの在り方が大きく変化、在宅勤務の浸透で、欧米のIT・金融などの企業は、相次ぎ賃借面積を縮小する動きを見せています。

米不動産サービス大手のCBREが行った調査によると、世界の主要企業126社の75%超がオフィス拡張計画を凍結・中止した模様です。日本同様、都心部のオフィスは賃料下落が鮮明で、例えば、英シティの賃料は、1平方フィート72ポンドで、昨年末より18%下落しています。

一方、コロナ下で業績を伸ばす一部の企業は、逆にオフィスを拡張したり、感染を回避しながら働ける新しいオフィスの形を模索しています。オフィス拡張の代表格はアマゾン、費用として14億ドル(1500億円)を投じ、全社員出社を前提、在宅を認めるツイッターとは対照的です。米ゴールドマン・英PwCは感染防止の為、フリーアドレスを禁止、ソーシャルディスタンス維持に重点をおき、新しい働き方を確立しています。

③不動産私募ファンド

金融機関などが投資する不動産向け私募ファンドへの投資が加速し、国内の運用資産額は6月末時点で21兆1000億円と半年で5%増加しました。新型コロナウイルスの感染拡大で、新規ファンドの設立は減ったものの、都心部のオフィスなど利回りの高い物件への投資が拡大しています。

不動産向け私募ファンドはREITのように激しい市場変動のリスクが小さく、利回りは6月末で5.1%とREITの分配金利回りの4%よりも高くなっています。

新型コロナウイルス感染が世界で拡大する中、今年の上半期(1~6月)、世界の主要都市の中で不動産取引額トップが東京の1兆5000億円です。この東京を中心に、外資系企業が私募ファンドを武器に、日本の不動産への投資を発表しています。

まず、香港の大手投資ファンドPAGは、今後4年程度で日本の不動産に最大8400憶円を投じます。背景は、新型コロナ禍で企業の不動産売却や金融機関の不良債権処理が増加し購入機会が多くなるとみています。次いでカナダのベントール・グリーンオーク(以下BGO)が今後2~3年で最大1兆円を投じることを発表しました。BGOは米欧の年金基金などから資金を集め、アジア対象の新ファンドを設立しました。ファンドとは別に大株主のカナダ保険大手のサンライフなども直接資金を拠出し、BGOが運用します。よって借入金を含めた日本への投資余力が1兆円に。

米欧の機関投資家はコロナ前から、経済成長の見込めるアジアへの投資を増やしていました。感染拡大後は、米欧に比べて経済的打撃が比較的小さい為、アジア投資の流れが加速、中でも経済規模が大きく、投資機会が多い日本に照準が当たっています。BGOのソニー・カルシCEOが「日本は今、世界で最も魅力的なマーケット」と言い切るように、今後も、外資系不動産ファンドの日本進出が続くと思われます。

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