当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①マイナトラブル止まらず」「②少子化対策・子育て支援策」「③オフィス、世界で空室の山」の3つです。

①マイナトラブル止まらず

マイナンバーカードの手続きを巡りトラブルが相次いで発覚しました。
個人向けサイト「マイナポータル」で他人の年金記録を閲覧できる状態だった問題も新たに発覚しました。

この年金記録閲覧の問題は、地方公務員が加入する共済組合で起こりました。関係省庁は詳しい詳しい原因や規模などの確認作業を進めています。年金情報とひも付ける際に手入力で失敗した可能性があるようです。

トラブルはこのほかにも発生しています。以下に列挙します。

●コンビニで住民票などの証明書を他人に発行してしまった
●マイナ保険証で別人の情報をひも付けてしまった
●マイナンバーとひも付ける銀行口座に別人のものを登録してしまった
●カード発行で得られるポイントを他人に誤って付与してしまった

などが明るみに出ています。

コンビニ関連はシステムを開発した富士通子会社の富士通JAPANの仕様の不備でした。同社はシステムを利用する全自治体でサービスを停止しました。6月17日までに点検を完了させ、順次改良を加えているそうです。

マイナンバー健康保険証で別人の情報がひも付けられたケースは、2021年10月から22年11月にかけて7312件発生しました。ネット上で他人の受診状況や投薬の情報を閲覧できる状況になっていました。健康保険組合などが入力情報を間違えたことが主因のようです。

銀行口座の問題では家族の名義などで登録する事例がおよそ13万件ありました。子どものマイナンバーに親名義の口座を登録したケースが多いようです。

いずれにせよ、人為的なミスによるものが多いので、信頼回復に向け再発防止策を急ぐ必要があるのではないでしょうか。


②少子化対策・子育て支援策

政府は6月7日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案を公表しました。

賃上げ促進と少子化対策を軸とする「分厚い中間層」に再構築を掲げました。少子化の具体策は原案には盛らず、政府の別の会議で方針を決めてから追加します。これまでに2030年代初頭に4.7兆円のこども家庭庁予算を倍増する方向性が固まりました。

所得制限撤廃など児童手当の拡充や育児休業給付金の増額で子育て資金に厚みを持たせます。

政府の主な子育て支援の拡充策は以下の通りになります。

●出産期
・出産費用の保険適用(26年度)

●育児期
・育児給付の給付率上げ(25年度)
・時短勤務への給付制度創設(25年度)
・育休取得を推進する中小企業への助成拡
・保育士などの配置基準の改善
・こども誰でも通園制度(仮称)創設

●成長期
・児童手当の高校生への支給延長(24年10月) 
・授業料減免や給付型奨学金を理工農系学生の中間層などに拡大(24年度)

●追加策
・児童手当の所得制限撤廃、第3子以降月3万円に倍増(24年10月)
・短時間労働者の雇用保険の加入対象を拡大(28年度までに)

〇予算規模
・26年度までに年3兆円台半ば

〇財源
・確保策の詳細は示さず。歳出改革や「支援金制度」で充当。
・財源確保までの不足分はこども特例公債を発行

一番気になるのは、財源確保です。国会での論戦にもなるでしょう。

でも、少子化対策・子育て支援策は、必ず、成し遂げて欲しいと思います。


③オフィス、世界で空室の山

世界のオフィス市況が厳しい状況にあります。主要17都市の空室率をみると、10都市で2008年のリーマン危機後など前回ピークを上回りました。在宅勤務の定着や人員削減の影響を受けました。都市部の昼間人口減少で、ホテルなど商業施設の稼働率も低下しています。不動産向け融資が焦げ付き、金融不安に繋がる恐れがあります。

CBREがまとめた世界のオフィス空室率は、3月末に12.9%とリーマン危機後の13.1%並みの水準まで高まりました。都心に人が集まらなくなり、ショッピングモールやホテルなど商業施設の稼働率も低下しました。

各国当局は金融への飛び火を警戒しています。FRBで金融監督を担当するバー副議長は5月開催の米下院公聴会で「都市部のオフィス市況に脆弱性があり、商業用不動産のリスクを注視する」と述べています。オフィスや商業施設向け融資総額、米商業銀行全体で3兆ドルまで膨らみました。7割は中堅・中小銀行が貸し手になっています。

不動産への過度な傾斜が銀行を窮地に追い込みかねません。調査会社グリーンストリートによりますと、全米商業用不動産の取引価格は4月に前年同月比15.3%下落しました。下落率は09年9月以来の大きさです。テナントの退出で物件の収益力が落ちこみました。

米国以外でも不調は目立っています。香港の空室率は15%台と過去のピークを上回りました。中国本土企業がオフィスを縮小したり、欧米企業がシンガポールなどに拠点を移したりしました。東京の空室率は他の都市に比べて低いですが、好不調の境目とされる5%に迫っています。

借り換えが難しい不動産保有者は物件売却を迫られ、価格下落に拍車がかかります。銀行は担保価値の目減りに直面し、融資を回収できなくなります。銀行の経営問題に発展、融資が一段と絞り込まれ、景気悪化に繋がる。各国当局が一番懸念するシナリオです。

ECBが5月に纏めた金融安定報告書。カネ余りの下で、膨張した投資ファンドが不動産に傾斜したことを指摘、警戒感をにじませました。欧州でも価格下落は始まっています。ファンド勢が苦境に陥れば、それらを支えてきた銀行にも影響は及びます。

長期の金融緩和は不動産市場の膨張を生みました。ファンドを通じて日本の個人や年金基金のマネーも流入しました。ところが急激な金融引き締めで環境は激変しました。街の賑わいが薄れるとともに、危機の芽は着実に育っているのです。

※CBRE=シービーアールイー株式会社・事業用不動産サービスの分野で世界最大手
※FRB=米連邦準備理事会、中央銀行
※ECB=欧州中央銀行