当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①GAFA『日本株超え』」「②日経平均、31年ぶり高値」「③中国、不動産向け融資悪化」「④国内不動産マネー流入」です。

①GAFA「日本株超え」

今年7月、GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)4社と日本株全体の時価総額が逆転しました。GAFA4社の時価総額は、7兆500億ドル(約770兆円)に対し、日本は6兆8600億ドルにとどまっています。8月以降は、更に差が開きつつあります。

時価総額の最も大きいアップルは足元で2兆4500億ドル、次いでグーグル(アルファベット)の1兆8900億ドル、アマゾン1兆6700億ドル、フェイスブック1兆400億ドルと続きます。

GAFAの特徴は高い成長力です。スマホ、ネット広告など、それぞれの分野で圧倒的な規模を持ち、そこから得られる資金とデータを活用して、更に強大化する循環が出来上がっています。

自己資本利益率(ROE)は、アマゾン、フェイスブック、グーグルが20%前後、アップルは何と70%超と、日本を大きく上回っています。

財務も安定しています。自己資本と有利子負債の合算値に対するネット有利子負債の割合を示す比率は、GAFAが総じて日本の平均を下回っています。

高い成長力と強い財務があることで、景気動向にも業績が左右されにくく、株主還元も充実していることから、投資家からはグロース株だけではなく、ディフェンシブ銘柄としても評価されています。

但し、巨大さ故に規制の手も伸びつつあります。米バイデン政権は米連邦取引委員会(FTC)委員長にアマゾンの分割を主張してきたリナ・カーン氏を起用しました。そのFTCは、反トラスト法違反でフェイスブックを再提訴したほか、GAFAの解体論もくすぶっています。

規制強化でひとたび資金流出が始まれば、株式市場への悪影響は避けられないと思います。


②日経平均、31年ぶり高値

9月14日、東京株式市場で日経平均株価は2月の年初来高値を更新し、1990年8月以来31年ぶりの高値を付けました。2月に一旦3万円の大台を回復しましたが、新型コロナの感染拡大や内閣支持率の低下などを材料に売られ、8月20日には2万7013円まで値下がりしていました。

ところが、菅義偉首相の自民党総裁選への不出馬表明を契機に、海外投資家が、再び、日本株に目を向け始めました。新型コロナウイルス下で露呈した日本の行政や政治の停滞、デジタル化の遅れといった構造問題が、新政権のもとで解決に向かうとの期待があります。一方、高まる期待に応えられなければ、マネーは再び日本株から離散しかねません。

今回の日経平均の上昇で、東証1部の時価総額は785兆円と過去最高を更新しました。日本株を素通りしてきた海外マネーも「持たざるリスク」を意識し、9月の第1週から海外投資家は大幅に買い越しに転じました。3週間あまりで、日経平均の上昇幅は3500円と過熱感も漂います。

相場の先行きを握るのは政治の変化です。総裁選の結果が出るのはこれからで、秋には衆院選も控えています。総裁選の候補者が訴える政策が結実するかも不透明であり、現在の株高が期待先行なのは歪めません。新政権が日本経済の停滞打破に向けて実行力を示せるかが、株高の持続力を左右すると考えられます。


③中国、不動産向け融資悪化

中国の不動産大手、中国恒大集団の2兆円を超える米ドル債が国際金融市場を揺らしています。リゾート開発など無謀な投資で資金繰りが悪化し、社債の利回りが急上昇しています。仏アムンディやスイスのUBSグループなど世界の大手運用会社が恒大債を保有しており、破綻すれば大きな損失に繋がります。中国政府が救済するかは不透明で投資家は売却を急いでいるようです。

このような環境下、中国大手銀行の不動産関連融資が悪化しています。中国当局が過剰債務企業への監視を強めたからです。不動産の投機的な取引を取り締まるため、融資制限などで締め付けを強めているのが現状です。中国工商銀行の不動産向け不良債権比率は6月末に4.29%と前年同期の1.41%から急上昇しました。

習近平指導部は「共同富裕(ともに豊かになる)」を旗印に、格差是正を進めています。高騰する不動産価格の抑制は優先課題の一つです。半面、急激に締め付ければバブルが崩壊し、経済全体への悪影響は避けられません。日本のバブル崩壊の引き金になった旧大蔵省が導入した不動産融資の総量規制。日本と同じ道をたどるのか、それとも別の方法で着地させるのか、中国当局の動きを注視する必要があると思います。


④国内不動産マネー流入

国内の不動産に国内外のマネーが流入しています。

REITや私募ファンドを含めた資産額は、2021年6月末で44兆1000憶円と過去最高を更新しました。1年前に比べて、3兆4000億円増加しました。日銀の異次元緩和が始まった13年以降、一貫して増加しています。中でも投資家数を絞って運用する私募ファンドの増加が目立ちます。足元では23兆円超と20兆円強の上場REITを上回ります。また、外資系ファンドによる大型取引も目立っています。

3月には米ブラックストーングループが近鉄グループホールディングスから8つのホテルを約600億円で取得すると発表しました。5月にはシンガポール政府系のREIT、メープルツリー・ノースアジア・トラストが日本ヒューレットパッカード本社ビルを約400憶円で取得しました。

20年に海外からの日本の不動産への投資額は前年比24%増加、世界全体で国境を越える不動産投資額が全体で19%減少する中、日本への投資意欲は衰えてません。不動産の賃料収入を物件価格で割った投資利回りは3%前後で安定しています。

私募ファンドの中で国内外の不動産に投資する「グローバル型」に組み込まれる日本の物件も増加傾向にあります。また、ファンドはコロナ禍に苦しむ企業の受け皿になっています。

21年1~6月の国内不動産の売却額は、事業法人と金融法人合わせて6583億円とリーマン危機前の08年1~6月以来の高水準となりました。主な買い手は外資系ファンド。

今後も、国内外の投資マネーの流入が継続するか、注視する必要があると思います。



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