①日米首脳共同声明
岸田文雄首相とバイデン米大統領の首脳会談が、5月23日、東京・元赤坂の迎賓館で行われました。バイデン大統領は、就任後、初の来日で、対面で長時間会談したのも初めてです。
日米両首脳の発言と共同声明の内容を纏めてみました。
バイデン大統領は、台湾海峡で現状変更が無いように、引き続き関与、また、有事の際には軍事的に関与すると明言しました。また、インド太平洋経済枠組み(IPEF)によって、インド太平洋の友好国と経済的競争力を確保すると発言しました。
一方、岸田首相は、IPEFへの参加を表明、また、防衛費を大幅に増額する意向を示しました。また、来年のG7サミットは、首相の出身地である広島で開催すると発言しました。
共同声明のポイントは以下の通りです。
〇中国へロシアの行動への非難を要求
〇中国を念頭とする抑止力強化へ日米が協力
〇台湾海峡の平和と安定の重要性を強調
〇核を含む能力で米国が日本を防衛
この会談で、日米両首脳は日米同盟の抑止力と対処力の強化を確認しました。
但し、今後は、日本が主体的に動かなければ米国との同盟は深化しないと思われます。
②クアッド首脳共同声明
日米豪印の4か国の枠組み「Quad(クアッド)」は5月24日、首相官邸で首脳会議を開催しました。
会議への参加者は、岸田文雄首相、バイデン米大統領、インドのモディ首相、就任したばかりのオーストラリアのアルバニージー首相になります。
首脳会議終了後、中国を念頭に海洋監視での協力を盛り込んだ共同声明を発表しました。
クアッド首脳会議のポイントを纏めてみました。
〇現状変更する一方的な行動に強く反対
〇東・南シナ海での海洋秩序への挑戦に対抗
〇安定と繁栄の促進へ海洋監視情報を共有
〇太平洋島しょの経済支援や気候変動対策で協力
〇サイバーや5Gなどの重要技術で連携
〇ウクライナでの悲惨な紛争に懸念表明
〇ロシアと中国への名指し批判はせず
今回の共同声明から読み取れるのは、経済に力点を置いてきた協力分野を安全保障にまで広げたことです。今後、経済面での対中依存も多いアジアで高いレベルの安保協力を進めるメンバーを拡大するのは容易ではありません。
③中国「ゼロコロナ」政策
中国政府が新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で、中国景気の傷が深まってきました。4月は物流の混乱などで生産、小売り、雇用が軒並み悪化しました。
工業生産は前年同月比2.9%の減少。約2年ぶりの減少で、中国が初めて新型コロナの打撃を被った2020年1~2月(前年同月比13.5%減)以来の落ち込みとなりました。小売売上高も11.1%減少しました。特にロックダウンが続く上海市では小売売上高の落ち込みが4割に達しました。
経済活動の停滞で、雇用も悪化しています。失業率は6.1%と6カ月連続で前月を上回りました。
このうち、16~24歳の若年失業率は18.2%と、過去最悪を更新してしまいました。
共産党の習近平指導部はゼロコロナ政策を堅持する方針を5月5日の会議で確認しています。
秋の党大会を前に全土の行動制限がどこまで緩まるかは見通せない状態が続きます。
民間予測では4~6月のマイナス成長を懸念する声も出始めています。中国の減速が世界経済の回復に水を差す可能性も十分にあります。
④国内企業物価・消費者物価
日銀が5月16日に発表した4月の企業物価指数は113.5(2015年平均100)と前年同月比10.0%上昇しました。前年の水準を上回るのは14ヵ月連続になります。ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、石油・石炭製品など資源関連を中心に幅広い品目で価格が上昇し、第2次石油危機の影響が残る1980年12月(10.4%)以来、約41年ぶりに2ケタの伸びを記録しました。指数の水準としては、1960年の統計開始以降で、最も高い水準です。
総務省が5月20日に発表した4月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.4となり、前年同月比2.1%上昇しました。消費税の影響があった2015年3月(2.2%)以来、7年1ヵ月ぶりに2%を超えました。資源高で電気代やガソリン価格などエネルギー関連が大きく上昇しました。原材料高で食料品も上がっています。
2%は、日銀が目標として掲げています。物価がこのペースで安定して上がることで、企業収益の拡大や賃上げに繋がり、経済が活性化する好循環を生むと考えています。しかし、日銀は、今回の物価上昇は一時的と判断しており、金融政策は緩和を継続する模様です。
⑤トヨタ営業利益・過去最高
トヨタ自動車が5月11日、2022年3月期の連結決算(国際会計基準)を発表しました。
営業利益が前期比36%増加の2兆9956憶円になりました。2016年3月期の2兆8539億円を上回り、6年ぶりに過去最高を更新しました。これは国内企業で過去最高の水準となります。
売上高は15%増の31兆3795億円、純利益も27%増の2兆8501億円で4年ぶりに最高に。
純利益は日本企業では、ソフトバンクGの21年3月期(4兆9879憶円)次ぐ水準です。
製造業では自らが持つ最高を更新しました。新型コロナの影響を受けた前期からの生産挽回が貢献しました。
しかし、同日発表した23年3月期の見通しでは、売上高は5%増の33兆円ですが、営業利益は20%減の2兆4千億円になります。世界的な素材高を背景に原材料費が22年3月期よりも1兆4500憶円膨らむことが響き、「原価改善」と呼ばれるカイゼン活動でも補えないのです。
業績予想の前提となる為替レートは115円を想定しており、足元の水準と比較すれば、かなり保守的です。現在の為替レートが年間続けば、今期は約1兆4千億円の円安による増益になります。
但し、生産が正常化していないことが一番のリスクであります。半導体不足は依然として続いており、前期同様、生産計画を下方修正せざるを得ないケースも想定でき、厳しい事業環境に直面しています。