当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①出生急減」「②銀行破綻」です。

①出生急減

厚労省が2022年の出生数が外国人を含む速報値で前年比5.1%減の79万9728人と発表しました。80万人割れは比較可能な1899年以降で初めてのことです。国の推計より11年早いペースです。

新型コロナウイルスの感染拡大で結婚や妊娠・出産をためらう人が増加しました。若い世代の経済不安を和らげ、出産に前向きになれる社会に変える必要があります。

人口動態統計によると、出生数は7年連続で過去最少を更新しました。急減の主因は結婚です。婚姻数は2019年の60万組から2020年に53.7万組、2021年に51.4万組に減り、2022年も51万9823組でした。日本は結婚数が出生数に直結するため影響が大きくなります。コロナ下の経済の混乱も妊娠・出産をためらう要因となりました。前年比の減少率は2022年は5.1%で、2021年の3.4%より大きくなりました。

少子化は日本経済の成長力や社会保障の持続性を左右します。国立社会保障・人口問題研究所の人口推計では出生数が80万人を下回るのは2033年でした。それが11年も前倒しとなりました。より厳しい条件での推計では2021年に77万人となって80万人を割る想定でした。現状はこの最悪シナリオにかなり近くなっています。

人口減も加速しています。死亡数は8.9%増の158万2033人で過去最多を更新しました。出生から死亡を引いた自然減も78万2305人と過去最大になりました。減少幅は、2021年より17万人ほど広がっています。

年金や医療、介護など約130兆円の社会保障給付費の財源は、現役世代が多くを拠出する保険料が半分以上を占めます。少子化で将来世代が減れば、保険料の引き上げなど負担増が不可避になります。

欧米の多くの国はコロナ禍による出生減から既に回復しています。ドイツやフランス、ベルギーなど少子化対策が手厚い国は回復が早い傾向にあります。ドイツは2021年の出生数が二十数年ぶりに高水準となりました。男性の育児参加など子育てしやすい環境づくりに取り組んでいるからです。フランスは多子世帯の税優遇や育児休業中の賃金保障などで支援しています。

3月末、政府は少子化対策のたたき台を発表しました。児童手当の拡充に加え、出産費用の保険適用や学校給食費の無償化の検討なども盛り込まれています。 たたき台では、2030年までを少子化対策のラストチャンスと位置付けていて、今後3年間に集中して取り組む政策を「こども・子育て支援加速化プラン」として掲げました。児童手当については所得制限の撤廃や高校卒業までの支給延長に加え、複数の子どもがいる多子世帯への給付額を見直すことなどが盛り込まれました。住宅支援では子育て世帯の公営住宅への優先的な入居のほか、住宅ローン・フラット35の金利負担を軽減するための支援の充実を図るとしています。

また、高等教育費の負担軽減として2024年度から、授業料の減免や給付型奨学金について、多子世帯や理工農系の学生等の中間層に拡大するとし、新たに「授業料後払い制度(仮称)」を修士課程の学生を対象に導入するとしています。  

保育所などの職員配置基準については、1歳児は6対1から5対1に、4・5歳児は30対1から25対1へ変更し、さらなる処遇改善を検討するとしています。さらに、就労要件を問わず時間単位で柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設を検討するとしています。両親ともにそれぞれ育児休業を取得した場合、その期間の給付率を手取りで10割へ引き上げるとしました。このほか、出産費用の保険適用導入の検討や学校給食費の無償化に向けて課題を整理していくとしました。

今後3年間で、これらの政策を確実かつ早期に実現して欲しいと思います。



②銀行破綻

米テクノロジー企業への融資で知られ、米西海岸シリコンバレーのエコシステムの中核を担ってきたシリコンバレーバンク(SVB)が3月10日、経営破綻しました。米銀の破綻では2008年のリーマン危機で破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ資産規模です。

影響は欧州にも広がりました。SVBの破綻をきっかけに株価が急落したスイスの金融大手、クレディ・スイス・グループは経営問題が再燃。スイス国立銀行(中央銀行)は16日、最大500億スイスフラン(約7兆1000億円)を調達する用意があると発表しました。激動の春の嵐を時系列に纏めてみます。

3月10日
●米シリコンバレー銀行が経営破綻

米連邦預金保険公社(FDIC)は10日、テック関連のスタートアップへの融資で知られる銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻し事業を停止したと発表しました。米連邦準備理事会(FRB)による利上げで含み損を抱えた保有債券の売却や、取引先の新興テック企業の資金繰り悪化に備えた資本増強策を8日に発表しましたが、信用不安を招き株価が急落していました。

3月12日
●米財務省など「シリコンバレー銀行の預金、全額保護」

米財務省と米連邦準備理事会(FRB)、米連邦預金保険公社(FDIC)は12日、米銀シリコンバレーバンク(SVB)の破綻について共同声明を公表しました。イエレン米財務長官は預金者を完全に保護する方法で破綻処理を完了する措置を承認した。FRBが銀行の資金繰りを助ける新たな枠組みを導入します。

●シグネチャー銀行も破綻 預金全額保護

ニューヨーク州金融監督当局は12日、同州地盤の米銀シグネチャー・バンクの事業を同日付で停止したと発表しました。10日に経営破綻したシリコンバレーバンク(SVB)に続く破綻となります。資産規模で全米29位のシグネチャー・バンクは米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入り、預金は全額保護されます。

3月13日
●シリコンバレー銀行、預金引き出し再開 顧客が殺到

経営破綻した米シリコンバレーバンク(SVB)の預金引き出しが13日、再開した。米金融当局が12日、預金を全額保護すると発表し、顧客にひとまず安堵が広がりました。週明けの13日、従業員の給与向けなど手元資金を確保しようと店舗に行列ができました。一方オンラインバンクにはアクセスが集中し、送金できないといった混乱も生じました。

3月16日
●クレディ・スイス、中銀から最大7兆円調達へ

スイスの金融大手クレディ・スイス・グループは16日、スイス国立銀行(中央銀行)の資金供給策を使って最大500億スイスフラン(約7兆1000億円)を調達する用意があると発表しました。
「先制して流動性を強化するため断固たる行動を取る」と強調しました。

3月17日
●ファースト・リパブリック銀行の支援

ファースト・リパブリック銀行の株価暴落(約70%の下落)を受け、預金の引き出しが増える→破綻する懸念への対処として大手金融機関が支援に乗り出しました。支援総額は300億ドル(約4兆円)。同行の破綻懸念は和らいだものの、金融システムへの懸念は払拭されていないようです。

●ECB(ヨーロッパ中央銀行)利上げ

ECB(ヨーロッパ中央銀行)は政策金利を予定通りの0.5%引き上げで行うと発表しました。今回の騒動への対応よりもインフレ対策を優先させた形となりました。これによりFOMCが金利をどうするのかにもより注目が集まりました。

●FRB(米連邦準備理事会)の融資残高

FRBが銀行に対して行う融資の残高が15日時点で1528億ドル(20.0兆円)になったと発表しました。リーマン・ショックを抜き過去最高となりました。

3月18日
●クレディ・スイス銀行の買収交渉

スイスの大手金融企業のUBSが経営危機に陥っているクレディ・スイス銀行の買収交渉を開始したことが明らかになりました。買収は一部、もしくは全部として報道されており、週末には買収の有無が決まるのではないかと注目が集まっていました。

3月20日
●UBSがクレディ・スイス銀行を買収

スイスの大手金融企業のUBSがクレディ・スイス銀行を買収したことが発表されました。買収金額は30億フラン(約4260億円)。スイス国立銀行はこの買収に1000億フラン(約14兆円)を貸し出します。またスイス政府は将来的にUBSが損失を被った際の保証として90億フラン(1兆2900億円)を提供すると発表しています。クレディ・スイス銀行が買収されたことで発行していた劣後債のAT1債が無価値になりました。

3月22日
●FRB(米連邦準備理事会)利上げ

FRBは0.25%の追加利上げを決定しました。1年間で計4.75%という急ピッチの利上げは金融不安を招き、米連邦公開市場委員会(FOMC)内では利上げの一時停止も議論されました。銀行破綻が実体経済に及ぼす影響も読めないなか、FRBは高インフレの抑制を優先して薄氷を踏みました。

3月27日
●ファースト・シチズンズがSVBを買収

ファースト・シチズンズがSVBを買収すると発表されました。買収金額は165億ドル(約2.15兆円)。

今回の銀行破綻では、各国の中央銀行並びに政府が迅速に動き、SNSで伝播する不安を払拭する姿勢は評価に値すると思いました。完全に沈静化するまでには、暫く時間がかかるかもしれませんが、今後は、平時の検査・監督を厳しくし、破綻を未然に防ぐような金融行政を徹底して欲しいと思います。

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