①12月消費者物価
総務省が発表した2022年12月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が104.1となり、前年同月比4.0%上昇しました。
石油危機の影響で物価が上がっていた1981年12月(4.0%)以来、41年ぶりの上昇で、2022年通年は生鮮食品を除く総合で102.1となり、前年比2.3%上昇しました。
上昇は2022年12月まで16ヵ月連続となりました。4.0%という伸び率は消費税導入時や税率引き上げ時を上回り、日銀の物価上昇目標2%の2倍の水準に達しました。事前の市場予測に沿った数字になりました。
通年での上昇は2019年(0.6%)以来3年ぶりです。2%を超えるのは消費税率を上げた2014年(2.6%)を除くと、1992年(2.2%)以来となりました。2022年の上昇率2.3%は1991年(2.9%)以来、31年ぶりの高い水準となりました。
上昇した主な品目は、都市ガス代・33.3%、電気代・21.3%、食用油・33.6%、炭酸飲料・15.9%、ルームエアコン・13.0%、エネルギー、食品、耐久財が中心でした。
日本経済研究センターが纏めた民間エコノミスト36人の予測平均では、2023年は物価上昇の勢いが鈍るとのことです。生鮮食品を除く消費者物価上昇率は、1〜3月期で前年同期比2.71%、7〜9月期で1%台になるとのことです。
この予測が的中すればよいのですが、不確実性も高いので注視する必要があります。
②日銀・金融政策決定会合
財務省が今月初旬に実施した10年物国債の入札で、最高落札利回りが0.5%と7年半ぶりの水準まで上昇しました。日銀が2022年12月に引き上げた長期金利の上限に到達しました。
この状況をみて、多くの市場参加者の間では、日銀がいずれ金利を抑えきれなくなるとの見方が広がり始めました。
そのような環境下で迎えた2023年1月の日銀金融政策決定会合、一部の市場関係者の間では、長期金利の上限を引き上げるのではとの見方もありましたが、結果は長期金利上限0.5%維持となりました。他にも短期金利はマイナス0.1%、年12兆円を上限とする上場投資信託(ETF)や年1800億円を上限とする不動産投資信託(REIT)の買い入れ方針、金融政策の先行きを示す「フォワード・ガイダンス」は維持することになりました。
今回、日銀が新たに打ち出した政策は、「共通担保資金供給オペ」です。国債利回りに比べ低利で金融機関に資金を貸し出し、国債購入を促すものです。日銀が直接国債を購入しなくても金利を押し下げる効果が見込めます。
また決定会合後に公表した展望リポートでは、2022年度の物価見通しを昨年10月公表時点の2.9%から3.0%に引き上げました。
2月には、日銀総裁・副総裁の人事案を国会に提出すると岸田首相が明言しました。当面の間、人事・金利動向から目が離せません。
③賃上げ、岸田首相・経済界
岸田文雄首相は、1月4日、三重県伊勢市で記者会見し、今年の春闘で「インフレ」と訴えました。
「企業収益が伸びても賃金が上がらなかった問題に終止符を打ち、賃金が毎年伸びる構造をつくる」とも語りました。「この30年間、企業収益が伸びても期待されたほどに賃金は伸びず、想定されたトリクルダウンは起きなかった」と話し、最低賃金の引き上げに加え、公的機関でのインフレ率を上回る賃上げを目指すと表明しました。「リスキリングの支援や職務給の確立、成長分野への雇用の移動を三位一体で進め構造的な賃上げを実現すると強調しました。
翌1月5日、経済3団体が開催した新年祝賀会、岸田文雄首相は挨拶で、経済界に「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と要請しました。加えて「今年の賃上げの動きによって日本経済の先行きは全く違ったものになる」と強調しました。この呼びかけを受け、経団連の十倉雅和会長は、足元の物価高について持続的な賃金上昇に繋げる好機だと強調し、会員企業に「ベアを中心に物価高に負けない賃上げをして欲しい」と呼びかけました。
1月24日、いわゆる春闘の本格化を前に、経団連は賃上げの指針などを説明するフォーラムを開催し、企業に対し物価高を強く意識した賃上げの検討を求めました。今回のフォーラムでは、今年は、働き手の安心感を重視し、一度上げたら下がらないとされるベースアップ=基本給の引き上げを優先するよう呼びかけています。但し、世界経済の先行きへの警戒感も強く、各社の賃上げに影を落とす恐れもあります。今後の春闘の行方を見守りたいと思います。