組織において非常に重要な「人材教育」。組織内の人材が適切な指導によって成長を遂げれば、それだけで組織力向上につながります。 しかし、一口に指導と言っても簡単なことではなく、「人材がなかなか育たない」と嘆き、指導法に悩んでいる企業も多いのが現状です。 そんな企業の管理職に当たる、悩める指導者の方々が取り入れるべきが「コーチング」の概念だと言えるでしょう。

人材育成において重要なコーチングの能力

コーチングは「対話によって相手の自己表現や目標達成を図る技術」とも言われ、ビジネスシーンでもよく耳にするようになった人材開発の手法の1つです。

継続的に目標を達成したり、成長できる環境をつくったりすることとも同義となります。相手の自発性を引き出し、後押しすることで成長を促進させる手法なのです。

コーチングにおいて大切なのは、コミュニケーションを通して相手の考えを理解すること。そのためコーチングを実践するには「聞くこと」「質問すること」のスキルが求められます。

コーチングの考え方を以下の3原則をもとに整理してみましょう。

【コーチングの3原則】

原則1:インタラクティブ(双方性)
コーチングは、一方通行ではなく双方向からの意見やアイデアを取り入れて実践することで成り立ちます。インタラクティブ(双方性)を促進するには、相手への質問スキルや傾聴スキルが求められるのです。

原則2:オンゴーイング(現在進行形)
目標と現実との間にある誤差に即座に気づき、現在進行形で定期的に軌道修正をするスキルです。コーチングで熱心に指導しているなかでも、冷静な視点で相手を見つめることで目標へ誘います。
目標達成のための戦略や、相手を承認するスキルなどが求められます。

原則3:テーラーメイド(個別対応)
人によって考え方や意見が違うように、伝えたことに対する理解や受け取り方もそれぞれ異なります。相手の個性や能力を把握し、個々に最適な伝え方やスピードを見極めたうえで関わっていく個別対応の能力が求められます。

コーチングとティーチングの違い

コーチングとよく混同して考えられがちなのがティーチングです。やる気や自発性を引き出すことが目的のコーチングに対して、知識やノウハウを伝えるのがティーチングに該当します。

ティーチングは基礎知識やルール、技術などを伝えるには非常に効果的ですが、教える側が持っている以上のスキルはあまり身につきません。

多くの人は学校教育などでティーチングに馴染みがあるため、会社の部下や後輩にもティーチングで指導するケースが考えられます。

しかし、相手の能力を最大限に引き出すためには、ティーチングよりもコーチングが最適です。以下ではコーチングとティーチングの特徴を比較しました。

【コーチングとティーチングのメリット・デメリット比較】

コーチング
コーチングのメリットとしては、相手の自主性ややる気を引き出すことで実行力が身につくこと、教える側のスキルレベルに影響を受けにくいことなどが挙げられます。

デメリットとしては、新入社員などスキルレベルが追いついていない相手にはあまり効果的ではないことや、教える側のコミュニケーション能力や双方の関係性によって成果が大きく変わることが挙げられるでしょう。

ティーチング
ティーチングは、知識や経験の少ない相手に対してノウハウを伝えるには優れた効果が期待されます。また、直接伝えるだけでなく、基本的には文字や音声など、あらゆる伝達手段を利用します。

一方、自主性や自立心が育ちにくいため、いわゆる「指示待ち人間」や「暗記型人間」になってしまう可能性がある点がデメリットとして挙げられます。

「自ら動く人材」を育てるコーチング

コーチングは非常に優れた人材教育の手法ですが、相手の「習熟度」に合わせて対応しなければ効果的ではありません。

若手社員であっても習熟度が高いと感じればコーチングを試してみたり、人によっては両方を使い分けたりすることも必要です。

しかし、コーチングやティーチングを理解しても、実践するのはそう簡単ではありません。教育を行うリーダー層のスキルやマインドも大きく関係してくるのです。

相手がどんなマインドでどれだけ習熟できているのかを見極めて最適な方法を取り入れること、相手とのコミュニケーションをとって信頼関係を作ることが、自主性のある部下を育てるカギとなるのです。

強い組織を形成するうえで、自ら行動できる人の存在が非常に重要になります。指示がなければ動けない自立できていない人が多いと、組織は成熟せず、成長し続けることができないでしょう。

最適なマネジメントを行ううえでも、コーチングに注目が集まっています。