税金には「控除」と呼ばれるしくみがあります。控除とは、あるものから何かを差し引くという意味ですが、税金の世界では控除を受けると税金が安くなるうれしい制度です。 税金の計算でもっとも登場する控除は「所得控除」です。年末調整や確定申告で登場する所得控除と知っておきたいポイントをご紹介します。

所得控除は公平な税負担のため

なぜ、所得控除という制度があるのでしょうか。本来、税金は所得全体に課されるのがすっきりする考え方です。仕事や投資、年金などで得た収入に応じて国民が納税するのです。

しかし、一律に収入によって課税してしまうと、一人一人の事情を無視して日々の暮らしすらできない状態にしてしまいます。

家族がいる、子育てをしている、老親を扶養している、障害があるなど、国民それぞれの事情を考慮した上で税金の負担をできるだけ公平にしようというのが所得控除がある背景として考えられます。

所得控除は14種類ある

所得控除には14種類あり、人的控除と物的控除に大きく分かれます。

人的控除とは、納税者一人一人が持つ事情を考えて税負担を減らすためのものです。基礎控除をはじめ障害者控除、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除、寡婦・寡夫控除、勤労学生控除があります。

一方、物的控除とは、国が国民福祉を考えて日々の暮らしを支える支出を控除するものです。医療費控除、社会保険料控除や生命保険控除、地震保険控除をはじめ小規模企業共済掛金控除、寄付金控除、雑損控除があります。

このように、税額の計算では所得すべてに課税されるのではなく、ハンディキャップがあったり、まとまった医療費や保険料を支払っていれば、税負担が軽くなるしくみを設けています。

所得控除は年末に収入から差し引かれる

所得控除は、まずその年の1年間で得た収入から必要経費を差し引いて出た所得金額に適用されます。自営業者であれば、仕事で得た収入から必要経費を引いたものが所得金額で、そこからさらに14種類の所得控除の金額を差し引くことができ、税額計算されます。これを課税所得と呼びます。課税所得に税率を掛けたものが納めるべき税額です。

サラリーマンは年末調整でこうした所得控除の大半を計算してもらっています。ただ、そのおかげで本当は所得控除になるのに年末調整や確定申告で何もしないままという人が多いようです。

医療費控除や寄付金控除、雑損控除は自分から申告しなければ所得から控除してもらえないのでチェックしましょう。

ここからは代表的な所得控除をいくつかご説明します。

医療費控除は身近な節税対策

気軽にできる節税対策として知られるようになった医療費控除。病院代や薬代を年間でまとまった金額支払うと、所得から控除してもらえます。

医療費控除を受けられるのは、その年の1年間で10万円を超える医療費を支払った場合です。ただし、年収が200万円未満の場合は所得金額全体の5%を超える医療費で適用されます。

なお、生命保険や医療保険で給付保険金を支給された場合は医療費から差し引く必要があるので注意しましょう。

医療費は病院や薬局の窓口で支払う診察代や治療費、薬代のほか、通院のための交通費も含まれます。自分でドラッグストアで購入した薬代も同様です。

保険料控除のためには証明書の提出が必要

社会保険料控除や生命保険控除、地震保険控除は家計のなかでも支出の大きい項目です。そこで国は、一定以上の保険料を支払っていれば、所得控除されるようにしています。

社会保険料は保険料の全額が控除対象になっており、健康保険料や介護保険料、年金の掛金が含まれます。生命保険料は最高5万円またはそれぞれ最高4万円まで適用され、民間の医療保険や傷害保険などです。また、地震保険料も最高5万円まで所得から控除されます。

社会福祉のための障害者控除や扶養控除

障害者控除とは、障害のある人や障害者を扶養している人に対して税負担を軽くする所得控除です。控除額は障害の程度に応じて障害者27万円、特別障害者40万円となっています。

なお、生計が同一で特別障害者の親族を扶養していると、同居特別障害者となり75万円が控除されます。

また、扶養親族がいる場合は扶養控除が受けられます。生計を同一にしている未成年の子どもや親、祖父母のことです。控除額は38万円を基本として、48万円、58万円、63万円と扶養親族の年齢に応じて4段階に分かれています。

まとめ

このように、納税者の税負担をできるだけ公平にして日々の暮らしを守るために所得控除があります。給与所得者なら多くの手続きを会社が年末調整で行ってくれますが、医療費控除のように自分で申告しなければ控除してもらえないものもあるのでチェックしましょう。

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