”モノのインターネット”が紡ぐ価値とは
「Internet of Things」の略であるIoT。日本語では「モノのインターネット」と呼ばれていて、スマホ、タブレット、PCなどのIT関連機器以外のモノがインターネットにつながることを指します。現在でもすでに車、家電、デジタルカメラなどがインターネットとつながる製品が発売されており、新たな価値を創出しています。今後は日常で利用されるあらゆる製品、雑貨などにまでインターネットをつないだ製品が開発されていくことが予想されているのです。
モノとインターネットがつながることの利点は、データがサーバに送られることで製品の利用状況などのデータ管理や分析ができることに尽きます。たとえば便座に座るだけで日々の体温の変化がデータとして残り、歯磨きをするだけで磨き残し箇所がわかるようになります。また、街の気温、騒音、大気の汚染状況、交通情報といった公共情報がデータとしてサーバに送られることで分析・管理が可能に。スマホなどを利用してその公共情報のデータをリアルタイムで閲覧することもできます。
これまでデータ蓄積や分析が難しかった一人ひとりにパーソナライズされた情報の整理ができ、多くの人が知りたいと思う公共情報についてもより詳細にリアルタイムで享受できる点がモノのインターネットが普及する価値だと言えるでしょう。さまざまな製品とインターネットがつながることで世の中がもっと暮らしやすく便利になることは間違いありません。
デジタル市場においてIoTが果たす役割
IoTの肝となる情報の管理と分析ですが、なぜそのようなことが可能なのでしょうか。仕組みとしてはあらゆる情報のデータをクラウド上に蓄積させることで、一元管理することが可能になり、またデータを用いて分析することもできるようになりました。これまでは集積できなかったデータの管理・分析ができることで、近年広がりを見せているデジタル市場にも大きな影響を与えています。
デジタル市場では、データのモニタリング、ビッグデータの分析などに関しては以前から行われてきました。データの集積がうまくできなかったり、コストが多くかかったりするなどなかなか管理や分析が難しい分野もありましたが、IoTを活用することでさまざまなデータも簡単に集積できます。
たとえば農業では、温度、湿度、土の状況、天候などを瞬時に観測し、経験や勘に頼らなくとも種まき、収穫のベストタイミングの把握が可能に。また医療分野では、患者の詳細な状況を常に管理でき、データ分析によってこれまで以上に細やかなケアも行えます。IoTの普及により、デジタル市場の今後のさらなる拡大が予想されており、これまでデータ管理や分析が難しかった分野にも広がりを見せていくでしょう。
最大の利点はユーザーニーズの掌握
製品のデータ管理や分析がこれまで以上に詳細にできることで、果たして社会はどのように変化していくのでしょうか。IoTにおける最大のメリットだと考えられているのは、製品がインターネットにつながってデータが集積されることで企業とユーザーのマッチングがよりしやすくなるということです。
従来までは消費者の傾向や不満などユーザーニーズについては直接、聞かなければわからなかったことばかりでした。しかし、製品の利用状況などが集積されたデータを分析し、掌握できることで製品改善や今後の開発のヒントにすることもできます。また修理や交換の時期を予測し、事前にユーザーにお知らせすることもできるなど、IoTが普及することでデジタルマーケティングの手法がさらに進化することが想定できるでしょう。
IoTがより身近な存在となれば、今まで以上にユーザー視点がよりはっきりし、企業とのマッチングが図れるようになるでしょう。それは製品を開発する企業側はもちろんのこと、利用するユーザーの双方にとって大変有意義な話なのです。