東京や関西はもちろん地方都市でも外国人観光客を多く見かけるようになりました。いわゆるインバウンドが急上昇で観光やグルメにまち全体で取り組みケースも出ています。 ここ数年のインバウンドの特徴であるアジア圏からの観光客の増加にどう対応するかが問われており、その一つがイスラム圏からの訪日外国人へのムスリムフレンドリーです。 いまなお生活のあらゆる面で厳しい戒律を守るイスラム教徒の観光客が安心して来日してもらえるための取り組みについてご紹介します。

ムスリムフレンドリーとは

「豚を食べてはいけない」「メッカの方向に向かってお祈りを捧げる」など、イスラム教は独特の文化や風習があることで知られています。

こうしたイスラム教徒の文化や風習に対応したサービスを行うことをムスリムフレンドリーと呼びます。

つまり、イスラム教徒のみなさんがやって来ても安心なように準備をしていますという姿勢を示すことで、飲食店や施設を訪れやすいようにしているのです。

 

インバウンド急増で迫られるハラール認証

ムスリムフレンドリーを実施する際、重要なキーワードがあります。それが、「ハラール」(「ハラル」ともいう)と呼ばれるもので、「ポークフリー」や「アルコールフリー」といった宗教的な生活ルールの総称です。

ムスリムフレンドリーをビジネスシーンで採用するとき、ハラールに厳格に対応しているかどうかが非常に重要となります。

そこで、この食品やサービスはイスラム教のハラールの基準をクリアしているかどうかが一目でわかるため世界中にハラールを専門に審査する機関が存在します。

ハラール機関は審査・合格した食品やサービスに「ハラール認証」のマークを認可します。

日本国内でもレストランや食品メーカーで「ハラール認証」を掲げるところを見かけるようになりました。

ただ、全体からするとまだまだ少なく、イスラム教徒のインバウンドが急増しているいま、今後の整備に期待しなければならないという現状があります。

それでは、実際にハラール認証を取得しているケースをいくつか見ていきましょう。

飲食業界・食品業界のハラール認証

和食の世界でハラール認証を取得し話題となった西麻布の「くすもと」。ハラール食材による「ハラル和食」で世界文化遺産となった和食をイスラム教徒にも気軽に味わってもらえる機会を提供しています。

千葉県香取市で約160年の歴史を持つちば醤油は、2013年9月にハラール認証を取得しました。

ハラールの基準を満たして製造された「ハラールこいくつ醤油」はホテルやレストラン、観光産業、和食に関心の高い国への輸出などを通して少しずつ知名度アップを図っています。

岩手県一関の地元食材にこだわったレストラン『KABURAYA』ではハラール認証の地元コンニャクによるメニュー開発費や店内に礼拝堂を設置するための費用をクラウドファンディングで集めており、インバウンドの関心の鈍かった東北地方のムスリムフレンドリーさきがけとして期待が寄せられています。

農水産業界のハラール認証

和食の広まりとともにアジア圏での鮮魚の需要も高まっています。

シンガポールやマレーシアといった東南アジアのムスリム層を対象にした和食レストランやホテルへの輸出のため、愛媛県宇和島市の水産加工会社「宇和島プロジェクト」は養殖のクロマグロとスマでハラール認証を取得。

国内発となる養殖魚の認証取得は水産業界にとどまらず東南アジアや中東圏への輸出業界で話題を呼びました。

新潟県長岡市の農業生産法人株式会社たべたがりは、2015年8月にハラール認証を取得。乾燥野菜関連の商品全体に対するものです。

切り干しだいこんや切り干しにんじんをはじめスープや炒め物など応用の広い乾燥こまつなやほうれんそう、長ネギといったラインナップがあります。

さらにパセリやバジル、ローリエやコリアンダーといった乾燥ハーブシリーズも需要が見込まれます。

たべたがりでは野菜の生産において減農薬・減化学肥料をモットーにしており、肥料には有機肥料にこだわるなど、新しい農業を目指した運営をしている農業生産法人です。

耕作放棄地の再生や高齢者・障害者雇用にも積極的に関わっており、ハラール認証の取得もそんな社会に対する思いが現れているといえるでしょう。

 

ハラール認証はインバウンド増加に対応して早急に整備を急がなければならない課題です。

ムスリムの訪日観光客が安心して旅を楽しんで帰国してもらうために、ますますハラール認証に意欲的な企業は増えることでしょう。

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