もともとの意味は「紙ばさみ」
英語のportfolioは、もともと「紙ばさみ」「書類かばん」などの意味を持っています。このうちportの部分は「運ぶ」という意味があります。
持ち運び可能であることを意味するポータブル(portable)の頭にも、portという表現がありますね。もういっぽうのfolioの部分は「一枚の紙」という意味があります。
これらが合わさって「紙を持ち運ぶもの」、すなわち「紙ばさみ」や「書類かばん」の意味を持つようになったのです。
これが転じて、ポートフォリオは様々なジャンルでも使われる言葉となりました。
例えば教育分野では「生徒を評価するための資料を、生徒毎にひとまとめにしたもの」や「その資料集を使った評価方法」のことをポートフォリオと呼びます。
またライターやファッションモデルなどが活躍するクリエイティブ分野では「自分を宣伝するために自分の作品をまとめた資料」のことをポートフォリオと呼びます。
以上のいずれも「複数の資料を一箇所にまとめている」というイメージで共通していますね。
また以上には「隠れた共通点」もあります。「ポートフォリオとは状況に応じて中身を更新するものである」という共通点です。
例えば、ライターが自分の仕事を出版社などにプレゼンするときは、その都度、最新の仕事を提示する必要があるかもしれません。
したがってそのライターは、ポートフォリオの内容を最新情報に「組み替える」必要があるのです。
投資のポートフォリオも「組み替えるもの」
では投資のポートフォリオとは何でしょうか。端的に言えば「自分が持っている金融資産の一覧」のことです。
例えばある投資家が「A国の国債、国内B社の株式、海外C社の株式、Dファンド」を持っているとすると、その一覧がポートフォリオということになります。
冒頭の「ポートフォリオを組む」とは、まさにこのような金融資産の構成を、自分なりに作り上げることを意味しているわけです。
教育やクリエイティブのポートフォリオで「状況に応じて中身を更新」していたように、投資のポートフォリオも「経済状況の変化に応じて中身を更新する」ことが普通です。
例えば、より手堅く資産を守る目的で「株式を売って日本国債を買う」などの行為がありえます。逆に言えば、そういった組み換えができるからこそ、自分の持っている金融資産を「ポートフォリオ」と呼べるわけです。
ポートフォリオの関連語を押さえておくと、ポートフォリオの意味をもっと理解できるかもしれません。
例えば「ポートフォリオ運用」とは、複数の異なる銘柄に投資することによって、資産運用の安定化を図る方法のこと。
また「ポートフォリオ理論」とは、ポートフォリオ運用をより効率的に行うための方法論を指します。
またネット証券などで利用できる「保有銘柄を閲覧・管理できる機能」のことは「ポートフォリオ機能」とも言います。
具体的にどうポートフォリオを「組む」の?
このコラムにたどり着いた人の中には「ポートフォリオの意味じゃなくて、ポートフォリオの組み方を知りたい!」という人もいらっしゃるかもしれませんね。
本コラムの筆者は投資の専門家ではなく、言葉の専門家ですので、具体的なポートフォリオの構築方法ではなく、ポートフォリオを構築する際に手がかりになる「キーワード」だけ紹介しておきましょう。
そのキーワードとは「アセットアロケーション」(asset allocation)という言葉です。アセットアロケーションと直訳すると「資産配分」。
性質の似ている資産をグループで分けて(例:現金/国内株式/海外株式/国内債権/海外債権など)、自分の運用方針に従ってそれぞれのグループに投資する割合を決めるやり方を指します。
投資の世界では「運用成果の大半はアセットアロケーションで決まる」とも言われます。ポートフォリオの組み方を知りたい人は、まずはアセットアロケーションについて調べてみるのが良いのではないでしょうか。
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