投資分野で頻出する用語のひとつにボラティリティー(volatility)があります。これは大まかには「相場における価格変動の度合い」のこと。 その度合いが大きい状況のことを「ボラティリティーが大きい」、その逆の状況を「ボラティリティーが小さい」などと表現できるわけです。 このボラティリティーという言葉の語源をたどっていくと、実はある「発泡酒のCM」の話に行き着きます。

♫ボーラーレ、オーオー♫

皆さんも、テレビなどで一度は「♫ボーラーレ、オーオー。カーンターレー、オーオーオーオー♫」という歌声を聞いたことがあるのではないでしょうか。

これはキリンビールが『麒麟淡麗〈生〉』シリーズ(1998年発売開始)において使用している楽曲『ボラーレ(Volare)』です。

このCMでとくに有名だったのは、フランスのバンド、ジプシーキングス(Gipsy Kings)による演奏でした。

オリジナル曲が誕生した時期は古く、なんと1958年。

イタリアのカンツォーネ歌手、ドメニコ・モドゥーニョ(Domenico Modugno)が発表した『Nel blu dipinto di blu』(青く染まった青の中)こそが原曲なのです。

『Volare』という曲名は、アメリカや日本などで知られる別題ということになります。

ボラーレは、青空で「何をする」曲なのか?

ここでポイントとなるのが原曲の題名にある「blu(青)」の部分。これは実質的に「青空」を意味します。

では、この曲は青空で「何をする」曲なのでしょうか。

そこで「♫Volare oh oh, Cantare oh oh oh oh」の部分を訳してみると「飛ぶよ、オーオーオーオー。歌うよ、オーオーオーオー」となるのです。

つまりこの曲は「青空に舞い上がって歌う」気持ちを表現したラブソングだったのです。ちなみにイタリア語でvolareは「飛ぶ」、cantareは「歌う」を意味する動詞です。

このうちvolareの語源が、ラテン語で「飛ぶ」を意味するvolāreとなります。そろそろお気づきかもしれませんね。

このvolāreというラテン語を語源に持つ英単語のひとつが、冒頭で紹介したvolatilityだったのです。

volatilityという言葉には、相場用語でいう「価格変動性」という意味だけでなく、化学用語でいう「揮発性」という意味も存在します。

またvolatilityの直接の語源である形容詞volatile(ボラタイル)には「気まぐれな・移り気な」「興奮しやすい・怒りっぽい」「危険な・不安定な」「短命の・束の間の」といった意味もあります。

これらのいずれの意味においても「空に飛びそうなフワフワとした感覚」が共通して存在することになります。

バレーボールの「バレー」も仲間

ところでラテン語volāreを語源とする言葉はvolatilityだけではありません。バレーボール(Volleyball)の「バレー」部分や、テニスなどで登場する「ボレー」も、実はラテン語のvolāreが語源なのです。

そもそもバレーもボレーもvolleyとつづる“同じ”言葉。もともとの意味は「一斉射撃」なのですが、スポーツ分野に限って言えば「地面につく前のボールを返すこと」を意味するわけです。

実際バレーボールは、常に「地面につく前のボールを返す」スポーツなので、これをバレーボールと呼ぶようになったといいます。

――ともあれ「相場の変動性が高い様子」も「恋心に浮かれる様子」も「ボールが飛び交う様子」も、どれもこれも「飛ぶイメージ」から派生しているところが面白いですね。

経済系のニュースで「ボラティリティー」という言葉に出会った時には、是非、そんなイメージを思い出してみてください。

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もり・ひろし

新語ウォッチャー。1968年生まれ。電気通信大学卒。CSK総合研究所(現CRI・ミドルウェア)を経て、新語・流行語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・ウェブサイトなどでの執筆活動を行う。代表的連載に日経ビジネスオンライン(日経BP社)の「社会を映し出すコトバたち」、現代用語の基礎知識(自由国民社)の「流行観測」欄など。