徳島県神山町といえば、以前から都会のIT企業のサテライスオフィスが集中していると話題です。

IT企業の本社や地方オフィスが増えるにつれて、若い世代の移住が加速しています。

町をあげてのブロードバンド回線整備や移住促進事業の推進など、さまざまなアプローチでいまや『日本のシリコンバレー』とまでいわれるほどになりました。

そんな神山町に新たなプロジェクトが始動しています。その名も「しずくプロジェクト」。

移住したあるデザイナーから始まった神山町の豊かな自然を守る活動はどのように始まり、現在進められているのでしょうか。

ここではITの神山町が新たに挑戦する環境保護への取り組みをご紹介します。

プロジェクトのきっかけは地方移住から

2012年に関西から神山町に移住してきたキネトスコープ社代表の廣瀬圭治(ひろせ きよはる)さんは、コワーキングスペース「コンプレックス神山」の立ち上げにも携わった主要メンバーです。

現在、アートディレクターやデザイナーとして活躍しており、家族で神山町での田舎暮らしを送っています。

移住した神山町に広がる豊かな自然やきれいな水に親しむうちに、神山町で大切な水を未来へと伝えるために自分にできることはないかと思い始めた廣瀬さんは、水資源と森林の関わりに注目しました。

超高齢化の進む神山町では、従来の主要産業であった林業の担い手がいなくなり、人工林の手入れが行き届かなくなっていました。

集落の水を守るためには、雨が十分に地面に染み込み地下を流れ、地下水や川の水へとつながるための森林管理が欠かせません。

ところが神山町の森林は、放置が進んでしまったことで、間伐されないままの森が増え、太陽光が地面に届かない状態になっていました。

光のない場所には草は生えません。草が生えないと土が固くなり、保水力が落ちます。そうならないためには、間伐によって適度に草が生える状態にしておく必要があるのです。

降った雨が地面に吸収されるという自然のプロセスが失われつつあることで、水資源の確保や治水管理に影響が出始めていました。

実際、神山町を流れる鮎喰川の水量は、30年前に比べるとおよそ3割にまで減少してしまったそうです。

集落にとって水の確保は生命線です。神山町がこれからも長く賑わうためには、水資源のための森林管理が必要でした。

間伐材の利用促進で森と水を守る

森林管理の決め手となる間伐を進めるため、廣瀬さんは地元住民と協力して、間伐材を木工品にして商品化することを思い付きます。

木工が盛んになれば、自然と間伐も促進されるので、水資源を守ることにつながるといったコンセプトから生まれたのが、いま注目を集めている「神山しずくプロジェクト」です。

「神山しずくプロジェクト」では、他の中山間地域でよく行われているこれまでの木工ではなく、廣瀬さんのデザイン力を注ぎ込み、赤と白とのツートンカラーのタンブラーづくりを目指しました。

一般的に杉材は赤味を浴びた部分と白い木目とが部分的に混じりあった板目の色をしています。

なかでも神山町の杉は赤味と白味のグラデーションが鮮やかに現れるため、加工のしかたによってタンブラーの上半分が赤く、下半分が白いというオリジナリティあふれる木工品が生まれやすいのです。

ただ、やわらかい杉材はもともと木工が難しいため、加工には経験を積んだ職人の腕が必要でした。

廣瀬さんはその道40年以上の木工職人を口説いて、神山町のしずくプロジェクトに協力を取り付けます。

熟練の技とデザインのパワーがマッチングしたことで、廣瀬さんのイメージするタンブラーが出来上がりました。

海を越えてミラノ万博への出展まで

その後、しずくプロジェクトに賛同する人たちも増え、2015年には神山町の木工品が海外へと飛び立ちました。

ミラノ国際博覧会日本館への出展が実現し、高い評価を得ました。また、渋谷ロフトではディスカバージャパンと共同催事が行われたり、国内の主要都市で次々と展示会が開かれたりするまでに至りました。

神山町のしずくプロジェクトは次なるステップへ

もともと「木の町かみやま」という林業で栄えた神山町でしたが、高齢化もあって住民たちは久しく森林から離れた生活を送っていました。

廣瀬さんを中心に活動するしずくプロジェクトによって、改めて神山町の森の魅力、水の貴重さを町内外に知らしめるかたちとなっています。

今後も、神山町ならではの間伐材を生かした新しい木工品のラインナップから目が離せません。

参考記事
神山しずくプロジェクト
【徳島県神山町】山を、森を、水を。未来の「しずく」を守ろう|神山しずくプロジェクト
廣瀬 圭治インタビュー 自分らしく生きるためにやってきた。神山町を守るために始めた「神山しずくプロジェクト

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