①米住宅市場に過熱懸念
米国の住宅市場に復調の兆しが出ている。長期金利の低下で、ローン金利も低下したことによります。住宅ローンの申請件数は、6月下旬から、前年同月比4割増で推移しています。
住宅販売にも復調の兆しがみられます。2005年がピークだった米住宅販売は、低所得者への過剰融資があだとなり、金融危機後の2009~2010年に需要が半減しました。その後は米景気の回復に合わせて復調してきたが、2018年に調整局面を迎えました。要因としては、FRBの利上げ継続で、ローン金利が急上昇した為です。それが一転、今年に入ってFRBが緩和姿勢を示し、米住宅市場の活性化への期待が高まっています。
但し、一概に、喜ぶことは出来ないと思います。というのは、FRBの利下げによって、更にローン金利が下がれば、住宅価格を押し上げる可能性もあるからです。価格高騰が需要減退に繋がらないことを祈りたいと思います。
②米、10年半ぶり利下げ
7月31日、大方の予想通り、FRBは、FOMCで政策金利の0.25%下げを決定、10年半ぶりの利下げに踏み切りました。今回の利下げの背景には、貿易戦争の影響で、企業投資が鈍化し始めており、景気悪化を未然に防ぐための「予防的措置」があると思われます。
再三にわたり、FRBに対し利下げ圧力をかけてきたトランプ大統領は、この利下げに対して「パウエルFRB議長に失望」とツイッターで不満を表しました。理由は、利下げが継続されて行われるものではなく、単発とも受け取れる発言を、パウエル議長がした為です。確かに、金融市場は継続的な利下げの始まりを期待していた感が強く、NY株式市場は大幅安、外為市場では、円高に進むと思われたのが一転、円安方向に振れました。
今後も、トランプ氏とFRBとのやり取りを、世界中の市場関係者は注視することが続くと思われます。
③米、対中制裁第4弾、9月発動、米産業界、一斉に反発
8月1日、トランプ大統領は、ほぼ全ての中国製品に追加関税を課す「対中制裁第4弾」を9月1日に発動すると表明しました。新たな制裁対象は、年・約3000億ドル分で関税率は10%になります。7月末の閣僚級会議が不調に終わり、トランプ大統領は「中国が、農産物の購入を実行しない」などと強い不満を示していました。新たに制裁対象となる約3000億ドル分は、スマホなどの携帯電話やノートパソコンなどのIT製品が含まれます。日本企業を含め、世界的なサプライチェーンの混乱を引き起こす可能性もあります。
この制裁の発表を受けて、米国の小売業など業界団体は、相次ぎ反対を表明しました。6月の米中首脳会談を受け、関税撤回への期待が高まっていただけに、反発は大きいものになりました。また、金融市場も貿易摩擦の長期化を嫌気して、リスク回避の動きが強まりました。NYダウも、8月5日、今年最大の下げ幅・767ドルを記録、為替市場では円が急伸し人民元は、対ドルで、11年ぶりに7元まで元安が進みました。元安を受けて米国は、中国を「為替操作国」と認定しました。25年ぶりのことです。
金融市場の安定を回復する為にも、再度の米中首脳会談開催に期待をよせます。
④世界の企業収益、再び減、貿易摩擦、アジア製造業直撃
世界の企業収益に、米中貿易摩擦の影響が出始めている。世界の主要企業の2019年4~6月期の純利益は、前年同期比、2%減少しました。2018年10~12月期以来、2四半期ぶりの減益となります。
地域別では、5地域中、米国を除く4地域で減益となりました。特に、半導体メーカーの影響が大きい韓国や台湾を含むアジアが2割減益と振るいませんでした。米中貿易戦争が半導体や自動車などを直撃したからであります。米国が対中制裁関税第4弾を決定したことで、企業業績は再び厳しさを増すことが予想されます。
このまま、第4弾制裁が発動される事態は、何とか避けられないものでしょうか。再度米中首脳が胸襟を開いて打開策を見出す為の会談が実現することに期待いたします。
⑤韓国「ホワイト国」除外、閣議決定、輸出管理厳しく
8月2日、日本政府は、輸出管理上の優遇措置を受けられる「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定しました。7月4日の半導体材料の韓国向け輸出管理の厳格化に続く第2弾の措置となります。8月7日公布、8月28日施行となります。施行されますと、韓国向けの輸出の際、食品と木材を除くほぼ全ての品目で、経済産業省が個別審査を求めることが出来るようになります。
一方、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は 8月2日、輸出管理で優遇措置をとる「ホワイト国」から韓国を除外する日本政府の政令改正決定を強く警告し、韓国側の「相応の措置」による日本の被害にも言及しました。日本政府は今回の決定が対抗措置や禁輸措置ではないことを明言しました。しかし、韓国は「報復」と断定し、日本の説明を聞き入れていません。既に、市民交流、文化・スポーツ交流・旅行客にも、影響が出始めています。何とか、話し合いで妥協点を見出して正常な日韓関係に戻ることを期待するのみです。
⑥訪日客は西へ、消費は東で
インバウンドと呼ばれる訪日外国人旅行者は、2012年以降、急拡大しています。政府は東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に、インバウンド4000万人、旅行消費額8兆円を目標に掲げています。
まず、2019年1~6月の訪日外国人客数は、半期としては過去最高の1663万人を記録。2018年は、年間で3119万人、旅行消費額4兆5189億円でしたので、このペースが続けば今年も、年間で、新記録を更新するのは間違いないでしょう。
では、外国人観光客はどこを訪れ、どこで消費しているのでしょうか。日本政府観光局によりますと、2018年の訪問客数の首位は、大阪市中央区で、1395万人でした。同年の訪日客全体の3人に1人が、訪れた計算になります。ところが、消費総額の首位は、東京都渋谷区で、63.5億円でした。ある民間調査機関の分析では、「買い物目的の訪日客は、最後の訪問地お金を使う傾向ある」とのことです。法務省によりますと、中国人の出入国数を空港別にみると、羽田・成田空港の合計は、入国者より出国者の方が多いが、関西国際空港は、入国者の方が多いそうです。西から入り、東京で買い物後に出国するという人の流れが見て取れます。
客数が増えても、消費が伴わなければ地域は活性化しません。そこで、消費単価の順位をみてみると、JCBによれば、首位は、山梨県山中湖村で5.2万円でした。山中湖村には、中国系を中心に外資系ホテルが相次ぎ参入、現地で食事や買い物をする個人・団体の訪日客を呼び込んでいます。加えて、カード決済に対応する中小店舗も増加し、消費に結びつけています。
訪日客増加率順位では、首位が、静岡県小山町でした。御殿場プレミアム・アウトレットに比較的近く、緑豊かな登山道もあります。買い物と富士山観光に便利な地の利を生かそうと2018年に2つのホテルが開業しました。太鼓のショーを開催するなどして、訪日客を呼び込んでいます。
このように、順調に伸びてきている訪日客ですが、一番の懸念は、日韓問題です。2018年、国籍・地域別の訪日客シェア順位は、中国が34.2%でトップ、次いで韓国が13.0%でした。韓国からの訪日客が比較的多い地域が、北九州市小倉北区であります。昨年の訪日客増加率順位では第2位でした。2016年に北九州空港へ就航した韓国の定期便で個人ツアー客を集めました。ところが、7月、日本政府が、一部の半導体材料の韓国向け輸出管理を厳しくした頃から、逆風になっています。ある観光業者によると「足元の韓国人観光客数は2割以上減っている」とのことです。
8月6日、韓国・ソウル中心部では、日本製品不買・旅行禁止を呼び掛ける旗・1100本の設置が始まったそうです。繰返しになりますが、早期に、正常な日韓関係に戻ることを期待するのみです。