①トヨタ・ソフトバンクグループ純利益
日本を代表する2大企業の前期決算が発表されました。
トヨタ自動車の2021年3月期の連結決算は、純利益が前期比10%増加し、2兆2452億円になりました。7%の減益予想から一転して増益を確保、市場予測も上回りました。
当初は新型コロナウイルスの影響で販売が落ち込みましたが、その後の半導体不足を独自の取り組みで必要な量を確保し乗り切ったのが大きく、独自の取り組みの背景には、東日本大震災の教訓があります。
トヨタは「カンバン方式」で完成車工場では部品在庫を持たない主義を貫いてきました。しかしながら、東日本大震災時には部品不足で自動車生産が停止してしまいました。その後は、非常時でも重要な部品は確保できるよう取引先全体に在庫量を増やすように要請してきました。その甲斐もあり、今回の世界的な半導体不足を乗り切ることが出来ました。
そのトヨタの純利益を上回り、国内企業の過去最高を記録したのがソフトバンクグループ(SBG)です。
SBGの2021年3月期連結決算は、純利益が4兆9879億円でした。通信子会社ソフトバンクの利益は8479億円でした。また、世界の有望スタートアップ投資する「ビジョン・ファンド」の利益は4兆268億円で利益全体の7割になりました。
直近1年間の本決算で比較すると、SBGの純利益は世界1位の米アップル、サウジアラビアのサウジアラムコに続く第3位でした。
革新的なサービスなどで利益を上げる世界の大企業とは違い、SBGは投資を主軸としています。株式市場動向に左右されやすく、好業績から悪化する恐れもある特異な収益構造です。大手投資ファンドのブラックストーンやKKRに比べると投資のスピードは格段に速く、また、大手ファンドが成熟企業や不動産など価値変動が小さい資産に投資しているのに対し、SBGは急成長も倒産も起こり得るベンチャー企業に投資しています。
収益の振れ幅が大きい投資主軸の企業が国内最高の純利益を計上したことは、今後の日本国内における企業収益の変化を暗示しているのでしょうか。今期のトヨタ・SBGの業績がどうなるのか、注目していきたいと思います。
②少子化、コロナで加速
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で少子化が一気に加速してしまいました。コロナ禍で出産控えや婚姻先送りが相次いだことが主因だと思われます。
厚労省が5月25日に発表した人口動態統計によりますと、2021年1~3月期の出生数は19万2977人となり、前年同期比9.2%減少しました。2020年度は前年度比4.7%減少の85万3214人でした。
都道府県別にみますと、1~3月は東京都が前年同期比14.1%減、埼玉県が11.9%減など、新型コロナ感染が初期から多かった地域の減少が目立ちました。兵庫県も10.5%減、大阪府や京都府も減少幅は9%を超えてしまいました。
新型コロナの妊婦や胎児への影響が不透明な点や、出産時に立会が出来ないといった点から妊娠を控えた人が多かったと推測されます。また、2020年度の婚姻数は19年度に比べて16.1%減少しました。日本は結婚しないと子供を持たない傾向があり、婚姻先送りも少子化の加速に大きく影響するとみられます。
4月以降も出生数は減少が続いているようで、2021年は年80万人を下回る可能性もあります。厚労省によると、2020年8~10月の妊娠届数は前年同期比4.6%減の21万5417件でした。妊娠届は多くが妊娠11週までに提出されるため、7~8か月後の出生数の目安となります。80万人を下回れば現行の統計を遡れる1899年以降で初めてとなります。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2017年に示した推計では、2021年の出生数は86万9000人と見込んでいました。第一生命経済研究所が妊娠届などをもとに2021年の出生数を試算したところ、76万9千人まで落ち込むとの結果が出ました。社人研の2017年の推計に比べると10年も前倒しで80万人割れが現実化してしまいます。
半面、日本総合研究所によれば、コロナ禍で増えた在宅勤務などで男性の家事や育児の参加が増え、今後、出生数の回復に寄与する可能性があるとのことです。少子化を抑えるためにこうした流れの促進が欠かせないのではないでしょうか。
③G7財務相会合、法人税率・ワクチン接種率
2021年6月4~5日に英国・ロンドンで開かれていたG7財務相会合で、法人税の国際的な最低税率について「少なくとも15%」とする米国案を支持することで一致しました。今回の会合では国際課税の新たなルール作りが中心議題で、共同声明は法人税について「我々は『少なくとも15%』とする国際最低税率NISAにコミットする」と数字を明記しました。会合前は参加者の間でも具体的な数字を明記した合意は難しいとの見方が多かったので、この合意はある面「歴史的な合意」と言えます。
巨大IT企業を念頭にしたデジタル課税でも国際的な課税ルールで一致しました。デジタル課税は企業が物理的拠点を持たない国でもサービスの利用者がいれば適切に課税できる仕組みです。共同声明では「最も収益性の高い多国籍企業の利益率の10%超部分に少なくとも20%の課税権を与える」と明記しました。
法人最低税率は国際的な法人税引き下げ競争に終止符を打つ狙いがあります。大企業が低税率国に拠点を置いて課税を逃れる例や、期待した投資の増加に繋がらない例が目立ってきた為です。
また、新型コロナウイルス禍からの回復に向けて、必要な限り政策支援を継続することで合意することが共同声明に記載されました。
日本の場合、G7参加国の中でワクチン接種率が最低です。2021年5月25日現在、少なくともワクチンを1回接種している割合は日本は僅か5.6%です。日本以外のG7参加国は、いずれも接種率は35%以上で、日本は群を抜いての最下位です。
今後、日本は、接種率をスピード感を持って上げていかないと、経済回復において、欧米諸国に大きく差をつけられる可能性が高くなります。政府は、各自治体並びに職場・学校等での接種が加速度的に進むようリーダーシップを発揮して欲しいものです。