当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①止まらぬ円安、32年ぶり150円台」「②英新政権発足、新首相にスナク氏」「③中国、習近平氏3期目、長期政権入り」です。

①止まらぬ円安、32年ぶり150円台

10月に入っても、円安の勢いは衰えません。
9月22日、日銀の金融政策決定会合で金融緩和の維持が決定されました。

その結果を受け、1ドル=146円目前まで円安が進みました。政府・日銀は同日夕、24年ぶりの円買い・ドル売り介入に踏み切りました。その結果、一時的に1ドル=140円台まで円高が進みました。しかし、その後は日米金利差が拡大するとの見方から、円売り・ドル買いの動き強まり、10月20日には、とうとう1ドル=150円の節目を下回ってしまいました。

翌10月21日、1ドル=151円90銭台の安値となった近辺から、政府・日銀は再び円買い・ドル売り介入に踏み切りました。円は、僅か1時間ほどで7円急騰し、144円台まで戻しました。その後、急変動の一巡後は円売りも出て、147円台で取引を終了しました。その後も、政府・日銀と投機筋の攻防は激しさを増しています。

10月24日も、円相場が149円70銭と節目の150円に接近すると、突然、大量の円買い注文が入りました。円は乱高下、一時、4円以上も上昇し1ドル=145円台前半まで戻しました。その後は、小康状態が続いていますが、政府・日銀の防衛ラインは150円と意識されています。

そもそも、利上げを急ぐ米国と緩和維持の日本で金利差が広がっている限り、円安・ドル高圧力は簡単には収まりません。財務省幹部も「介入で円安が止まるとは思っていない」と話しており、あくまで投機筋による行き過ぎた円安の速度調整が目的との考え方を示しています。

金融緩和(資金供給)と為替介入(資金吸収)というポリシーミックスは本当に適切なのでしょうか。

②英新政権発足、新首相にスナク氏

就任から僅か44日で退陣を表明した英国のトラス首相の後任に、スナク元財務相が就くことが決まりました。党首選に立候補したのはスナク氏だけで無投票での選出が決まりました。出馬を表明していたモーダント院内総務は立候補に必要な100人の推薦を確保できず撤退し、動向が注目されていたジョンソン前首相も推薦が集まらず出馬を断念しました。スナク氏は英国史上、初のアジア系の首相になります。政界入りから僅か7年、42歳の若さで首相の座を射止めた保守党の「期待の星」です。

まずはトラス前政権が傷つけた経済・財政政策の国内外での信頼回復が喫緊の課題となります。財政規律を守りながら物価高騰に苦しむ生活者を支えるという難題が待ち受けています。急を要するのはトラス政権が大規模減税策で混乱させた金融市場の安定です。

トラス政権が首相辞任前、年450億ポンドの減税の内、約7割を撤回したため、市場の大きな動揺はひとまず収まってはいますが、長期金利の利回りは3.8~4%程、減税発表前より高い水準が続いています。金利上昇に伴う住宅市場の冷え込み・金基金の資金繰り懸念は消えていません。財政規律の堅持が優先課題となり大規模な政府支援の継続は難しい状況にあります。スナク氏は就任早々、国民や企業に痛みを強いる判断を迫られることになります。

また、新政権はインフレ抑制の観点で、離脱したEUとの関係を見直す可能性もあります。EUとの間で人が自由に移動できなくなり英国の労働力不足に拍車がかかり、対EU貿易では通関手続きが生じました。スナク氏は前任のトラス氏ほどの対EU強硬派ではなく、EUからの移民受け入れ緩和やEUとの通関上の規制すり合わせに動く可能性もあります。最大野党・労働党などは相次ぐ首相交代を批判し、早期の解散総選挙を求めています。

しかし、支持率で保守党は20%台と労働党を30ポイント以上下回っており、政権は早期解散には応じないとみられます。24年末までの任期中に記録的なインフレを鎮静化し経済・財政を再生できるか。それが12年間続く保守党政権維持のカギとなります。

③中国、習近平氏3期目、長期政権入り

中国共産党の習近平総書記は、10月23日、3期目の最高指導部を発足させました。重要会議、中央委員会第1回全体会議で党高官の人事を決めました。前日閉幕した党大会で選出された約200人の中央委員が24人の政治局員(指導部)と7人の政治局常務委員(最高指導部)を選びました。

習氏は党トップの総書記、国家元首の国家主席、軍トップの中央軍事委員会主席の3ポストを継続、いずれも任期の定めはなく、次の党大会の2027年以降も続投する可能性があります。常務委員7人のうち新メンバーは4人です。

いずれも習氏の側近とされるメンバーです。中でも、党序列2位で来年3月の全国人民代表大会(全人代)で首相に就く見通しの李強氏に注目が集まります。上海市トップの李強氏は都市封鎖を巡る混乱で批判を浴び、一時は最高指導部入りも危ぶまれました。

また、首相には副首相経験者が就く慣例があり、未経験の李氏が首相に就けば異例の大抜擢となります。以下、3位・趙氏、4位・王氏は留任、5位・蔡氏は北京市トップ、6位・丁氏は習氏の女房役、7位・李希氏は幼馴染という顔ぶれになります。

一方、胡錦涛前総書記や李克強氏を輩出した共産主義青年団(共青団)出身の胡春華副首相は政治局員から外れ、ただの中央委員になりました。首相候補でしたが異例の「降格」となりました。また、中国人民銀行の易綱総裁も退任する見通しです。

新メンバー4人は10年後にいずれも70歳を超え、習氏の後継にはなり得ません。習氏は27年以降もトップをやるつもりとの分析も少なくありません。年長の「重し」役も不在となり、政治リスクはより強まったのではないでしょうか。世界第2位の経済大国は、今、民主主義と決別しようとしているのではないでしょうか。我が国としては、中国への防御を固めつつ、民主主義を鍛え直し、その価値と魅力を発信し続けることです。民主主義のレジリエンスが問われています。


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