近年、メディアでも大きく取り上げられ、常に話題にのぼっている待機児童問題。保育園に子どもを預けられないことによって女性の社会復帰が難しくなっている現状も踏まえて、政府も改善策実施に力を入れています。 しかし、保育園の数を増やすなどの対策は、一朝一夕に改善できるわけではありません。そのため、今後、女性が社会復帰を果たすためには、各々がどのようなことを考え、実践していくべきでしょうか。

政府が進める女性の社会進出のための政策

「保育園落ちた 日本死ね」という強烈な匿名ブログが大きな反響を呼んだことは、多くの方にとって記憶に新しいところでしょう。この一件は、女性の活躍や子育て支援を進める政権下で多くの人々が共有していた問題意識を浮き彫りにしました。

こうした社会情勢も踏まえ、第2次安倍政権では女性の社会進出に関する改革実施を表明。アベノミクス3本の矢「成長戦略」のなかで「女性が輝く日本」として、重要課題の1つに女性の社会進出を挙げています。

少子高齢化が進む日本では、今後も労働人口の減少が見込まれます。そのため、マンパワーの確保という意味においても是が非でも女性の社会進出を推し進めたいという意向なのです。

安倍政権では女性の社会進出において以下の政策目標を掲げています。

【女性の社会進出における安倍内閣の政策目標】

・2020年までに25〜44歳女性の就業率を73%にする

・育児休暇を子供が3歳になるまで延長、その後の職場復帰を支援

・2020年、第一子出産前後の女性の継続就業率を55%にする

・2020年、男性の育児休暇取得率を13%にする

・2017年までに約40万人分の保育の受け皿を整備、待機児童を解消

諸外国と比較した日本の現状

日本では昔から「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方が一般的でした。しかし、時代の流れもあり、現在では結婚・出産後の女性も労働力として期待する風潮が広がりつつあります。ただし、日本ではまだまだその文化が根づいていないのも事実です。

女性の社会復帰をサポートする体制について、諸外国と比較することで日本の現状に目を向けてみましょう。

◎産休制度

<日 本>
取得期間:14週間
期間中の給与:67%

<アメリカ>
取得期間:12週間
期間中の給与:州によって異なる

<フランス>
取得期間:16週間
期間中の給与:100%(2人以上は34週間まで)

<ドイツ>
取得期間:14週間
期間中の給与:100%

ドイツの産休取得期間は日本と同じ14週間ですが、支払われる給与は期間中も100%保障されます。各国によって差はあれど、産休制度自体は日本がそれほど劣っているわけではないようです。

◎育休制度

<日 本>
取得期間:満1歳まで
給付期間・月額:開始から180日目までは月給の67%。181日目から365日目まで月給の50%

<アメリカ>
育休制度なし

<フランス>
取得期間:3年間
給付期間・月額:第1子は最長6ヶ月、第2子以降は3歳になる前の月まで。給付月額は、552.11ユーロ。
(第3子以降で休業期間を1年間に短縮する場合は789.54ユーロに割増し)

<ドイツ>
取得期間:満3歳まで
給付期間・月額:給付期間は12ヶ月。給付月額は、手取り賃金の67%

育休制度に関してはフランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国に比べて後れを取っている印象です。また、育休制度は非正規雇用者には対応していません。

国民生活基礎調査によると、2015年の日本における20代後半の女性の非正規雇用率は36.7%、30代前半の非正規雇用率は45.4%という状況。つまり、現状日本の産休・育休制度は、非正規雇用者が多い現状に対応している制度とは言えないのです。

女性自身のキャリアの形成が重要

女性が社会復帰をするうえで待機児童問題の改善は欠かせません。さらには産休や育休などの制度もより充実させる必要があるでしょう。しかし、すべての女性が安心して働ける、または社会復帰できるという環境ではないというのが今の日本の現状です。

そのため、産休・育休制度を活用して産後も安心して子育てすること、そしてきちんとした形で社会復帰することを目指すためには、それまでにある程度のキャリアプランを形成しておくことが必要です。

不透明な時代だからこそ、将来の選択肢を増やす意味でも若いうちから社会情勢に関心を持ち、先を見据えて行動をすることが重要になります。

国に全幅の信頼を寄せられるわけではないので、妊娠・出産・子育てという重要な期間を経験する女性もその後の社会復帰を強く意識すべき時代になりつつあります。そ

うした国民一人ひとりのキャリアに関する意識改革こそが女性の活躍する社会づくりを推し進めていくうえでも大切なのです。

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