①ホテルマネー、引き揚げ連鎖も
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内のホテル収益環境が悪化しています。
3月の平均客室単価は、平均10,597円と前年同月に比べ3割減少しました。稼働率は東京と大阪では、20%台まで下落しています。
4月に入り、ホテル事業者の経営破綻が増加し始めました。4月24日、カプセルホテル運営のファーストキャビン、同27日、WBFホテル&リゾーツが経営破綻しました。
WBFの経営破綻では、他社にも影響が出ています。REITのスターアジア、みらいがWBFに施設を賃貸していたことを開示しました。他にも、タカラレーベン、東急リバブルにも影響が出ています。
不動産証券化協会によると、上場REITが保有するホテルは、約1兆6千億円と3年間で約7割増加しました。私募REITや不動産ファンドを合わせると更に増えます。今後、ホテル運営会社の経営破綻が広がると、不動産オーナーが物件を投げ売りし、不動産価格が下落する事も想定されます。投資家がファンド等から資金を引き揚げるといった悪循環に陥らないことを願います。
②忍び寄るオフィス不要論
新型コロナウイルスの感染拡大による在宅勤務の普及でオフィスのあり方に変化が出始めています。
動画サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴは、新型コロナ収束後も、原則、全社員約1千人を在宅勤務にする事を決定しました。2月中旬から開始後、動画の編集作業なども自宅で対応出来ることを確認。通勤時間もかからず、業務効率が高まったと判断しました。
地域情報サイトを運営するスタートアップ、マチマチは、4月、借りていた約120平方メートルの渋谷のフロアの退去を決定しました。同社の従業員は十数人で、在宅勤務でも成果が高まったことが退去の理由です。
スタートアップのオフィス移転を仲介するヒトカラメディアによると、常時扱う100件程度の案件のうち、オフィス縮小の依頼が半数近くを占めるようになったとのこと。オフィスビル総合研究所は、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の空室率が3月末の0.6%から、23年3月末に5.1%に上昇すると予測しています。
今後は、都心部だけでなく住宅地近隣にもシェアオフィスなどを展開する動きが出てくる可能性があります。
③倒産、緩やかに拡大
国内外でサービス業や小売業を中心に倒産が緩やかに拡大しています。
東京商工リサーチによると、 4月の企業倒産件数は743件で前年同期比15%増加しました。2桁増加は5ヶ月連続でリーマン危機時の4ヶ月連続を上回りました。新型コロナウイルス関連倒産は71件で、5月13日時点で累計142件になります。この発表の直後に激震が走ります。アパレル大手のレナウンが、5月15日、民事再生手続き開始の決定を受けたと発表しました。新型コロナ感染拡大による営業休止で衣料品の販売が急減し資金繰りに行き詰まりました。
米国でも5月に入り、名門企業が相次いで破綻しました。衣料品のJクルー、百貨店のニーマン・マーカス、JCペニーです。
日米政府ともに、スピード感を持って、企業救済を漏れのない形で実施して欲しいと思います。
④米不動産、金融の火種に
新型コロナウイルス感染拡大で、米国の不動産が金融市場の新たな火種になってきました。
ホテルや小売り施設向けローンで返済猶予の申請が相次ぎ、ローンを基にした金融商品「商業用不動産ローン担保証券(CMBS)」に格下げ圧力がかかっています。投資家のデフォルト懸念の高まりで、4月の発行額は、前年同月比32%減の64億ドル。2017年1月以来の低水準となりました。2019年の発行額は、08年以降で最高でしたが新型コロナで一気に暗転しました。
商業施設や集合住宅向けローン市場は、低金利で運用先に困ったマネーの受け皿になっていました。2019年末の融資残高は、3兆6千億ドルで、2008年のリーマン危機時の2兆5千億ドルを上回っています。コロナ前は、緩和マネーが不動産価格を押し上げ更に投資を呼び込む好循環になっていました。しかし今、市場はマネーの萎縮が不動産業者の破綻を招き、さらなる不動産価格の下落を招く投資マネーの逆回転を警戒しています。これは、リーマン危機後に一度、悪循環を経験したからです。
今後、米政府、FRBは、過去の悪循環にならぬよう策を施して欲しいと思います。