藻類からジェット燃料ができる夢のようなプロジェクトが進んでいます。バイオテクノロジー企業による究極のエコプロジェクトの実用化が目の前にまで迫っています。 その藻類とはミドリムシのこと。ユーグレナとも呼ばれており、数年前から健康食品業界で大きく注目を浴びている生物です。 植物と動物の性質をどちらも持つという不思議な生き物で、食品や健康サプリメントとして体内に摂取すると59種類もの豊富な栄養素を手軽に取り入れられます。 そんなミドリムシはいま、健康食品の分野にとどまらず、貧困による栄養対策から次世代燃料の開発まで、多方面へと応用が広がっています。 ここでは、未来の世界を変える可能性のあるミドリムシについてご紹介します。

ミドリムシとは

一般的には藻類と思われているミドリムシ。しかし、植物と動物の両方の性質を兼ね備える珍しい生物です。

全長0.1ミリメートルほどの小さな単細胞生物で、光合成を行っています。これは、ミドリムシの中に葉緑体が含まれているからです。

ただ、藻類と大きく異なるのは鞭毛をもっているため、自由に泳ぐ動物としての特徴を持っていることにあります。

現在、ミドリムシは栄養サプリメントの分野で人気が高まっています。

59種類もの栄養素を含んでいるミドリムシですが、植物と動物それぞれの栄養素が豊富なため、野菜と肉や魚をまとめて食べているような栄養を持ち合わせています。

しかも、植物とちがって細胞壁が薄いため、体内で消化吸収されやすいというメリットを持っています。

ミドリムシ開発秘話

ミドリムシの開発はユーグレナ社の出雲充社長によって始められました。世界初の大量培養に成功した出雲社長がミドリムシに注目したのは学生時代のことです。

バングラデシュで見た貧困に苦しむ子どもたちを見て、栄養的なサポートができないかと思っていたのがきっかけでした。

あるとき、豊富な栄養素を持つ単細胞生物のミドリムシを知って「これだ!」とひらめき、大量培養にトライすることとなります。

ただ当時、ミドリムシの大量培養はほぼ不可能であるとまでいわれていました。

というのも、ミドリムシは植物だけでなく動物的な栄養も豊富なため、バクテリアやプランクトンが好んで食べてしまうのです。

ミドリムシを食べてしまうさまざまな生物のいない環境を作り出した上で培養をしなければならないという困難なハードルが待ち構えていました。

やがて、数年単位の研究が実を結び、ミドリムシだけが快適に生育できる培養技術を生み出したのです。

伊藤忠からの投資を追い風に商品化へ

苦労の末に大量培養技術を確立した次に必要なのは、健康分で商品化することでした。

ユーグレナやミドリムシが健康食品になること自体、知られていないなか、ミドリムシに興味を頂いた伊藤忠から研究開発費の出資と全国のファミリーマートでの販売ができるようになります。

ミドリムシの粉末やクッキー、化粧品など、さまざまなミドリムシ製品をプロデュース。いまや、通販はもちろん、コンビニやスーパーでも店頭で見かけるまでとなりました。

バングラディッシュから始まる栄養問題対策

東大の学生時代に出雲充社長がバングラデシュで貧困に苦しむ子どもたちを見たことから、いまや次世代の新しい栄養食材として注目されるまでになったユーグレナ。

バングラデシュでは米や小麦といった主食となる炭水化物は豊富な反面、肉や魚、野菜といったバランスの良い栄養摂取に欠かせない食材が不足していました。

いかに栄養価の高い食事を実現するか。そんななか出雲充社長が出会ったのがミドリムシだったのです。

現在、ユーグレナ社では会社を挙げてバングラデシュの貧困問題に取り組んでいます。

ミドリムシ商品を現地に送り届けるだけでなく、バングラデシュ政府と緑豆事業の事業拡大を進めて国全体で食料事情に変化をもたらす努力を続けています。

国産バイオ燃料への取り組み

石油や石炭といった化石燃料の涸渇問題が取り沙汰された頃、注目されたバイオ燃料。

ただ、サトウキビやトウモロコシを大量に使用するため、穀類の価格高騰をもたらすという難しい問題がありました。

そこで、世界の食料バランスに影響しないミドリムシを材料に燃料を作るという開発計画が2010年からスタートしています。

現在、ユーグレナによるジェット燃料の実用化が2020年を目処に進展中で、実証実験のためのプラントが建設され順調に本格的な国産バイオ燃料の誕生へと歩みを続けています。

近い将来、ユーグレナから生まれたバイオ燃料を使ったジェットエンジンの飛行機で空を旅する日がきっと来るはずです。

あらゆるエコを実現する夢のミドリムシ

栄養豊富で光合成をするミドリムシには、世界の食糧問題や二酸化炭素問題、燃料問題など、さまざまな課題をクリアする可能性を秘めています。

ユーグレナ社のミドリムシ事業は今度も拡大していくと予想されます。

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