多くの人は定年後、老齢年金が主な収入源となりますが、今後の年金額では生活のすべてをまかないきれないと考えている人も多いのではないでしょうか。 そうなると、定年後もアルバイト等で労働収入を得ようと考えがちですが、それは年金の減額、場合によっては全額停止になってしまう可能性があります。 そこで今回は、労働収入等を得ても年金を減額されないための知識をお伝えいたします。

在職老齢年金の概要

在職老齢年金とは

在職老齢年金とは、老齢年金を受け取りながら働いている場合に、年金を減額または支給停止にされる制度のことです。在職老齢年金という名前の年金を受け取れるわけではありません。

減額される金額

減額される金額は「年齢」と「基本月額」と「総報酬月額相当額」によって異なります。基本月額とは、加給年金を除く老齢厚生年金額(年額)を12で割った額のことです。

総報酬月額相当額とは1ヶ月あたりの賃金(標準報酬月額)+以前1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額のことです。

減額されるのは、老齢厚生年金の部分です。老齢基礎年金(国民年金)は減額されません。また、加給年金が加算されている場合、老齢厚生年金が1円でも支給されれば加給年金額は全額支給され、老齢厚生年金が全額支給停止であれば加給年金も全額支給停止されます。

60歳以上65歳未満の場合

65歳未満の場合は、基本月額と総報酬月額相当額によって次のように分類されます。

【計算例】
・老齢厚生年金額 216万円
・標準報酬月額 22万円
・標準賞与額 96万円

基本月額:216万円÷12=18万円
総報酬月額相当額:22万円+96万円÷12=30万円

上記の計算にて、表の②に該当することが分かります。

支給停止額:(30万円+18万円-28万円)×1/2×12=120万円
実際に受け取れる年金額:216万円-120万円=96万円(1ヶ月あたり8万円)

65歳以上の場合

65歳以上の場合も同様に基本月額と総報酬月額相当額によって次のように分類されます。

高年齢雇用継続給付

年金を受けながら厚生年金保険に加入している60歳以上65歳未満の人が高年齢雇用継続給付を受けるときは、在職老齢年金の支給停止だけでなく、さらに年金の一部(標準報酬月額の0.18~6%)が支給停止になります。

減額されないためには

減額されない収入

上記のように、年金を受け取りながら労働収入を得ると、年齢・基本月額・総報酬月額相当額によって、年金を減額されてしまう可能性があります。

しかし、減額の対象となる収入は主に「厚生年金保険に加入して得た給与」です。つまり、下記のような場合は年金は減額されません。

・個人事業主(自営業)として事業所得を得た場合
・会社員であっても厚生年金保険に加入せずに給与を得た場合
・その他、労働収入以外の収入(個人年金や配当金など)

厚生年金保険に加入しない方法

厚生年金保険に加入しないためには、「会社を選ぶ」か「働き方に注意する」方法があります。

厚生年金保険に加入している会社のことを「適用事業所」といい、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2つに区分されます。これらに該当しない会社を選べば厚生年金保険に加入しなくて済みます。

つまり具体例を挙げるなら、任意適用事業所に該当せず個人で営んでいるサービス業の事業所に入社すれば、厚生年金に加入しなくて済むということです。

次に働き方ですが、たとえ適用事業所に入社した場合でも、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が(同じ事業所で同様の業務に従事している)正社員の4分の3未満であれば厚生年金に加入しなくて構いません。

ただし、次の5つ全てに該当する場合は厚生年金保険に加入しなければいけないので注意しましょう。

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FPおふぃすプラスめいきっと代表。奈良県在住のファイナンシャルプランナー。幼少期はちょっぴりリッチな生活を送るもトラブルが続き高校時代はホームレスを体験。IT業を経てFPへと転身。「お金のことは難しい」と思う人と同じ目線で分かりやすく、ひとりでも多くの人にお金の知識/知恵/知性をプレゼントする活動をしている。