あなたは、自分が将来受け取れる公的年金の見込額をご存知ですか?「年金なんてあてにならない」「どうせ、たいしてもらえないし」と議論をしたところで、未来は誰にもわかりません。 老後の資産形成を考えるうえで大切なことは、もらえるかもらえないかといった予測ではなく、老後のお金の流れをできるだけ可視化することです。 老後はどのような生活をしたいのか(するつもりなのか)、その生活にかかるお金はいくらなのか、そしてそのお金をどうやって準備すればいいのか。 それらを具体的にイメージしておくことで、現役時代に用意すべきお金が見えてきます。そのためにも、まずは老後の収入源の大きな柱、公的年金の見込額を知っておきましょう。

公的年金の種類と受け取れる給付の種類

日本国内で加入が義務付けられている公的年金の種類は3つあります。

厚生年金適用の会社に勤める人が加入する「厚生年金」、公務員は私立学校の職員などが加入する「共済年金」、そして20歳~60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」。

国民年金は誰しも加入している基礎年金(いわゆる1階部分)で、厚生年金や共済年金は基礎年金に上乗せでもらえる年金(いわゆる2階部分)となっています。

そしてこの年金制度、一般的な意味合いで使われるのは老後の生活保障のために給付される「老齢年金」のことですが、ほかにも一定の障害を負った場合に給付される「障害年金」や、年金受給者の遺族の生活保障のために給付される「遺族年金」などがあります。

今回は、老後の生活保障である「老齢年金」の給付見込額の見方についてご案内します。

ねんきん定期便を見る

共済年金以外の人にはおなじみの「ねんきん定期便」。毎年1回、誕生月に日本年金機構から送られている圧着はがきの年金通知書です(※35歳、45歳、59歳時には大判の封書になります)。

ねんきん定期便は、50歳以上の人と50歳未満の人とで様式が異なるため注意しましょう。

<50歳未満の人のねんきん定期便記載項目:2018年版はがき>

  1. これまでの年金加入期間
  2. これまでの加入実績に応じた年金額(参考)
  3. これまでの保険料納付累計額
  4. 最近の月別状況

50歳以上の人が受け取るねんきん定期便のハガキには、(2)これまでの加入実績に応じた年金額(参考)の項目がない代わりに、<老齢年金の年金見込額>が記載されています。

つまり、50歳以上の人が受け取るねんきん定期便では見込額がわかりますが、50歳未満の人の場合の(2)の項目にある数値はただの概算値。

実際にもらえる見込額ではありません。(2)の項目は、将来の転職や収入の変化などがまったく考慮されていない、今後も同じ金額の年金保険料をきっちり納め続けた場合の年金見込額なのです。

ねんきんネットを見る

50歳未満の人の場合、ねんきん定期便にはざっくりとした見込額しか記載されていません。

そのため、ねんきん定期便だけ見て見込額がわかったつもりになっているのであれば要注意です。

これからのライフプランの変化に応じて年金見込額は大きく変わります。

女性の方であれば結婚や出産、男性であれば転職というライフイベントで収入の変動があるかもしれませんし、自営業になるなどして年金の種類が変わる可能性もあります。

そのため、本来の年金見込額は必ず「ねんきんネット」で細かく試算して確認するようにしましょう。

ねんきんネットは、日本年金機構が提供するwebページで、あらかじめ利用登録をすることで自身の年金情報を細かく確認することができるものです。

事前に年金手帳など基礎年金番号が記載されている書類を用意し、ねんきんネットの申請用トップページより利用申請をしてください。

サイトから登録後5日程度でユーザIDが郵送されます。

ねんきんネットでは自身の加入してきた年金の記録や年金見込額の試算が細かくできるようになっており、将来の働き方の変化に対応した試算や、繰り上げ、繰り下げ受給した場金の試算などもでき、さらに振込届出書の確認ができるなど多機能で大変便利なものです。

※PC版とスマートフォン版では活用できる項目に違いがあります。

試算機能はどちらもついていますが、PC版の方が使える機能が豊富になるためできればPC版を利用しましょう。

実際にねんきんネットで試算!意外と少ない年金見込額…どうする?

ねんきんネットでの試算機能は3つあります。

①かんたん試算

「転職もしないし収入も変動しない!60歳までしっかり年金保険料を納めました!」と仮定した場合のシンプルな試算です。

ねんきん定期便では考慮されていない「厚生年金基金」についても考慮されているため、ねんきん定期便のざっくり見込額よりは正確な数値が出ます。

②質問形式で試算

質問形式で今後のライフイベントの変化に応じて給与・期間・職業など考慮した試算が行えます。

給料を設定することで「かんたん試算」より正確な試算を行うことができます。

③詳細な条件で試算

②に加えて年金を受給する年齢、未納期間の追納・後納した場合など様々な条件を設定でき、もっとも細かく正確な試算を行えます。

前述した繰り上げ受給時のシミュレーションもできるため、①や②の試算で出てきた見込額より金額を増やすにはどうしたらいいか?というシミュレーションをするのにも適しています。

ご紹介した年金試算機能で見込額を出してみると、こんなに少ないのか…と思う方もいるでしょう。そんなときにまず確認したいのが、「年金未納期間」がないかどうかです。

転職のはざまや学生時代の未納期間などがあればもちろん年金見込額は少なくなります。

もし過去5年以内に未納分があれば、さかのぼって後納することで満額の年金を受給できます。

詳細はねんきんネットの「後納・追納等可能月数と金額の確認」ページで、自分の後納・追納可能な金額を確認することができます。

まとめ

ねんきんネットでリアルな試算結果を見て、多くの方が「これだけの金額ではやっていけない」と思うのではないでしょうか。

昨年、年金を受け取れる資格期間が25年から10年に短縮されたことが話題になりましたが、できることならば年金は満額で受け取りたいもの。

短い加入期間でも受け取れる!と喜ぶのではなく、納め忘れの期間などがあればしっかり後納や追納制度を使って満額受給を目指しましょう。

また、満額受給できたとしてもやっぱり不安な老後の人生。

老後に快適な暮らしを送るためには、公的年金の見込額にプラスいくら必要なのかを割り出し、不足している金額をiDeCoやつみたてNISAといった制度の活用で補っていきましょう。

未来のお金の流れを知ることは、未来の生き方を決めることになるのですから。

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服部椿 (はっとりつばき)

とある金融系企業で10年間勤務する中でFP資格を取得。お金の情報を提供するメディアを運営するかたわら、コンテンツの企画・編集・執筆まで幅広く経験。執筆の楽しさに目覚め、フリーライターとして独立。 「世の中の役立つ情報を整理し、知識や知恵をプラスしてわかりやすく記事にすること」がモットー。 家計/節約/貯蓄/投資/年金/教育/住宅ローン/保険/ビジネス事情など幅広い記事を執筆。 <保有資格> 2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)