①ヤフー・LINE、統合へ
日本初の巨大デジタルサービスプラットフォーマーが誕生します。11月14日、検索サービス「ヤフー」を展開するZHDとLINEは、経営統合に向けた協議を進めていると明らかにしました。両社を結びつけた最大の理由は、「GAFA」と呼ばれる米巨大ITに単独では勝てないとの危機感であります。まず、国内を固め「1億人経済圏」を握る対抗軸を構築する道を選びました。ただ、両社が統合しても「GAFA」の規模は圧倒的に大きく一朝一夕には、追いつくことは難しいと思われます。
今回の統合の起点は、この夏の両社のトップ会談であります。ZHD社長の川邊氏とLINE社長の出澤氏が幹部陣を交え、事業提携の可能性について会合を重ねました。いつしか、提携が統合に向けた協議に発展していきます。両社はそれぞれ、親会社のソフトバンク、韓国ネイバーとも統合の可能性を話し合いました。9月にはソフトバンクの孫社長が「統合で生まれるプラットフォームを全面的に支援する」と確約したそうです。
ただ、それぞれが知名度の高いブランドで手掛ける重複事業の整理など、相乗り効果を出すには、ハードルもあります。例えば、金融。ZHD傘下のジャパンネット銀行は、10月、SBIHDと包括提携すると発表しました。また、LINEは野村HDと「LINE証券」を立上げ、みずほFGとは、20年度に新銀行を開業する計画もあります。このような計画を今後、どう処理していくかが大きな課題であります。
もう一つの課題は、競争当局の審査を通るかである。日本の公正取引委員会だけでなく台湾・韓国でも競争当局の審査を受ける模様であります。公取委は、8月に個人情報を巡る規制の指針案を作成、10月にはデータの価値を審査に反映する為の指針案を公表しました。この審査の行方も、注視していく必要があります。個人的には、ワンストップであらゆる サービスを受けられる「スーパーアプリ」の登場に期待したいと思います。
②スルガ銀行、債権放棄へ
11月20日、スルガ銀行による不正な融資で過大な借り入れをしたシェアハウスの所有者が、物件を手放せば借金の返済を免除されることで調整が進むことが明らかになりました。同行のシェアハウス融資を巡っては返済に行き詰まる所有者との係争が続いています。同行は、創業家との資本関係を解消したのに続き、不正融資問題も解決して、不祥事に区切りを付ける意向であります。
スルガ銀行は、シェアハウス向け債権を第三者に売却するための入札手続きを開始した模様です。投資ファンドなどが、転売可能な価格を見積もって応札するようです。シェアハウスの所有者が、土地と建物を物納すれば、借金の返済をなくすことを債権売却の条件にしています。借り入れは自己責任が伴うものの、スルガ銀行による書類改ざんなどで、身の丈を超える借り入れをした投資家は多数います。スルガ銀行は、被害者補償の観点から物納を受け入れる模様です。
今回の債権放棄という異例の対応は、所有者弁護団が要求していたものであります。この決断で、筆頭株主問題とシェアハウス問題に区切りをつけることになりますが、不動産向け融資は大幅に絞る計画のようです。では、新たな収益源を、どこに置くのかが見えてこないのが現状です。再建に向けた本当の難路は、始まったばかりであります。復活を期待します。
③ローマ教皇、38年ぶり訪日
11月23日、ローマ教皇フランシスコが来日しました。世界に約13億人の信者がいるカトリックの最高指導者の来日は、1981年のヨハネ・パウロ2世以来、38年ぶりです。教皇フランシスコの本名はホルヘ・マリオ・ベルゴリオ。年齢は82歳。教皇として初代聖ペトロから数えて、266代目、2013年に就任しました。国籍はアルゼンチンで、中南米出身者からでは初の教皇となります。サッカー好きの理系男子で、大学では化学を専攻されたそうです。
来日期間中は、非常に多忙なスケジュールをこなされました。11月24日、午前10時、激しい雨の中、長崎市の爆心地公園を訪問されました。そこでは「核兵器が悲劇的な結果をもたらすことを示す証人の町だ」表現した上で、「核兵器や大量破壊兵器をもつことは平和や安定に繋がらない」訴えられました。その後、約3万人が集まったミサに出席され、広島に移動されました。同日夜、広島平和記念公園で開かれた「平和のための集い」に参加されました。そこでは「この場所の全ての犠牲者を記憶にとどめる」と平和の巡礼者として被爆地を訪れる義務を感じていたと心境を明かされました。加えて、世界各国が核兵器廃絶に向けて行動するように訴え「現在と将来の世代が、ここで起きた出来事を忘れるようなことがあってはならない」と締め括りました。
翌25日も午前中から精力的にスケジュールをこなされました。まず、東日本大震災の被災者との集いでは「完全な復興までは先は長いかもしれない。しかし、必ず果たすことができる」と励まされました。その後、天皇陛下と皇居・宮殿「竹の間」で会見されました。宮内庁によりますと、陛下は「教皇が人々の幸福と世界平和の為に精力的に活動していることに深い敬意を表します」と述べられ、一方、教皇は「9歳の時、両親が広島・長崎の原爆のニュースを聞き、涙を流していたことが心に強く刻まれています。私は、このような気持ちを込めて、メッセージを発出しました」と述べられたそうです。
午後は、日本のカトリック信者、日本で暮らす外国人の若者と交流した後、夕方には東京ドームで約5万人の信徒が参加したミサに出席されました。ミサでは「多くの人が不安を感じている」。「社会的孤立や過剰な競争意識に悩む人が少なくない」としたうえで思いやりや寛大さの大切さを改めて説かれました。
その後、首相官邸に移り、安倍首相と会談されました。首相は、会談後、各国大使らとの集いに教皇とともに出席され「唯一の被爆国として、核兵器のない世界の実現へ国際社会の取組みを主導する」と述べ、教皇は「原爆による破壊が二度と繰り返されぬようあらゆる仲介を推し進めて欲しい」と語られました。
翌26日、イエズス会員とのプライベートミサに出席後、上智大学で講演されました。その後、羽田空港での別れの式に臨まれ、帰国の途につかれました。4日間の滞在でしたが、82歳のご高齢にも関わらず、ハードスケジュールをこなし、多くのメッセージを残して 頂いたことに感謝したいと思います。
④経済対策、事業規模26兆円
12月5日、政府は国や地方からの財政支出が13兆2千億円となる経済対策を閣議決定しました。民間支出も加えた事業規模では26兆円になります。政府が経済対策を打ち出すのは、2016年8月以来、3年強ぶりです。前回の財政支出は、13兆5千億円。事業規模は28兆1千億円と、今回はいずれも前回に匹敵します。今回の対策は、東京五輪後まで見据えた成長分野への投資、自然災害対策を含むインフラ整備、景気の下振れリスクへの備えが3本の柱となります。
政府は「景気は緩やかに回復している」との基本認識は変えていません。但し、2019年10月の消費増税による冷え込み懸念、米中貿易摩擦による国内外の下振れリスクは強まる傾向にあります。安倍首相は「今こそアベノミクスを加速し、課題の克服に取り組むべき」と語りました。
公共投資には6兆円を投じます。一般会計やインフラ関連の財政投融資などで捻出。公共事業に使い道を限る建設国債や予算の剰余金も使います。台風19号の被害を踏まえ氾濫の危険性が高い河川の川底を掘削し、堤防の再整備も行います。緊急時、輸送に使う市街地の道路の無電柱化も進めます。
景気の下支えでは、中小・小規模事業者の生産性向上のための補助金、最低賃金引き上げを促す支援事業などを盛り込んでいます。日米貿易協定の発効で米国への低関税輸出枠が拡大するのを見据えて、畜産施設の整備支援を拡充します。「就職氷河期世代」の就労を後押しする枠組みも構築します。
成長分野への投資としては、5Gの次の世代「ポスト5G」の開発や、米国の月探査計画へ参加する為の研究開発費なに充てます。
転ばぬ先の杖ともとれる早目の対策、油断大敵ですが、景気の落ち込みがなく、緩やかに経済成長がすすむことを期待したいと思います。