当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①日銀短観」「②悪い円安」「③物価高対策」「④中国景気」です。

①日銀短観

※短観=全国短期経済観測調査
※DI=業況判断指数、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値

日銀が3月の短観を4月1日に発表しました。それによると、大企業製造業の景況感を示すDIは3ポイント悪化し、プラス14になりました。悪化は2020年6月調査以来、7四半期ぶりです。

先行きはプラス9で、更なる悪化が見込まれます。大企業非製造業も1ポイント低下し、7期ぶりに悪化しました。今回はロシアのウクライナ侵攻後、初の短観になります。地政学リスクの高まりや資源価格の高騰で企業マインドが急速に冷え込んでいる実態が反映されました。

今回の調査では原材料価格の上昇で、紙・パルプ、窯業・土石製品、化学などの景況感悪化が目立ちました。半導体不足の長期化に伴う「部材の調達難」を訴える企業も多く、また、新型コロナ変異型「オミクロン型」の感染再拡大もよる工場の稼働停止で自動車生産も減少。

市場の注目度の高い大企業製造業の2022年度の想定為替レートは1ドル=111.93円でした。

今後、想定を過度に上回るペースで円安が進めば、調達コストの上昇を通じて企業収益を圧迫する懸念が高まると思います。


②悪い円安

世界の金利上昇の潮流から日本が取り残されています。インフレ抑制で欧米が金融引き締めに動き、資本流出を恐れた世界の新興国も追随しています。欧州は金融緩和時代の象徴であったマイナス金利から脱却しました。日銀は大規模金融緩和を維持しようと金利を抑えていますが、海外との差が円安を招くジレンマに陥っています。

日本の金利の低さは世界で際立っています。米国の10年国債利回りは3%に迫り、昨年末までマイナスのドイツの10年国債利回りは、2月には日本を上回り、直近では0.9%台まで上昇しました。

それに引き換え日本は、日銀が「指し値オペ」で10年国債の利回りを0.25%で死守しようとしています。

利上げの潮流から取り残され、円は全面安の様相を呈しています。4月、対ドル下落率は5%と主要通貨で最も大きいです。下落率で次ぐスイスフラン(3%安)、ユーロ(2%安)と比べても突出しています。

4月20日には、遂に、1ドル=129円台と、2002年5月以来、約20年ぶりの円安水準になりました。

円安が増幅する物価高は企業活動や個人消費に影響を与えかねません。

「現状は悪い円安」鈴木財務相、「急速な変動は望ましくない」松野官房長官の発言に配慮したかのように日銀の黒田総裁も「急速な円安はマイナス」と発言し、「日本経済にプラス」とする従来の主張を修正しつつあります。


③物価高対策

4月22日、総務省が3月の消費者物価指数を発表した。総合指数は100.9と前年同月比0.8%上昇、上昇幅は前月(0.6%)から広がり、2020年1月以来、2年2か月ぶりの水準となりました。原油価格の高騰で電気代やガス代が上昇したほか、原材料価格の高騰で食料品も上昇しました。携帯料金の引き下げによる影響を除くと、上昇率は2%を超えます。

このような状況を踏まえ、政府は原油高・物価高対策を決定しました。国費を6.2兆円充て、ガソリン補助金の拡大や中小企業の資金繰り対策、生活困窮者への支援に振り向けます。物価高のための包括的な対策との位置づけに。

国費の財源は今国会中に編成する2022年度補正予算案で2.7兆円を確保し、既にある予備費から1.5兆円を拠出します。

民間資金を組み合わせた事業規模は13.2兆円になります。

国費のうち最も大きい1.5兆円を原油高対策に充てます。ガソリン価格の高騰を抑えるために石油元売りに配る補助金の上限を今の1リットル25円から35円に引き上げます。期間も9月まで延長します。

中小企業対策には1.3兆円を投じます。新型コロナの影響で収入が減少した中小企業に対し、政府系金融機関による融資の金利を更に下げます。

低所得者など生活困窮者への支援にも1.3兆円を投じます。予備費を活用し、子供1人当たり5万円を迅速に支給します。

他に観光地の高付加価値化策など重要ではありますが、物価高と直接の関連があるか判断の難しい事業も含まれているため、予算の使い道はきちんと検証しなければなりません。


④中国景気

※GDP=国内総生産
※小売売上高=百貨店・スーパー・ネット販売の合計

4月18日、2022年1~3月期、中国のGDPが発表されました。実質で前年同期比4.8%増加しました。

インフラ投資が堅調で、伸びは21年10~12月期(4.0%)から拡大しました。

しかし、季節要因をならした前期比での伸び率は1.3%でした。21年10~12月期(1.5%)より減速しました。

また、景気の実感に近い名目GDPは前年同期比8.9%増加しましたが、21年10~12月期(9.7%)より減速しました。

GDPと同時に公表された他の統計をみると、最近の景気停滞ぶりが浮き彫りになっています。

3月の小売売上高は前年度月比3.5%減少しました。また、1~3月期の生産は6.5%増加しましたが、3月に限ると前年同月比5.0%増加にとどまっています。原因としては、事実上の都市封鎖で物流が混乱、労働者も出勤できず、工場稼働率が落ち込んだからです。

不動産市場もさえません。1~3月期の販売面積は、前年同期を13.8%下回りました。減少は1~2月期(9.6)より拡大しています。地方都市は相次ぎ、減税など取引促進策を打ち出していますが、マンションの値上がり期待が薄れ、購入を見送る動きが広がってきています。

生産や消費の停滞に対して、1~3月期の固定資産投資は9.3%増加しました。内インフラ投資は8.5%伸びました。

習近平指導部は地方政府のインフラ投資を加速させて、景気を下支えする戦略を実行してしています。

中国政府は22年の成長率目標を「5.5%程度」と掲げました。ただ、コロナ感染を徹底的に抑え込むゼロコロナ規制やエネルギー価格の高騰が障害となり5%程度の成長にとどまると予測する市場関係者は少なくありません。


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